価値を決めるのは誰?
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バレンタイン当日を共に過ごせる恋人達は、みーんな笑顔。
...ばっかりじゃないのが現実。
まあ、ある意味笑みは浮かんでいるけれど。
「淳君、これはなに?」
「なにって.........チョコ?」
「うん、見れば分かるよ?うちが聞きたいんはそれちゃうねん。あとなんで疑問系で返すん?」
笑顔の中に、今度は若干の怒りを含ませて再度質問を投げかけてみる。
当事者である彼はと言えば、こちらと違い濁りのない笑顔をキープしたままだ。それがまるではぐらかされているように思えて、溜息を溢してしまう。
自分の態度は決して好ましいものと言えないだろうが、今くらい許されたい。
「...うちとの約束忘れたん?」
「ボクが奈緒子ちゃんに嘘つくわけないやんか」
「そこは即答なんや」
「大事なことやからね」
「...せやったらなんで」
「うん?」
「なんでチョコ貰ってきたん...!」
強めた言葉のせいだろう、どうにか張り付けていた笑みが、とうとう形を保てなくなってしまった。
「本命ぽいのは貰わんとってって言うたのに!」
「え、これ義理やろ?」
「ヴィタメールが本命やない方が怖いわ!主に金銭感覚!ヴィタメールやで?チロルちゃうねんで?」
「ボクからしたらヴィタメールもチロルも変わらへんよ?」
「ベルギー王室御用達と駄菓子一緒にするとか正気なん?!」
「奈緒子ちゃんからのチョコ以外みんな同じや」
「うっ...」
曇りない瞳で真っ直ぐ見つめられてそんなセリフを言われたら、言葉を返せなくなる。
なにが怖いって、その場凌ぎじゃなく本気でそう思っているところ。まったく、タチが悪い。
「そもそも無理に押し付けられてん。流石に相手のメンツもあるし、捨てるんは職人さん...いや工場の人ら?...と、食材に失礼やろ?」
「それは、まあ...一理あるけど...どうするん、これ」
「カレーにでも混ぜたらええと思うわ」
「フレーバー付きはそのまま入れられへんやんか......ていうかおっもい。本命高級チョコ入りとか想像だけで重いわ、そのカレー」
「想いだけに?」
「おもんないで」
「おもんない?」
「おもんない」
「ホンマに?」
「おもんない...............ふふっ」
「おー、笑った」
「...なんや気ぃぬけたわ」
「気ぃ張りっぱなしよりはええやろ?」
「ん......ごめんね、キツい言い方して」
「ボクこそ、不安な気持ちにさせてごめんな?...あと、さっきの」
「ん?」
「奈緒子ちゃんからの以外は同じ...あれ、ホンマやから」
「...うん」
「奈緒子ちゃんがくれるもんやから特別なんや。それが要らんレシートでも、折れたシャー芯でも」
「や、さすがにそんなんあげようとは思わんよ...そもそもゴミやんか」
「ものの例えやから」
「例えやとしても」
「ひとまずそれは置いといて......ボクが好きなんは奈緒子ちゃんだけや」
優しいけれど真剣な眼差しに、一瞬で惹き込まれてしまう。数秒前までコントみたいなやりとりをしていたというのに。
いつもそうだ。気づいたら彼のペースに乗せられている。
でも、それを心地良いと感じてしまうのたから単純だ。
「...うん、うちも淳君好き」
背徳感と牽制を込め、恐らく本命として渡したのであろう高級チョコレートを視野に捉える。彼の提案した調理法には使えないが、早急に消費方法を考えなくては。
どんなに高くても、どんなに美味しくても、怖くないんだから。