黒バス
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隣の席の子の印象は小動物っぽい、だった。染めてない茶色くてさらさらした感じの髪の毛とかパッチリとした大きな瞳とかからそう感じた。あ、あと小さいところ。
ちらり、と見た時にちょうどその子も俺を見てきた。
「黄瀬涼太…」
うわー、これでこの子が俺のこと知ってんじやん。まーそりゃモデルのキセリョを知らない人なんていないだろうけど。たまたま見ただけなのに好きとか勘違いされたらどうしよ。面倒くせーな。
そう思いながらも一応愛想笑いをすると目に見えてその子は大きく固まった。
あー、これ俺に惚れちゃったヤツだわ。
「すっ…」
す?好き、とか?素敵、とか?
「スイマセンー!!」
「…は?」
何故か謝られた。
「ひぇっ。スイマセン、スイマセン!!知り合いでもないのに名前呼んじゃって、ホントにスイマセン!!」
「え、いや、別にいいっスけど…」
「スイマセンスイマセン!!」
何この子!?めっちゃ謝ってくるんスけど!?え?なんか涙目になってるし、俺が泣かせたみたいになってるじゃん!!
「あ、謝らないでくださいっス!!」
「す、スイマセン!!あっ、謝っちゃってスイマセンーー!!」
ぼたぼたと大きな瞳から滝の如く涙が溢れてくる。どうしたら良いか分からなくてわたわたしていると、教室でざわめきがおこった。痛いほどに視線が突き刺さる。それも冷たい視線。
「キセリョが女の子泣かせてる…」
「おいアイツ何したんだ…」
「あの子フラれちゃったとか?」
まずい、このままだと高校初日だというのに俺のイメージが勝手に悪くなっていく…。流石に三年間あの冷たい目に晒されるのは嫌だ。
「ぜ、全然気にしてないんで大丈夫っスよ!だから泣かないで!?ね!?」
「スイマセン!!黄瀬さんを悪者にしちゃってスイマセン!生きててスイマセン!」
「え!?生きてて!?」
その後、先生が来たことによって事態は収まったが、その子はホームルームが始まってもまだ涙目だった。なんか、プルプルしててちょっと可愛い。チワワみたい。
先生が名前順に自己紹介していくように言った。その子は俺の右隣だから俺よりも後だろう。
俺は自分の番が回ってきたので簡単に自己紹介をする。
「黄瀬涼太っス!中学ではバスケ部でした。高校もバスケ部っス!よろしくお願いします!」
にこっ、と笑うと女子のキャー、という黄色い悲鳴が上がった。うわ、うるさ。そんな思いを押し込めながらもチワワみたいなあの子ーもうチワワちゃんで良いやーはどんな顔してるのかな、と思いチラリ、と見る。するとがっかりしたような顔をして俯いていた。
ちょっと待って!?どこにそんな反応する要素あった!?俺なんでチワワちゃんにがっかりされたの!?
いくつか挟んだ後で、チワワちゃんの番になった。チワワちゃんが立ち上がる。思ってたよりもずっと小さくて驚いた。絶対これ150あるかないかぐらいでしょ。
「桜井優です。中学ではバスケ部のマネージャーしてました。えっと、スイマセン!高校でもバスケ部のマネージャーをするつもり…です」
最後にもう一度だけスイマセン、と言うとチワワちゃんは座った。またもやプルプルしてる。緊張したんだろうなぁ、なんてぼんやりと思う。にしてもホントにチワワに似てるな!?
「チワワちゃんバスケ部のマネだったんスね!」
「えっ、チワワ…?えっ、あっ、はい、スイマセン!」
「や!別に謝らなくていいっスよ。どっちの方で俺のこと知ってたのか気になっただけっスから」
どっち…?と首をかしげるチワワちゃん。この反応、まさかどっちか知らないのでは…!?モデルの方にしろバスケのほうにしろ有り得ないと思うんだけど。でもチワワちゃんなんとなく雑誌とか読まなさそうだからな…。もしかしたらキセリョ知らないかも。
「えっと、俺モデルやってるんスけど、もしかして知らない…っスか?」
「モデル…?知らないです、スイマセン」
「あっ、じゃあやっぱやっぱ俺のこと知ってたのってキセキの方っスか?」
「スイマセン、キセキの世代の黄瀬さんなら知ってます…」
そう言いながらもビクビクと伺うように見てくる。これはもしかすると、俺に憧れのあまり近付けないのかもしれない。モデルじゃなくてキセキのほうだったら顔につられてるわけじゃなさそうだし、仲良くしてあげても良いかもしれない。
そんなことを考えてにこっと笑いながら右手を出した。
「チワワちゃん一年間よろしくっス」
「スイマセン!!嫌です!!」
解せぬ。
* * *
そろそろ兄離れをせねばなるまい。
小さい頃から双子の兄の良くんにぴったりとくっついていた私はいい加減自立すべきだと考えて、桐皇学園じゃなくて海常高校に通うことにした。
良くんがいないことに不安を覚えながらも黒板を確認して自分の席に座る。どうしたら良いかも分からないし、知らない人だらけで緊張してしまう。とりあえず隣の人に話し掛けてみようかな、と思いチラリと見る。
目が合ってしまった。しかもこの人、
「黄瀬涼太…」
声に出したつもりはなかったのに、いつの間にか声に出してしまっていたらしい。黄瀬涼太はにこっと笑いかけてきた。や、ヤバイ。知らない人に名前知られてるとか嫌だよね!とりあえず謝らなくちゃ。
「すっ、スイマセンー!!」
「は?」
謝ると黄瀬涼太さんは真顔になった。や、やだ。この人恐いよ!!助けて、良くん!!
「ひぇっ。スイマセン、スイマセン!!知り合いでもないのに名前呼んじゃって、ホントにスイマセン!!」
「え、いや、別にいいっスけど…」
「スイマセンスイマセン!!」
「あ、謝らないでくださいっス!!」
「す、スイマセン!!あっ、謝っちゃってスイマセンーー!!」
謝らないで、と言うがあの「は?」という地獄の底から出てきたみたいな恐い声が忘れられない。絶対怒ってる!!
恐怖のあまりじわりと視界が歪んできた。うええ、やっぱ良くんと一緒に桐皇学園行けば良かったよぉぉ!!
しかも私が泣いたせいでクラスの人にすっごい見られてるぅぅ!!勝手に泣いてるだけなのに、黄瀬さんが泣かせたみたいになってるし!
どうしよ、黄瀬さんも困ってる!!
「ぜ、全然気にしてないんで大丈夫っスよ!だから泣かないで!?ね!?」
「スイマセン!!黄瀬さんを悪者にしちゃってスイマセン!生きててスイマセン!」
「え!?生きてて!?」
謝ったけどなんか怒らせちゃったかな。黄瀬さん恐い…。もうやだ…。
先生が来たから一応落ち着くことはできたけど、黄瀬さんに申し分けなさすぎて顔向けできない。なんとなくチラチラと見られてるのは分かるけど。あれ、でもこれって自意識過剰なのかな?自意識過剰だったらどうしよう。
一人ずつ簡単に自己紹介していくことになった。黄瀬さんの番になったとき、黄瀬さんは椅子から立ち上がった。
うわぁ、近くで見ると本当に大きい…。キセキの世代の中じゃそこまで身長高くないように見えたけど、全然そんなことなかった。やっぱりすっごく背が高い。
良いなぁ。私ももっと背、ほしい。10㎝くらい分けてくれないかな…。
「黄瀬涼太っス!中学ではバスケ部でした。高校もバスケ部っス!よろしくお願いします!」
黄瀬さんがにこっ、と人当たりの良い笑顔を浮かべると女子からキャー、という黄色い悲鳴が上がった。すごい、黄瀬さん大人気だ。すらっとしてて格好いいもんね。
にしても黄瀬さん、やっぱりバスケ部に入るんだ…。高校でもバスケ部のマネージャーをやるつもりだったけど、黄瀬さんがバスケ部…。
黄瀬さんのバスケ、というと全中の決勝のあの結果が頭にちらついてしまう。あの得点は絶対にわざとだった。それから私のキセキの世代に対する印象は正直言ってあまり良くない。
バスケ部入るの、どうしよう。
ぐるぐると考え込んでいたら、いつの間にか私の番になっていた。それに気がついて慌てて立ち上がる。
「桜井優です。中学ではバスケ部のマネージャーしてました。えっと、スイマセン!高校でもバスケ部のマネージャーをするつもり…です」
バスケ部に入るって言っちゃった…。でも部員は黄瀬さんだけなわけじゃないし、海常高校は強いからきっと先輩はいい人、だと思う!!
「チワワちゃんバスケ部のマネだったんスね!」
ホームルームが終わった後で、黄瀬さんに話しかけられた。なんでこの人私に絡んでくるんだろう…。マネージャーやるって言ったから…?
というか、チワワってなに!?もしかしなくてもそれ、私のことだよね?
「あっ、はい、スイマセン!」
「や!別に謝らなくていいっスよ。どっちの方で俺のこと知ってたのか気になっただけっスから」
どっち、とは何のことなんだろう。黄瀬さんにはいくつか顔があるのだろうか?
「えっと、俺モデルやってるんスけど、もしかして知らない…っスか?」
「モデル…?知らないです、スイマセン」
「あっ、じゃあやっぱやっぱ俺のこと知ってたのってキセキの方っスか?」
「スイマセン、キセキの世代の黄瀬さんなら知ってます…」
黄瀬さんは私がそう言うと、値踏みするように私を見てきた。俺には足下にも及ばないチビ、とか思われてるのかな。こんなヤツにマネージャー務まるのかよ、とか思われてるのかな。
良く分かんないけど、どっちにしても恐いよ…。良くん助けて…。
「チワワちゃん一年間よろしくっス」
にこっと笑いながら握手を求めてくる黄瀬さん。でも無理!!あの目が怖い。あんな試合をする黄瀬さんが怖い。
気がついたら私は叫んでいた。
「スイマセン!!嫌です!!」
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