あと、少し
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「小さいよりはええやろ?」
「...せやね」
土屋君から借りたTシャツは、普段着ている服の何倍も大きい。
まあ、半袖だし作業するのに支障はないのだけど。
「ホンマありがと...てか、持ち歩いてたんやね」
「他にも部室持ってかなあかんもんあって一緒に入れとったから」
「そうなんや...ん?そやったらここにはなんで?」
「上田さん入ってくんが見えたからなぁ」
「嘘。さっき顔合わせた時驚いとったやん」
「はは、かなわんなぁ」
「もう、すぐ揶揄うんやから」
「...ま、ええけど」
「...?美術室になんか用事あったん?」
「うちのクラスで使うた筆返しにな。部室行く言うたらついでに、て頼まれてん」
「なるほど」
「あ、せや。上田さん知っとる?カレーの汚れは日光に当てたらきれいになるんやで」
「めっちゃ突然やん...」
「汚れ落としよったら思い出してん」
「連想ゲームやん...でもそれめっちゃ役に立つ知識やからママに教えよ。土屋君て物知りなんやね」
「せやろ?... まあボクも知ったんさっきやけど」
「えーなんなんそれ」
「ええカッコしよ思たけど、やっぱ嘘はあかんな」
「変なとこ真面目やね」
「これでも正直者やねんで、ボク」
「なんや逆にうさんくさいわ」
「酷いなぁ」
「...ふふ」
本来なら面倒だとか憂鬱だとか、マイナスな気持ちで取り組んでいた作業。
それが彼のおかげで楽しく和やかな空気ですすめられる。
「...なあなあ、土屋君」
「んー?」
作業開始からしばらくして、ふとあることに気がついた。
「よう考えたらペンキ黒やし綺麗に落とすん無理ちゃう?」
そう、先程から洗っているこの服の汚れは、黒いペンキによるもの。
最初からまっさらに出来るとは思っていなかったものの、何故もっと早い段階で気づけなかったのか、自分よ。
「せやろなぁ」
「いや、呑気に返事しとるけどめっちゃ時間無駄に消費させただけやん...ごめん」
「ええよ、別に時間追われとるわけちゃうし」
「服まで借りといて...ホンマごめん、早よ気づいとったら迷惑かけんかったのに...」
「そない気にせんでええから、な?」
「うん...ありがとう」
優しさが罪悪感を突き刺してくる反面、懐の広さを有難くも感じた。