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poppy 第一章

 
 昔から雛菜が松陽へ向ける視線に違和感を抱いていた。その視線はまさしく俺が雛菜に抱いているものと同じだったから―。
 
 「松陽先生!今日の授業で習ったこの部分なのですが―」
 
 俺は今日は珍しく授業中に一睡もせずに起きていた。そのために気がついてしまったのだ。
 授業が終わった後雛菜は俺のところにいつも真っ直ぐに来ている、と思っていたが実は松陽に話しかけてから、俺のところに来ているという事に。
 松陽に話しかける雛菜の横顔を見つめる。雛菜の顔はまさに恋する乙女のような表情だったからだ。
 
 「雛菜、お前松陽のこと好きなのか?」
 
 「?うん、好きだよ!!」
 
 銀時は言ってすぐにこれでは駄目だと気がついた。雛菜が松陽の事が好きなのは当たり前だ。松下村塾の生徒なら誰でも好きだと答えるだろう。
 
 「えっと…そうじゃなくて…結婚!そう!松陽と結婚したいと思うか?」
 
 雛菜は燃えるように真っ赤になった。答えは聞くまでもない。明らかだった。
 
 「えっと…あの…結婚したいかは分かんないけど、ずっと一緒にいたいとは思う…かな」
 
 見たことも無いような優しく温かい笑みを浮かべて話す。俺はこんな雛菜を知らない。
 
 「なんて言うのかな…近くにいるとね、すごく安心するの。力が湧いてくるの。あと…」
 
 そのあとの言葉は小さくてよく聞こえなかったが、松陽の側がどれだけ雛菜にとって心地良いのかは十分に伝わってしまった。
 
 そうか、なら俺は―。
 
 「雛菜」
 
 俺は雛菜に呼びかけた。雛菜はまっすぐに俺を見る。俺も覚悟を決めて、雛の目をまっすぐに見つめながら言った。俺が一番伝えたい言葉を。
 
 「雛菜。お前が松陽が好きなように、俺も雛菜が好きだ。だからこの先どんな事があっても、雛菜の事を守ってやる」
 
 驚いて固まる雛菜の頭を撫でながら、自分でも優しい顔になるのが分かった。
 
 「俺は雛菜の一番の親友でお兄ちゃんだからな」
 
 雛菜は嬉しそうな顔で笑った。
 
 「それなら!私も銀ちゃんを護るよ!どんな時だって、銀ちゃんの味方でいる!!だって銀ちゃんの妹で、親友だもんね!」
 
 今度は俺が固まってしまった。雛菜の真っ直ぐな言葉が暖かくて、嬉しくて。
 でも分かってしまった。自分から言い出したとはいえ、雛菜の中で自分が『親友』『兄』という存在から、名前が変わることがないであろうことが。
 
 「そいつは心強いなァ」
 
 「私も凄く心強いよ!」
 
 親友、時々兄。
 願わくばこの先、俺達の関係が恋人、夫婦と変わっていきますように―。
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