坂田さん、坂田さん
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私はどうやら神様に嫌われているらしい。
「あれ、響ちゃんじゃん」
じゃなかったら今、坂田さんが私の隣に居るはずがない。
遡ること2日前、私は神社へお祓いに行った。理由は言うまでもなく、坂田さんともう会いたくないからである。棒に当たる犬よろしく、私は歩けば坂田さんに当たりまくった。京から帰ってきてから、3日間連続で遭遇するとは一体どうゆう了見なのだろうか。運命とかそういうレベルを通り越して、もはや呪われているとしか言いようがなかった。
私はコンビニに行ったその足で神社に参詣し、『もう坂田さんと会いませんように』と土下座をする勢いでお願いしまくった。
もうこれで金輪際会わないような予感がしたので、私はルンルン気分で神社から立ち去った。
帰路についているとき、私は後ろから巫女さんに話し掛けられた。
「あなた、悩みがありますね」
私は悩みがあることを見抜いた素晴らしい巫女さんに相談をする事にした。お金を払えば神託をするとその巫女さんが言ったので、私は手持ちのお金を全て渡して神託して貰った。
「なるほど、その男性と会うことのない仕事場ですか。キャバクラ『すまいる』が良いでしょう」
そう言われたので私はその日のうちに電話をして面接の約束を取り付けた。サングラスをかけた長髪の店長は結構いい人そうだったし、仕事場の雰囲気も女特有のおぞましいドロドロした争いも特に無さそうで安心した。それに用心棒を請け負っている女性もいるらしく、嫌な思いをすることもないだろう、との事。
正直言って最初は水商売の仕事に良いイメージはなかったが、福利厚生もしっかりしていて悪くないな、と感じた。
すまいるで働くことに決めた私は今日からバイトに入ることになった。
店でナンバーワンの志村妙さんに仕事を教えて貰いながら、お客の相手をしていた。志村さんは美人な上に優しくて凄くいい人だった。
「困ったことがあったら何でも相談して下さいね」
女神というのはきっとこの人のことをいうのだろう、と悟った。
そんなわけで志村さんについている客のヘルプをしていたら、坂田さんがやって来て冒頭に至ったのである。
「まさか響ちゃんがすまいるでバイトしてるとはねー。銀さんビックリ」
坂田さんはそう言いながら尊大な態度で肩を組んできた。真顔、というか自分の目が死んでいくのを感じた。
何故だ。坂田さんに会いたくないからと持ち金叩いて神託までしてもらったのに。こうして会っているではないか。
もう巫女なんて二度と信じない。そう思っていたときだった。
「銀さん」
志村さんの美しい声と同時に聞こえてきたのは坂田さんの呻き声。驚くべき事に志村さんはその可憐な容姿からは想像もつかないほど強い力で坂田さんの顔面を握りつぶそうとしていた。
えっ??志村さんの握力ゴリラなの??
「なに清水さんにきたねー手で触わってんだ、ああ?殺すぞ」
地獄の底から聞こえてきたような声に思わず震える。怖っ、志村さん、ギャップが凄いよ。いや、助かったけども!
志村さんが手を離すと、坂田さんは重力に従って膝から崩れ落ちていった。よく見たら白目を剥いている。
さすがに可哀想になってきた。坂田さんは大丈夫だろうか。死んでないよね?
「さ、これでもう大丈夫よ。響ちゃん、怖かったでしょう。もう安心して頂戴。汚いばい菌は私が抹殺しましたからね」
志村さんはそう言って私を抱き締めてくる。もの凄く良い匂いがした。花の香りがする。多分香水とかじゃなくて、柔軟剤の匂いだろうな。
というか、志村さんはいつの間に私のことを響ちゃんと呼ぶようになったのだろうか。さっきまで清水さんと呼んでいた気がするのだが。
「えっと、ありがとうございます?」
疑問系になってしまったが、志村さんはそれで満足したらしい。ニコニコと嬉しそうに笑っていた。
その後私は志村さんに坂田さんやゴリラさん(よく来る常連さんで志村さんのストーカーらしい)の撃退法を学んでその日のバイトは終えた。
坂田さんに会ってしまったが、撃退法は学べたし、何より志村さんに会えたのであの時の巫女さんには感謝をしておくことにした。
ありがとうございます、百音さん。