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暗殺×黒バス

 
 テスト勉強をしようと新校舎の図書室へ足を踏み入れた時、思わず顔を顰めてしまった。そこに居たのは優雅に本を読む架純。
 架純からなるべく離れていて、なおかつ皆で座れる席を探すがどこも人が居て、架純の居るテーブルの席しか座れそうに無い。
 どうしようか、と迷っていると声が掛かった。

 「何をしている。勉強しに来たんだろう。私のことは気にせず座ったらどうだ」

 予想外の言葉に皆戸惑い、顔を見合わせる。どうする?とアイコンタクトを交わしている中で動いたのが渚だった。
 もとより渚にはここで勉強しない理由がない。

 「ありがとう、架純ちゃん。じゃあ架純ちゃんの隣に座って良い?」

 「構わない」

 「じゃ、じゃあ赤司さんの前に私座っちゃうね」

 「神崎さん…」

 その近寄りがたい雰囲気から怖がられやすい架純の向かいに座ってくれることが渚には有難かった。大切な心優しい友人が傷つく姿は見たくなかった。尤も架純はそんな姿を見せる事なんてないのだが。

 2人が座ったので、他の皆もふっと笑みを零して席に着いた。ただ、茅野はバスケでボコボコにされた恐怖がまだ残ってるのか、端っこの席に居たが。架純はちらりと茅野の方を見ていたが何も言わなかった。

 暫く皆静かに勉強していたが、やっていれば分からない問題も自ずと出てくる。渚は分からない問題にチェックを付けていき、架純に話し掛けた。

 「架純、ここが分からないんだけど…」

 渚の言葉に架純は本を閉じて、渚が差し出してきた問題集とノートを覗き込む。貸して、と渚の問題集、ノートを手に取るとパラパラと勢い良く捲り始めた。一瞬で最後のページまで辿りつくとなるほど、と頷いた。

 「渚はケアレスミスが多いな。途中で計算式を間違えていることが多い。それから公式の使い分けができていない。例えばさっき渚が聞いてきたこの問題、この公式では無くこっちの公式を使うと上手く解ける。やってみろ」

 この一瞬で読んだのか。呆気にとられながらも渚は頷いた。

 「あっ、うん」

 渚は架純から解説を受けながらも間違えたところを一つずつ直していく。意外にも分かりやすく丁寧に教えてくれる。渚も真剣に架純の言葉に耳をかたむける。架純に言われたとおりにやっていくと、すらすらと問題が解けていった。

 「これはテストに出るだろう。繰り返しやっておけ」

 「えっ、そんなことも分かるの?」

 渚の言葉に架純は何て事無いように衝撃の言葉を放った。

 「あぁ。私の山勘は外れん。昔から得意分野だ」

 渚はポカンと口を開けた。山勘なのに毎回100点をとれるだと…!?テストなんて山勘だけでどうにかなるものじゃないはずだ。

 「えっ、嘘だよね!?嘘だと言ってよ!」

 ガクガクと架純を揺さぶる渚。普段と違う荒ぶっている渚に全員が驚く。

 「おい、お前何やってんだ」

 渚の肩を掴んだのは五英傑の一人、瀬尾だった。よくよく見れば瀬尾の他にも浅野以外の五英傑が集合している。彼等の目には渚が架純を虐めているように見えたのか、ひどく憤っている。架純は渚に敵意を向ける彼等を胡乱げに見るとため息を吐いた。

 「お前らは何しに来たんだ。用が無いならさっさと帰れ」

 「いや、席が無くてなぁ…おい、お前ら。ここはお前らみたいな雑魚が使って良い場所じゃねぇんだよ。さっさと帰れ」

 難癖を付け始める五英傑。榊原に至っては神崎にナンパまでしている。架純はその様子に頭が痛いという表情をすると、静かに席を立った。

 「架純ちゃん、帰るの…?」

 「あぁ。こんな品位の無い馬鹿共と一緒に居たくないからな」

 架純は五英傑を冷たい目で睨めつけた後で、静かに出口まで向かった。架純は何を思ったのか、扉に手を掛けるとピタリと動きを止めた。振り返ってこちらを、いや正確には五英傑を見据える。

 「一つ言っておく。お前達が何をしようが私には関係ない。お前達がジャイアンのような振る舞いをしても、それはお前達の自由だ。

 だが絶対に私は巻き込むな。巻き込んだら、殺す」

 神崎の髪を触っていた榊原の近くの壁に勢い良く何かが突き刺さる。よく見るとそれは真っ赤なハサミだった。架純は踵を返すと立ち去って行った。
 暗殺者のE組だからこそ分かる。架純の言葉は本気だった。ハサミも加減はしていたものの容赦なく投げていた。架純はきっと、いざとなったら本気で実行する。その証拠にハサミを投げつけられた榊原はへたり込んでいる。

 渚は自分の背が泡立つのを感じた。人をこんなにも恐いと感じたのは初めてだった。
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