短所は長所とも言えるので
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どうにかベッドまで連れ戻し、買ったばかりの体温計を渡す。
「人に見られながら測るん、いつぶりやろ」
「私が知るわけないじゃない...」
「なんや子どもに戻ったみたいで恥ずかしいなぁ」
「はいはい。分かったから黙ってやりなさい、変に体温上がっちゃうでしょ」
「こんくらい平気や思うで?運動しとるわけとちゃうし」
「数分前に布団カバー替えて全身運動してたのは誰だっけ?」
「黙りまーす」
「よろしい......って、言ってる間に鳴っちゃったじゃないの」
「はは...」
「ほら、見せて」
「はい」
「どれどれ...」
受け取った体温計に表示されている数値は、高くもないが決して低くもない。
饒舌なったのも本調子なわけではなく、熱で少々ハイになっただけのようだ。伏せっているよりは良いが、このままにしておくわけにもいかない。
「うん。よし、寝ろ」
「シンプルやなぁ」
「どんだけ分かりやすく言っても聞かない子がいるものだから、つい」
「あー...反省します...」
「そうして。あ、そうだ解熱剤...は使うほどじゃないだろうけど......他の薬飲んどく?」
「それやったら頭痛薬がええかな」
「ん。とりあえず胃になにか入れなきゃね。ゼリー食べる?さっき買ってきたやつ」
「お言葉に甘えさせてもらうわ」
「じゃ、取ってくる。何種類か買ってきたから選んでね」
足早にリビングへ向かい、置いてきた買い物袋を手にして寝室へと戻る。幸い、帰ってすぐの騒動で仕舞うのを後回しにしたおかげで冷蔵庫から取り出す手間は省けた。
本来なら寝室での飲食はあまりしないのだけど、今回みたいな場合は別。病人を何度も往復させるのは気が進まないし。
「よいしょっと...」
「随分買うてきてくれたんやなぁ」
「どの味が気にいるか分かんなかったし、3つずつ買ったからね。どれにする?グレープとオレンジと林檎と桃とスッポン」
「へぇ、ホンマにいろんなんある......最後なんて?」
「スッポン」
「あ、聞き違いとちゃうんや......その、買うてきてもろとる立場であれやけど、なんやひとつだけおかしない?」
「だってゼリーコーナーで一緒にしてあったし...珍しいなとは思ったけど」
「珍しいな、でスルーせんかったんや...」
「選択肢は多い方が良いかと思って。身体にも良いし」
「そこは否定せんけども......ちなみに奈緒子さんやったら食べたいと思う?」
「遠慮するわ」
「ほなボクもその答えの可能性あるかも、て思てほしかったなぁ」
「まあ細かいことはいいじゃない。で?どれ食べる?スッポン?」
「以外がええわ。ボクこのゼリー食べたことないんやけど、奈緒子さんのオススメは?」
「んー...私は林檎が好き。病気の時は林檎のイメージもあるし」
「なら、林檎でお願いします」
「オッケー」
リクエスト通り、林檎の写真があしらわれた蓋を丁寧に剥がし、一緒に持ってきたスプーンを添える。
「どうぞ」
「いただきます」
彼が食べ始めたのを確認すると、指名されなかったゼリー達を袋へ仕舞った。