あと、少し
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やっても無駄なことに気づいた今、もはやこれ以上作業を続ける必要はない。
「とりあえずもうやめよ、どうせこれもう着られへんし」
「ええの?」
「うん。家に替えもあるし一枚くらい平気」
「なんや勿体ないなぁ」
「せやなぁ...部屋着にでもしよかな。家ん中やったら見られても困らんし」
「ふーん?」
「...てことやからお疲れ様。服は洗って返すね」
「別に上田さん持っててもええで?それも部屋着にしたらええんちゃう?」
「いやさすがに...これ以上は申し訳なさで土下座したなるから」
「それはあかんなぁ」
「そやろ?今週中には持ってこれる思うから、それまでお借りしときます」
「ん、了解。......けど残念やなぁ」
「なにが?」
「せっかくの二人っきりタイムやったのに。もうちょい気づくん遅うても良かったんやで?」
「え...それって...土屋君、まさか...」
「うん」
「まさか......マゾヒストなん?」
「えっ」
「それか私が気づいてへんの面白がっとったん...?」
疑いの眼差しを向けると、土屋君は焦りの表情を浮かべた。
今日...いや、彼と話していてこんな顔をしているところを見たのは初めてな気がする。なんだか新鮮だ。
「ちゃう、待って誤解や、これは事故やて」
「...ホンマに?」
「あかんめっちゃ疑われとるやん」
「土屋君やから...」
「自分何気に毒吐くなぁ」
「土屋君やから...」
「それ2回目やで?」
「...ふふ」
「あ、機嫌なおったん...かな?」
「別に悪かったわけやないよ、揶揄われてばっかやからお返し」
「...そやろうとは思てたけど」
「あれ、気づいててあない焦っとったん?」
「...上田さんから変に思われるんは嫌やからなぁ」
「え、私こう見えて柔軟な思考しとる方やで?」
「知っとるよ」
「そやったら「けど」...うん?」
「ええとこだけ見せたい...て思てるから。上田さんにだけは」
「え...?」
「あ、せや...これな」
言葉の意味をまだ理解出来ていない私に、彼はそのまま続ける。
私の身に纏われている自身の私物に触れると、優しく微笑んんだ。
「...上田さん?」
「え?...あ、ご、ごめん...なんて?」
「この服いつでもええよ、て話」
「あ、うん...ホンマありがとう...」
普段とは違う雰囲気に調子が狂う。
(...ドキッてなんやねん、柄やないのに)
「...それと」
「う、うん」
「返す時は直接...約束、な?」
耳元でそう囁くと、いつもの穏やかな表情の彼に戻っていた。
「ほな、そろそろボク行くな。上田さん、また」
「...うん、また」
後ろ姿を見送りながら、先程より大きく鳴る鼓動が止むよう試みる。熱くなった顔が冷めるまで、ここからは出るのは諦めた方が良さそうだ。
自分の中で変わったなにかと、その原因に気づくまで、あと少し。