本日、センチメンタルにつき。
「晴れとるけど風もあるしなぁ」
「...うん」
「エアコン要らずや」
「...うん」
「こんだけ涼しいとセミに情緒感じる余裕も出てくるもんやなぁ」
「...うん」
「そんで徐々に聞こえんようなってきて」
「...うん」
「風も冷たなって」
「...うん」
「長い思ててもあっという間に秋になってくんやろなぁ」
「...うん」
話しているうちに、言語化出来なかった心の内が少しずつ解けていく気がした。まあ私は同じことしか言っていないのだけど。
年に数回の季節の変わり目、それと共に訪れる弾むような気分ともの哀しさ。
ゆるやかに五感を刺激するそれらが嫌いなわけじゃない。むしろ趣があって大好きだ。
でも、どうしようもなく締め付けられるような、もどかしいようなこの複雑な気持ちに、いつもいつも振り回されている。
そんな時は、決まって彼の顔が思い浮かんだ。
「...ごめんね、毎回」
「ええよ。むしろご褒美みたいなもんやから」
「いや、そうじゃなくて...まあいいや」
多分、謝罪に込めた本当の意味は、彼に伝わっていない。
強く抱きしめてほしいとか、優しく笑いかけてほしいとか、ただ隣に寄り添って同じ景色を見ていたいとか。楽しさを共有したいの同時に、寂しさを共に分かち合いたいと、そう乞い願ってしまう。
今日みたいな日は、特に。
...なんてね。
こんな恥ずかしいこと、伝わらなくて正解だった。仮に上手く文章としてまとめることが出来てたとしても、到底言えやしない。
「...淳君」
だから、代わりに行動で示すことにした。言葉に出来ない分まで伝わりますように...と、彼の身体へ顔をグリグリ押し付ける。
恥ずかしさがないわけではないが、それよりも愛しさや満足度の方が大きく優った。
「今日は随分甘えたやなぁ」
穏やかな声が上から降ってくる。
その言葉には返事をしないまま、ゆっくり指を絡ませた。
やっぱり、こんな日に我慢は良くない。