ネガティブな彼女
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先に言っておくが、別に喧嘩をしたわけではない。
「こんな性格でごめんね」
困ったように謝るのは、愛しい愛しい恋人。
彼女の性格を一言で表すならネガティブそのもの。生まれ持ってのものなのか、育った環境なのかは判断しかねるものの、とにかく自己肯定が低い。
そんな彼女に自分がかける言葉は、大抵決まっている。
「遠慮がちなんも奥ゆかしさあってええと思う」
ただフォローする為だけではなく、本心からそう思うからこそ言えるのだ。惚れた弱み、恋は盲目、などの言葉がある通り、自分にとって彼女の言動はどこをどうとっても愛しくてたまらない。
「卑屈なだけだよ」
「謙虚で控えめ、の間違いやろ?そういうとこもかわいいなぁ、上田さんは」
「そんな全然...かわいいとかじゃないから」
「今日も昨日も一昨日もその前も、ずっとかわいいで?」
「いやいやそんな、むしろブ「はいそれ以上はあかんよ」...うん」
思わず言葉を遮った。
後ろ向きすぎる彼女ももちろんかわいいが、やはり卑下しすぎるのを黙って聞くだけなのは趣味じゃない。まあ正確には、今言おうとした言葉は完全に解釈以外だから認めたくないのが本音。
「土屋君」
「ん?」
「...ありがとう」
もし、頭の中にネガティブな考えしか浮かばなかったら使ってほしいと伝えた魔法の言葉を、律儀にも彼女は素直に聞き入れてくれている。
でも、どんな理由で自分がそれを提案したのか、彼女はきっと気づいていない。その魔法の言葉が紡がれる度、彼女の中での自分の存在が感じられる、自分なしではいられなくなる、と。
こんな歪な下心を隠しているなんて、夢にも思うまい。
「ん、よくできました」
少しずつ、けれど確実に刷り込んでいくように、二重の意味を含ませて彼女を抱きしめる。
(...我ながら最低の思考やな)
だから、魔法の言葉。
秘密だけど、ね。