黒バス
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兄弟だ、と言って拳を突き合わせる二人がいつも羨ましかった。辰也と大我も優しいから私をのけ者にしたことなんて一度も無い。でも二人はやっぱり、二人でバスケをしている時が一番楽しそうで、私がそこに入る隙なんてなかった。
「今度は負けねぇからな!辰也!」
「俺も負けないよ、大我!」
楽しそうに笑う二人を見ているのが辛くて俯く。
ショートパンツから白くて、殆ど筋肉の付いていない足が伸びているのが見えた。辰也や大我の筋肉質なそれとは全然違う、女の足だ。アレックスのスポーツ選手の引き締まった足とも違う。
今度は視界に映り込んできた両手を広げてみる。バスケをするにはその手はあまりにも小さくて、ボールを片手で掴むなんて到底出来そうに無い。腕は二人と比べたら細っこくて、何とも頼りない。
先程辰也から来ておけ、と渡されたパーカーを羽織ってみる。パーカーはとてもぶかぶかで、私と辰也の体格の違いが顕著に現れていた。
やはり男と女という性の差は大きいとつくづく感じる。バスケは好きだし沢山努力もした。アレックスから教わった技術も相まって、女子の中ではそれこそトップレベルだと思う。そんじょそこらの男の子にだって勝てる自信はあるし、それに見合うだけの練習をしてきた。
でもそれじゃ駄目なのだ。私は二人に見合うだけの力が欲しかった。二人と対等に、一緒になって試合できるくらいの力が欲しかった。アレックスくらいの身体能力があればそれも可能だったかもしれない。でも私は人と比べて背も低く、圧倒的に筋肉が付きにくい体質だった。
それになにより。
『駄目だ。優は女の子なんだから、俺達と試合して怪我したら大変だろ?』
辰也に髪を撫でられながら、目を細めて優しくそう諭されてしまえば、私は辰也に従うしか無かった。
私は昔から辰也に滅法弱い。誰よりも負けず嫌いで、努力家でバスケが大好きな辰也が大好きだった。私にとっては二人とも一つ上の学年の『お兄さん』だったが、辰也はその中でも一番上のお兄さんだった。私も辰也を一番に慕っていた。だから辰也の言うことは何でも聞いた。辰也の言葉は絶対だったから。
「分かってくれるよね、優」
甘い毒のような言葉と声で、眉を下げて笑われては、言うとおりにするしかなかった。
―どうして私は男に産まれなかったのだろう。男だったら二人と一緒に切磋琢磨しながら技術を高め合ったり、時には共闘できたりできたのに。
男だったら、もっと真っ直ぐに辰也とぶつかれていたかもしれないのに。