知りたいことを知れた日
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「奈緒子ちゃん」
「...なんでしょう」
「ボクのこと好き?」
「...好き」
最初に目が合って以来、ずっと俯きっぱなしだった彼女が、大きな声を出してしまった時でさえ頑なにこちらを見なかった彼女が、この二文字だけは視線を合わせて言い切った。
ボクの彼女可愛すぎん?
「せやったら別れる必要あらへん」
「...嫌になったんやないの?うちのこと」
「全然むしろ幸せいっぱいや」
「ドMなん?」
「ちゃうけど...いやそうでもないんかな...」
「どっちやの...」
「とにかく、ボクは別れる気ないで」
「でも呆れたやろ?幼稚な嫉妬でこんな周りくどい嫌がらせする女」
どうしてどうして、呆れるどころか感動していると言うのに。
「ボクは嬉しいで?」
「やっぱどMなん?」
「今それ置いといてな?」
「ごめん」
「仕切り直して...ボクは嬉しいで」
女々しいかもしれないが、自分だけが好きでいるような気がしていた身としては本当に喜ばしい。可愛い嫉妬に振り回されるなんて、彼氏冥利に尽きる。今までそれらしいことがなかった相手なら尚更。
なにより、こんな時間も労力もお金もかかること、嫌がらせだけで続けられるものか。
「奈緒子ちゃん的にはどうやったん?嫌がらせの成果あった?」
「...前日までは喜んでる顔見れて普通に嬉しいだけやったし、昨日は罪悪感半端なかった。悪いことするもんちゃうな、て」
「痛み分け、やなぁ」
「土屋君のが傷ついたやろ...」
「んー...まあショックはショックやったけど...理由聞いたら吹き飛んでもうた。それより奈緒子ちゃんの悲そうな顔見る方が辛いわ」
「土屋君...」
「奈緒子ちゃんの笑顔見たいねんけどなぁ」
「...優しすぎや、土屋君は」
「奈緒子ちゃんにだけや」
「ふふ、なにそれ」
「ウソちゃうで?」
「うん、信じるよ」
「ボク幸せ者やなぁ」
「うちも幸せ者や」
仲直りとはまた違うけれど、ハグをして幸せを噛み締める。
背中にまわされた腕は、いつもより力が込められていた。彼女なりのお詫びと安堵の気持ちの現れな気がしてまた嬉しくなる。
しばらくそのままでいたかったけれど、緊張が解けたからなのか睡魔が襲ってきた。
こうなると分かっていたら何千何万と羊を数えていたのに、と悔やまれる。
「... 奈緒子ちゃん、もっかい寝直さへん?」
「うん」
「よっしゃ、ほな今日はもうずっとベッドや」
冗談めかして言うと彼女は一瞬キョトンとし、すぐ笑いながら応諾してくれた。
起きてからのことも含めてのことだったけど、きっと鈍感な彼女は気づいていない。