ポジティブな彼氏
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謙虚も過ぎれば傲慢になる、と言う慣用句がある。
全くもってその通りだ。
多少のことなら美徳に見えても、あまり意固地になるのは失礼にあたる。相手は自分を評価してくれているのに、真っ向から否定しているのだから。
「上田さん、今日もホンマかわいいなぁ」
「あはは、そんな全然...かわいいとかじゃないから」
自分はまさにそのタイプ。まあ、正しくは傲慢よりも卑屈の方だろうけれど。
明るい自虐に見えるようで、周りからの印象が悪くないのは幸いかもしれない。
「今日も昨日も一昨日もその前も、ずっとかわいいで?」
「いやいやそんな、むしろブ「はいそれ以上はあかんよ」...うん」
ただ一人、目の前で微笑む彼を除いて。
「ん、ちゃんと途中で止めれて偉かったなぁ」
「...ごめん」
「ええよ。ボクからしたらそこも上田さんの魅力やから」
まるで少女漫画みたいなセリフをサラッと言い放つ彼は、同じ大学に通う土屋淳君。
爽やかで人あたりも良く、だけどミステリアスな彼は学内でも人気がある。
「ええよ。ホンマかわいいなぁ、ボクの彼女」
そんな彼と私の関係は一応、恋人同士。
「そんなこ...じゃない、えっと......」
「無理せんでええよ、ボクが言いたいだけやから」
「...本当ごめんね、こんな性格で...ごめん」
「謝ることないで?遠慮がちなんも奥ゆかしさあってええやんか」
「いや、遠慮じゃないんだけだと...」
「まあ感じ方は人それぞれ言うしなぁ」
「...土屋君さ、嫌じゃない?」
「ん?なにが?」
「だって私、すごく卑屈だから...」
「謙虚で控えめなだけやろ?」
「か、かなり良く言えばね」
こんな風にどれだけ私が否定の言葉を返してしまっても、土屋君はいつも受け入れてくれる。
彼のことは大好きだし、彼から贈られる言葉はどれも嬉しくてたまらない。本当は素直に受けとめたいのに、それが出来ないもどかしさでまた負のサイクルにはまりそうだ。
でも、こんな時の為の魔法の言葉がある。
「土屋君」
「ん?」
「...ありがとう」
マイナスな感情ばかりで上手く話せなくなった時のヘルプサイン...と言っても、あくまで私達二人でしか通じない合言葉みたいなもの。
考えを放棄して逃げるみたいだし、本当はあんまり使わない方がいいんだろうけど、パンクして更なる迷惑をかけるくらいなら、はやめに信号を送った方がお互いの為になる。
...それに。
「ん、よくできました」
大好きな人が、穏やかな微笑みを浮かべて抱きしめてくれる。
だから、魔法の言葉。
秘密だけど、ね。