短所は長所とも言えるので
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世の中、休むより働く方が性に合うタイプは一定数いる。中には食事や睡眠の時間さえも削り、文字通り命懸けで仕事をする人も。
仕事自体は好きで、尚且つ時間を割いてまでのめり込む趣味がない私も、どちらかと言えば同じ分類になるのだろう。かなりライトな分、ピッタリ当てはまる人からすると査定ギリギリ扱いにはなりそうだけど。
では、どういう人ならピッタリ当てはまるのかだが、なんともタイムリーなことに、今ちょうど目の前にいる。
「ふー......あと2つ...」
ちなみに彼は今、シーツカバーを取り付けている最中のようだ。
え?それのどこがおかしいのかって?
たしかに、家事代行を引き受けている彼が寝具のセットをしていても、ただの日常生活の一コマにすぎない。
ただし、今の彼の体調が万全でないことを加えたら話は変わってくる。
「なにしてるのかな、淳君」
「...あ、奈緒子さん」
「あ、じゃないのよ淳君。キミ、今絶賛体調不良で寝てるはずだよね?」
ちょっと買い物行ってただけなのに......油断も隙もないな、この男。
*****
リビングで寛いでいる時だった。
「...あっ」
普段の彼らしからぬ間の抜けた声と、それに続いて聞こえた、ガタン!という大きな物音。
慌てて音のした方へ行くと、シンクに寄りかかる同居人がいた。彼の両手にはティーカップ、対面する位置には開きっぱなしの食器棚。状況から見て、仕舞おうとしたか取り出したか、そのどちらかだと分かった。
「だ、大丈夫?」
「...あー、うん。大きい音させてしもたなぁ。けどほら、カップも棚も無事やから安心してな」
「カップや棚くらい別に良いから!それより怪我は?どこかぶつけてない?」
「ん、平気」
「本当に?変な気使ってないでしょうね?」
「はは、まさか」
「なら良いけど。でも本当どうしたの?貧血?」
「あーいや、ちょっとバランス崩しただけやから」
「そう......って、なんか顔色悪くない?」
「...照明のせいとちゃうかな」
「いや、別に変えてないでしょ」
「せやったら奈緒子さんの気のせいとちゃうかな」
「気のせいにしては白すぎるけど」
「ボク色白やねん」
「それは知ってるけど、朝と比べたら加工前後レベルに変わってない?」
「ほら、お肌のターンオーバーてあるやん」
「そんなハイスピードでなるか!雪原並みに真っ白になるわ!」
「...はは」
顔色はもちろん、声の抑揚やテンポからも違和感を覚えたのは、同居生活直前から続いているこの漫才じみたやりとりのおかげだろう。
「淳君」
「...はい」
「正直に答えて。体調、良くないの?」
誤魔化すことは許さないと目で訴える私に、彼は青白い顔のまま、諦めた様に首を縦に振った。