poppy 第二章
【喧嘩はグーでやるべし】
雛菜、銀時は依頼で屋根の修理をしていた。
「おじさーん!こんな感じて大丈夫ー?」
「おお!さっすが雛菜ちゃんだ。やっぱり頼りになるねぇ」
「ほんとー?ありがとう!」
雛菜と修理屋が話していると、反対側の屋根で何かが壊れる凄い音がした。
「銀ちゃーん?何やってるの?」
雛菜がひょっこりと顔を出すと、そこには肩を怪我をした銀時と、剣を真っ二つに折られた土方がいた。
「…二人とも何やってるの?」
ぐっ、と眉間に皺を寄せながら尋ねると銀時は肩を押さえながら答えた。
「なんかよく分かんねぇけどいきなり多串君が斬り掛かってきたんだよ」
「多串君ってでっかい金魚のフィギア持ってた?」
「あれ、飼ってたんじゃなかった?」
「いや、多串じゃねぇよ!!お前はソコをツッコめよ!!」
土方のツッコミに銀時は少し恐い顔をする。
「え、何?おたくウチの雛菜ちゃんと知り合いなわけ?」
「あ?テメーこそなんだよ。ウチの雛菜って。雛菜は俺達の上司の娘みてぇなもんだ。テメーのじゃねぇ」
「は?何言ってんの?」
「いや、二人とも何言ってるの」
銀時は雛菜に駆けよろうとした。すると斬られたところが痛んだのか顔を顰めた。
「いだだ。おい雛菜、俺ちょっと病院行ってくるわ。ハゲには上手いことつたえておいてくんない」
「分かった。後は私がやっておくから」
そのまま立ち去ろうとする銀時を土方は呼び止める。
「待てェ!…テメェ、情けでもかけたつもりか」
銀時はその声に立ち止まる。
「情けだァ?そんなもんお前にかけるぐらいだったらご飯にかけるわ。喧嘩ってのはよォ、何かを護るためにやるもんだろが。お前が真選組を護ろうとしたようによォ」
土方は不可解な顔をする。
「護るって、お前は何護ったっていうんだ?」
銀時は振り向きながら笑う。
「俺の武士道だ」
雛菜はその言葉に優しく目を細める。土方はポカンと銀時の後ろ姿を眺めていたが、フッと笑うと屋根の上に寝そべった。
「悪ぃな近藤さん。俺も負けちまったよ」
雛菜は土方の隣に腰掛ける。
「銀ちゃん、おもしろいでしょう?」
「…よくわかんねー野郎だ。あの男、一体何者なんだ」
雛菜は少し自慢げに答える。
「私の馬鹿な幼馴染みですよ」
雛菜の発言に土方は驚く。
「幼馴染み!?…なんか意外だな」
「そうですか?」
「真面目なお前とは違ってフラフラしてる感じあるだろ」
「あぁ、確かにそうですね」
雛菜は土方の発言にうんうん、と頷く。
「ちゃらんぽらんでいい加減で、お金にがめつくて、駄目なところだらけですね。…でも優しい、私を護ろうとしてくれる大切な兄貴分なんです」
「ブラコンか?」
土方の問いに雛菜は笑って頷く。
「あながち間違いじゃないかもしれませんね」
土方は立ち上がると、煙草の火を靴の裏で消した。
「ったく。んな惚気なんざ聞きたくねぇや」
じゃーな、そう言って立ち去ろうとする土方を雛菜は呼び止めた。
「土方さん」
「あ?何だよ」
雛菜はニコリと笑っていたが、その目は全く笑っていなかった。
「この屋根壊したのって土方さんですよね?」
雛菜が指を差すのは、土方が銀時を斬りつける際に壊してしまった部分だった。
土方は冷や汗を流す。
「立つ鳥跡を濁さず、ですよ。きちんと土方さんが修理して下さいね」
雛菜の正論にぐうの音もでなかった土方は一連の様子を見ていた沖田があざ笑う中、泣く泣く屋根の修理をする羽目に陥った。