白家騒々篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇ、泉~。遊ぼーよ」
「遊ばない。帰れ」
「やだやだやだ!!泉が構ってくれるまで帰らない~!!」
ばたばたと手足を動かして地面で転げ回る馬鹿者を見下ろしながら淡々と剣の稽古を続ける。構って構って、と赤子のようにただを捏ねる。五月蠅い。
「ほら、現在進行形で構ってやってるだろ。だから帰れ」
「それは構ってるうちに入らないの!!」
ぎゅっと僕の足にしがみついてきた蒙恬をぺいっと転がして素振りを続ける。しかし蒙恬は地面に腹這いになりながら僕の足に再びしがみついてくる。鬱陶しい。こうなっては蒙恬は僕が相手にするまで梃子でも動かない。仕方ない、相手をしてやるか。
「何がしたいんだ。宗候が素振りを千回終えるまでの間なら付き合ってやる」
僕の言葉に蒙恬は嬉しそうにはしゃぎ始め、反対に僕の隣でひいひい言いながら素振りをしていた僕の幼なじみ兼部下の宗候は絶望的な顔をした。我ながら蒙恬にはかなり甘い。
「宗候、なるべくゆっくりやってね!!」
蒙恬の奴、無邪気に残酷な事を言う。実はゆっくりと素振りをしたほうがキツいのだ。自分で命じたことを棚に上げて、憐れだななんて思った。
「泉、しゃがんで!!」
「ん?これで良いか?」
素振り用の剣を置いて芝生に胡座をかく。蒙恬はにこにこと笑いながら芝生に生えていた花を容赦なく引っこ抜いて、それを僕の耳に掛けた。
「うん、やっぱり可愛い!!」
「…は?」
満足そうに頷く蒙恬に思わず目が点になる。なんだ、お前。僕に花をつけて遊びたかったのか?
「お前がしたかったのって、これか?」
「あっ、あともう一個!!これ終わったら帰るから」
蒙恬は小さな両手でぎゅっと僕の頬を挟み込んだ。じーっと大きな目で僕の目を覗き込んでくる。僕も蒙恬の目を見返していると、蒙恬は蒙恬の唇と僕の唇を合わせてきた。
「…っふふ。必ず泉をお嫁さんに貰うから」
ペロリ、と自分の唇を舐めた蒙恬はまるで獲物を狙う狼のようだった。ひくり、と自分の頬がひきつるのを感じた。いや、待て待て待て。可笑しい。今、お嫁さんって言った?僕は蒙恬に男って言ったよな?蒙恬もそれを知っているはずなのに…。
もしかして、こいつ、僕が本当は女だって気づいてたのか?
じゃあねー!!と元気良く走り去っていった蒙恬を僕も宗候も呆然としながら眺めていた。驚きのあまり、何も言えなかった。思考停止していた。
「蒙恬って…男好きなの?」
なぜか自身の胸と股間を隠すような格好をした宗候に、思わず蹴りを入れてしまった僕はきっと悪くないと思う。
5/5ページ