赤ずきんちゃん
「......今からおばあさんのお見舞いに行くの」
赤ずきんは答えました。
良心の呵責に耐えられなかったのです。
オオカミはと言えば、やっと口を聞いてもらえたことにホッとして、泣き笑いで言いました。
「ならここのお花を摘んで行ってあげると良いよ」
「でも、お母さんに道草はダメと言われてるから」
「少しくらい平気だよ。こんなに綺麗なお花、おばあさんも喜ぶよ」
「お母さん怒ると怖いの」
「怒らなくても怖かったけど」
「やっぱりあなた、お母さんの言っていたオオカミさん?なんかお母さんがごめんね」
そうです、彼こそ赤ずきんのお母さんにガン無視されたオオカミだったのです。
「そ、そんなことより!摘むのか摘まないのかどうす「摘まない」えっ」
「オオカミさんと口を聞いちゃダメって約束を破っちゃったのに、道草までしたら......もう家から出してもらえなくなっちゃうかも」
「それはさすがにないんじゃ...」
「思い出してみて、あのお母さんだよ?」
「ありそうな気がしてきた」
「でしょ」
オオカミは困りました。
何故なら、赤ずきんとおばあさんを食べてしまおうと思っていたからです。いっそ今から走って、おばあさんだけでも食べてしまおうか。
そんなオオカミの考えを見透かすように、赤ずきんは言いました。
「オオカミさん、悪いことは言わないから森へは入らない方が良いよ」
「な、なんで?」
「凄腕の猟師さんがいるの。プロレスも得意だから接近戦でも勝てないよ、きっと」
「こっわ」
「とても優しい人よ?ただ、害獣は”悪・即・斬”って感じだから...あなたは近づかない方が良いと思う」
「猟師なのに”斬”...?」
さすがのオオカミも、この話には怯みました。
赤ずきんは続けます。
「もし私やおばあさんを食べてしまったら、お母さんにお腹を割かれちゃうと思うの...意識あるままね」
「ひっ...!」
「今の段階ではなにもされてないし、オオカミさんに恨みはないの。だから変なこと考えちゃダメ」
「...そうする」
「物分かりが良くて安心した。それじゃあ、私はもう行くね」
赤ずきんは、見事オオカミの説得に成功しました。