坂田さん、坂田さん
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月曜日は俺が一番楽しみにしている日だ。理由は言うまでもなく、ジャンプが発売されるからだ。
俺はスクーターを走らせて大江戸マートまでジャンプを買いに求める。大江戸マートの前にスクーターを止めたとき、定食屋の親父の娘、響子がいるのが見えた。響子は仕事探しの雑誌を真剣な表情で眺めていた。
俺は大江戸マートの中に入って目当ての物を探す。いつもの雑誌コーナーにきちんとジャンプは置かれていた。
あったあった、と心躍りながらジャンプを手に持つ。響子のすぐ近くにジャンプがあったので、何となく響子に話し掛けてみた。
「よぉ、響子ちゃん。何、仕事探ししてんの?」
顔を覗き込むと、響子は怪訝な顔をしながら俺を見上げてきた。俺の方が遥かに背が高いから響子が上目遣いになってしまうのは仕方が無いのだろうが…。
なんというか、こう、グッときた。
響子は話し掛けてきたのが俺だと分かるとあからさまに嫌な顔をしながら、パタンと雑誌を閉じた。
「馴れ馴れしいですね」
俺はその嫌がる表情にゾクリとしながら答えた。
「もう三回も会えばもう知り合いじゃねーの」
「お互いの名前も知らないのにですか?」
「響子だろ?ほら、知ってんじゃねーか」
「私は知らないです」
響子は俺の目を真っ直ぐ見ながら言ってきた。あー、こうやって人の目を見ながら喋れる子って良いよなぁ…。
というか、もしかして響子は俺の名前を知りたくてこんな可愛げのないことを言い返してくるんだろうか。だとしたらそれは逆に可愛い。
俺の名前知りたいのに素直に聞けないとか、何だよそれ。可愛すぎかよ。
俺は自分の口角が上がるのを感じながら響子の頭の上に肘を置いて、人差し指で響子のほっぺを突く。もちもちして柔らかい、女の肌だ。
「何、俺の名前知りたかったの?早く言ってくれれば良かったのに。素直じゃねーな」
そう言うと間髪を入れずに言い返してきた。
「別に興味ないです」
響子は俺の手を払い除けてフン、とそっぽを向きながらレジへ向かう。ほんと、素直じゃねーな。
俺は響子の後ろに立って、響子の目の前で懐から取り出した名刺をちらつかせた。
「ほい、これが俺の名前」
俺がそう言うと、響子はキョトンとした目で俺を見る。また上目づかいだ。しかもさっきみたいなツンツンした表情じゃなくて、少しあどけない表情がそそる。ドS心をどれだけ擽れば気が済むんだろうか。
響子は距離の近さに驚いたのか、さり気なく2、3歩後退しながら俺の名刺を見る。
「万事屋、坂田銀時…」
「そ。銀時だから銀さんってわけ」
「そうだったんですか」
響子はさして興味なさげに返事をした後でまた俺を見上げてきた。3回目。いや、ね。目算で20㎝近く身長離れてるから仕方が無いとは言えさ、そんだけ上目遣いされたらね、うん。何というか、ヤバい。俺の股間が上向きになりそうになるのを必死に堪えながら鼻をほじる。無心になれ、俺。落ち着くんだ。
響子は俺が鼻をほじってるのをみると顔を顰めた。
顰めた顔すら可愛く見えるとか、俺ヤバくね?重傷だろ。
「名刺、どうすれば良いですか?」
それでこの質問だろ?そんなん素直に懐に入れときゃ良いのに、貰うのは気が引けるって顔してる。
「あ?んなもん貰っときゃいんだよ」
「別に要らないんですけど」
憎まれ口を叩きながらも響子は懐に名刺をしまっていた。ツンデレかよ。あー、ダメだ。いちいち可愛い。
「響ちゃんってさー、ツンデレだろ」
響ちゃんと読んでみると、響子はピクリと一瞬だけ動きを止めた。よく見るとその耳は少し赤い。
もしかして、響ちゃんって呼ばれて照れてんの?え、何それ。可愛すぎだろ。ん?俺さっきから可愛い言い過ぎじゃね?でも、うん。響ちゃんが可愛すぎるのがいけねーわ。
「響ちゃんとか馴れ馴れしいです。止めてください」
響ちゃんは提示された金額を手渡し、ビニール袋に入れて貰った雑誌を受け取ると、さっさと立ち去ろうとする。俺は背中を向ける響ちゃんに店員にジャンプを渡しながら声を掛ける。
「いや、だって俺響ちゃんの苗字知らねーし」
響ちゃんは不本意そうな顔をしながら振り返った。
「清水響子です」
「へー。響ちゃんの苗字、清水だったんだな」
苗字を知ったからって苗字で呼ぶとは言ってねーけど。そう思いながら響ちゃん、と強調しながら言うと、響ちゃんはムスッと頬を膨らました。
「坂田さんの意地悪!嫌いです!!」
ぷんぷんと怒りながら大江戸マートから立ち去って行く響ちゃんの後ろ姿を見ながら俺は呟いた。
「意地悪とか、反則だろ…」
響ちゃんは恐ろしい。どこまでツンデレなんだ。
俺は店員にジャンプの金を払いながら頭の中で響ちゃんをどうやって弄るか考える。無意識な上目遣いに怒った顔、照れた顔。泣いた顔とか、でもやっぱり笑った顔が見てみてーな。
結局ジャンプは金が足りなくて買えなかったけど、俺は気分良く万事屋に帰った。新八にゴミを見るような目で見られても、神楽にゴキブリを見たときのような表情をされても全く気にならないくらい俺は気分が良かった。
どうやって響ちゃんを苛めてやろーかな。