そーゆーわけでよろしくね
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「..................は?」
デジタル時計は時間と今日の日付を表示している。有給を取った日で間違いない。
そしてこの時計が置いてあるのは自宅の寝室、サイドテーブルの上。
寝過ごしたのでも、起きたら知らない場所にいたのでも、ついでに言うと月のものでシーツを汚してしまったわけでもない。
では何故寝起きの第一声が疑問系なのか。
答えは簡単、自分に巻き付いている腕......いやもう腕って言うか身体全体だけど、とにかく、やたら体格のいい異性が縋り付くようにして眠っているから。
「..................は?」
言っておくがこれは第二声、さっきとなにひとつ変わらない......否、そんなことはない。
状況を把握出来ていないのは変わらないが、先程と違いものすごい勢いで心臓が脈打っている。
え、私死ぬの?ってくらいドクドクと音までしっかり聞こえる程、速く大きく。それこそ、初めてキスした時よりセックスした時よりも。
その一方で頭は冷静に働いているのだから、まったく人間とは不思議なもの.........
.........って言ってる場合か!!!いや口には出してないけど!
落ち着け、落ち着け、お互い衣服の乱れはない、身体も怠くない、ゴミ箱や周辺に行為の裏付けになるようなアレはない、つまり一線は超えてない......はず。
「襲われてない、襲ってもない、セーフ...いやセーフかこれ?本当にセーフか?」
「セーフやと思うで」
「うわあああ!!!」
ここで、きゃー!とか叫べたら良いのだろうけど、生憎自分にそんな余裕と可愛げはない。
出来ることと言えば、欠伸をしながらのそりと上体を起こす様子を横目で観察するくらい。
あと心臓とまってないかの確認......うん、倍速で動いてますね。
「どないしたん?」
「はっ、はぃ?」
「元気ないやん。あ、身体平気?」
「かっ...?!」
「昨日えらい酔っ払っとったやろ?」
「えっ、ああ...!へ、平気、かな」
「ふぅん、強いんやなぁ」
緊張と動揺で言語にするのがやっとの自分に対し、穏やかな声で話を続けてくる。
予想はしていたけど、やはり昨夜の自分は今置かれている状況を瞬時に理解出来ないくらいには酒を煽っていたようだ。
二日酔いにならない体質に感謝していたが、今回ばかりは素直に喜べない。翌日に酒が残るタイプの方がもっと自制が効いただろうに、と後悔するも時既に遅し。
「あ、あの」
「ん?」
「た、大変申し訳ないんだけど、その......記憶があやふやで、その、えっと...」
「えっ、ボクのこと覚えてへんの?」
「も、申し訳ない」
「...ホンマに?」
覗き込むように見つめてくる彼の顔をこの時初めて直視した。
寝起きなのに癖のない明るめの茶髪、色白な肌、涼しげな目元、薄い唇、スッキリしたフェイスライン。
全部見た目のことだけど、これって所謂
「塩顔イケメンてやつか」
「初めて吃らんと喋るセリフ、それでええの?」
「あれっ口に出てた?」
「ばっちり」
「ごめん」
「ええよ。やっとリラックスしてきたんちゃう?」
「......そーかも」
一周回って冷静になった、の方が正しいような気がする。あと今更だけど自分の家で寛げない状況ってどうなの?
...まあひとまずそれは置いといて、心身ともに落ち着きを取り戻してくると、なんとなく昨日のことが思い出せそうな気がする。
だってこの塩顔イケメン、最初は驚いたけど初めて見た気がしないもの。