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poppy 第二章

 
 「あ!!万事屋のねーちゃん!!」
 
 「もしかして…長谷川さんですか?」
 
 雛菜がお登勢のお遣いの帰りにタクシーに乗り込むと、そこにはサングラスをとって髪の毛を七三分けにした入国管理局局長、長谷川泰三の姿があった。座っているのは後部座席ではなく、運転席だ。
 
 「…やっぱり入国管理局、クビになっちゃったんですね」
 
 「…ああ。切腹申しつけられて、恐かったから夜逃げしようとしたら、先に女房に逃げられてたよ」
 
 「…」

 雛菜は長谷川の言葉に冷や汗を流した。



 【考えたら人生ってオッサンになってからの方が長いじゃねーか!!恐っ!!】



 車内に気まずい沈黙が流れる。
 
 「…原因の一つに明らかに私達入ってますよね」
 
 シュン、と落ち込んだ様子を見せた雛菜に長谷川は焦る。
 
 「ああうん、そうだね。でもさ、俺が一時のテンションに身を任せて皇子殴っちゃったのがイケないから、そんな気にしないで!!」
 
 「まぁ確かに一番悪いのは長谷川さんであるのは疑いようがない事実ですけど。あ、スナックお登勢までお願いします」
 
 あっさりと言い放った雛菜に長谷川は少し落ち込む。長谷川はため息を吐いてから車をゆっくりと発進させた。
 
 「長谷川さん、サングラスはどうされたんですか?以前は掛けてらっしゃいましたよね?」
 
 「ああ、掛けるの止めたんだよ。面接落ちるから」
 
 雛菜は長谷川の言葉になるほど、と頷く。
 
 「確かにサングラス掛けてたら受かるものも受かりませんね」
 
 「ああ。サングラスは俺のアイデンティティの一つだった。だからコイツをとるわけにはいかなかった」
 
 長谷川はサングラスを雛菜に見せながら言う。
 
 「だが今の俺は出世街道爆進してたあの頃とは違う。俺は変わるためにもサングラスをとることにしたんだ」
 
 雛菜は長谷川の言葉を聞いて、フフッと笑った。
 
 「吹っ切れたんですね」
 
 「え??」
 
 「この前まで銀ちゃんに管を巻いてたじゃないですか」
 
 長谷川は目を見開く。
 
 「何だねーちゃん、知ってたのか」
 
 「ええ。まぁ」
 
 雛菜はニコリと微笑えんだ。長谷川がその笑顔に少し見とれてしまった。
 
 「あ、ここです」
 
 雛菜の声に長谷川はハッとする。
 
 「あ、ああ」
 
 長谷川は料金を受け取って雛菜を降ろす。
 
 「長谷川さん」
 
 雛菜は名刺を差し出す。
 
 「私スナックお登勢で働いているんです。もしよろしかったら今度、いらして下さい。仕事の愚痴でも何でも、いつでもおつきあいしますから」
 
 長谷川は雛菜の言葉に声を上げて笑う。雛菜の言葉は、分かりにくくはあるが長谷川の仕事を応援するものだったからだ。
 
 「ああ、是非行かせてもらうよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 長谷川は結局、その日のうちに銀時とハタ皇子のせいで仕事をクビになり、スナックお登勢でくだを巻くことになる。
 
 「俺ァ自分の、ヒック。芯を通すことにしたんだァァァ!!だから、ヒック、クビになったって!全然気にしてないもんね!!ヒック」
 
 「頑張って次のお仕事探しましょうね」
 
 「うわぁぁぁ!!雛菜ちゃん天使!!いや女神様だ!!」
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