坂田さん、坂田さん
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「親父、いつもの頼む」
「へい」
今日も土方さんが定食屋にやって来た。今日はオフのようでいつもの黒い隊服ではなく、着流しを着ていた。
お母さんとお父さんがいちゃいちゃとしているのを横目で見ながら土方さんの隣に座っている人が頼んだ親子丼を作る。
「へい!土方スペシャル一丁!」
それにしても土方スペシャルはいつ見ても気分が悪くなる一品だ。親子丼を頼んだお客さんもドン引いた上に口元を抑えている。
「へい!宇治銀時丼一丁!」
尤もそれは坂田さんの宇治銀時丼も負けてはいない。ご飯に小豆をかけると聞くと、おはぎのように思えるが、全くの別物だ。一回試しに食べてみたことがあるが正直気持ち悪くなって吐いた。
「オイオイちょっとわりーんだけど、そちらのマヨネーズの方、ちょっと席外してもらえねーか?そんなもん横でビチャビチャ食われたら食欲も失せるわ。ね、おじさん?」
坂田さんは親子丼を頼んだお客さんに話しかける。親子丼の方はいきなり話し掛けられて戸惑った声を上げる。それはそうだ、もし私が同じ立場に立っていたって戸惑う。
私は親子丼のお客様に心底同情しながら三つ葉を切る。
「だったらテメーが席外した方が得策じゃねーのか?ご飯に小豆かけて食うようないかれた味覚の奴に定食屋に来る資格はねェ。ね、とじさん?」
おまいう。マヨネーズかけて食ってる奴も十分味覚がいかれてる。
坂田さんと土方さんの不毛な争いは続き、その度に親子丼のお客さんが話に巻き込まれている。本当にお客さんが可哀想だ。
「ちょっと、坂田さんも土方さんもいい加減にして下さい。おじさんが可哀想でしょう。それにおじさんは土方スペシャルでも宇治銀時丼でもなくて、親子丼を頼んでるんです」
私はそう言いながら親子丼をおじさんの前に置く。
おじさんは心底助かった、と表情をしながら親子丼に手を付けようとした。だがなぜか坂田さんがおじさんを止めた。
「おい、おじさん。わりーことは言わねぇから一回コレ食ってみ?めっちゃうめーから。俺がおじさんの代わりに響ちゃんの親子丼食ってやるから」
そういって坂田さんは自分が食べていたその丼をおじさんに押し付けて親子丼を取り上げる。
うん?なんで??
「えっ、ちょ、やだよ。俺親子丼食べたいし」
「そんなネコの餌食べられるわけねーだろ。おじさんが食べるのは土方スペシャルだ」
土方さんはそう言いながらなぜか親子丼を取り上げる。まさか、と思ったときにはもう遅かった。
「それにマヨネーズがかかってない親子丼なんて親子丼とは言わねぇよ。ほら、これで土方さん特製、響ちゃんの親子丼の完成だ」
私が心を込めて作った親子丼の上には大量のマヨネーズがかかっていた。努力を全て台無しにされた気分だ。最悪だ。許せん。しかも何だそのダサいネーミングセンスは。てか土方さんに響ちゃんとか呼ばれたくないんだけど。
「いい加減にしろ!!」
渾身のグーパンチを土方さんと坂田さんにお見舞いする。二人は白目を剥いて倒れた。おじさんはヒクリと頬を引き攣らせた後でお金を置いてそそくさと立ち去って行った。
そう言えば出るときに同じ顔をしたような人達も一緒に出て行ったような気がするが気のせいだろうか。
多分気のせいだと信じてる。
その後坂田さんと土方さんにキチンと私が作った親子丼を食べさせてから店を追い出した。もう二度と関係の無いお客さんを巻き込むようなことがないように願っている。
そしてお父さんとお母さん、笑ってないでちょっとは何とかして下さい。