poppy 第一章
松下村塾には小規模ではあるものの、武道場がある。
雛菜は先生の授業が終わると銀時を叩き起こし、武道場で手合わせしてもらうのが日課になっていた。
「やっぱり銀ちゃん強いね…」
「ま、まぁやっぱりまだ雛菜は俺には勝てないな」
「雛菜、もっと強く打たないといけませんよ。ですが体裁きはとても良いです。
銀時、あなたは集中力が足りません。雑念が入りすぎですよ。ですが一打が重いので、そこは素晴らしいと思います」
二人とも松陽の言葉に撃沈する。松陽からしたらきっとどうぐりの背比べなのだろう。
「二人ともとても筋がいいです。これからも稽古に励んでくださいね」
「はい!先生!!」
「わかってらぁ」
雛菜は素直に銀時は素直ではなかったが、やはり二人とも嬉しそうだった。尊敬する師に褒められたときほど嬉しい瞬間はないのだ。
「人は護りたい、という気持ちがあれば強くなれます。だから銀時も雛菜ももっと強くなりますよ」
楽しみです、と笑う松陽に雛菜は無邪気に微笑んだ。
「私、強くなって母上を、父上を護りたいです!今はまだ勝てないけど、でも銀ちゃんも松陽先生もきっと護ってみせます」
「お、俺だって雛菜を守ってやらァ!!」
「銀時は私を守ってくれないのですか?」
「いや、アンタには必要ないだろ…」
呆れたように笑った銀時だったが、少し小さな声で、護るに決まってんだろ、と呟いたのを松陽も雛菜も聞き逃さなかった。
「銀時は天の邪鬼ですね」
今日も松下村塾には笑い声が響く。