坂田さん、坂田さん
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朝から何やら向かい側の家、つまり坂田さんの家がうるさかった。何なんだ、と思いつつ買い出しに出かけようとアパートを出る。すると坂田さんが急いで『お登勢』から飛び出してきた。
坂田さんと目が合う。坂田さんは私を見ると物凄い勢いで駆けて来て、ガッシリと肩を掴んだ。痛い。
「いやあの、これは違うから。俺の子供じゃねーから。響ちゃんなら分かってくれるよなァ!?」
「はい?」
意味が分からずに首をかしげていると、「あう」という赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
目線を下に下げると、坂田さんそっくりの赤ん坊が居た。銀髪に紅い目。ふてぶてしい表情。どう見てもちっちゃい坂田さんだ。
「どう見ても坂田さんのこどもにしか見えませんけど」
そう言うと坂田さんは膝から崩れ落ちた。「俺保健体育は5だから」とか「そもそも最近ヤッてねェし」とかぶつぶつと呟いている。いずれにしても人前で喋るような内容ではない。最近ヤッてないって、坂田さん彼女いないんだ。まぁ確かにこんなちゃらんぽらんした人に彼女ができるとは到底思えない。それなら坂田さんの子供ではないのだろう。
「まぁでも、坂田さんが違うというのなら、そういうことにしておいてあげます」
思わず笑いながら言うと、坂田さんはポカンとした表情で私を見た。そんなに私が言ったことはおかしかっただろうか。
「響ちゃんが笑ってんの初めて見た…」
私は思わず真顔になる。失礼だな、まるで私が笑わない人みたいじゃないか。人よりも若干表情の変化が乏しいとは自覚しているけど、別に笑うときは素直に笑う。
「てかやっぱ響ちゃんツンデレじゃん」
「違います」
全くやっぱり坂田さんはムカつく。ツンデレじゃないと言ってるのに、いつまで言い続けるんだ。
私は時計を確認する。もうバーゲンセールが始まる時間だった。急がなきゃ。
「じゃあ彼女がいない坂田さん、私はこれで失礼します」
ぺこりとお辞儀をした後で立ち去る。後ろから「彼女がいなくて悪かったな!!」という声が聞こえて思わずまた笑ってしまった。やっぱり坂田さんは変な人だ。