坂田さん、坂田さん
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「ちょっと、響子。アンタ京から戻ってきてもう3日も経つんだから、そろそろ仕事探ししても良いんじゃないのかい?」
というお母さんの言葉によって私は仕事探しをすることになった。実家を手伝うことも考えていたのだが、お母さんに人手は足りているとすげなく断られてしまった。残念だ。
仕方が無いので仕事を探すことにした。
「よぉ、響子ちゃん。何、仕事探ししてんの?」
大江戸マートで仕事探しの雑誌を開いていると、例の銀髪の男性が私の顔を覗き込んできた。何というか、物凄く
「馴れ馴れしいですね」
パタンと閉じながらジロリと男性を見る。男性はいつものヘラヘラした笑顔を浮かべながらジャンプを手にしていた。
「もう三回も会えばもう知り合いじゃねーの」
「お互いの名前も知らないのにですか?」
「響子だろ?ほら、知ってんじゃねーか」
「私は知らないです」
男性の目を真っ直ぐ見ながら言うと、男性はニヤリと笑った。あくどいと言わざるを得ない、そんな笑い方だ。
「何、俺の名前知りたかったの?早く言ってくれれば良かったのに。素直じゃねーな」
男性は私の頭に肘を置きながら人差し指でつんつんと突いてくる。やっぱり馴れ馴れしい。会ってまだ3回目の女性に対しての礼儀がなっていないのではないだろうか。
「別に興味ないです」
私は男性の手を払い除けながら仕事探しの雑誌を胸に抱えてレジへ向かう。レジへ雑誌を出そうとしたとき、目の前に名刺のような物が現れた。
「ほい、これが俺の名前」
見上げると紅い目で見下ろす男性の姿があった。いや、うん。近いな。
私はさり気なく距離を取りながらその名刺を男性の手から取った。
「万事屋、坂田銀時…」
「そ。銀時だから銀さんってわけ」
「そうだったんですか」
へー、という感想しか思う浮かばない。名前が分かったは良いものの、名刺をどうしたら良いのか分からず、坂田さんを仰ぎ見る。坂田さんは片手にジャンプを持ちながら鼻をほじっていた。思わず顔を顰めてしまった。
汚いな。鼻糞が落ちてきたらどうしてくれるんだ。
「名刺、どうすれば良いですか?」
「あ?んなもん貰っときゃいんだよ」
「別に要らないんですけど」
そう言いながらもこれも大切な個人情報なので捨てるわけにもいかない。仕方なく懐にしまってレジにいた店員に雑誌を渡す。
「響ちゃんってさー、ツンデレだろ」
坂田さんはまだ話し掛けてくる。いい加減しつこい。なぜこんなに私に構うんだ。放っておいてくれ。てか私はツンデレじゃない。私ほど素直な人はいないぞ。
「響ちゃんとか馴れ馴れしいです。止めてください」
提示された金額を手渡し、ビニール袋に入れて貰った雑誌を受け取る。
「いや、だって俺響ちゃんの苗字知らねーし」
さっきから頑なに名前で呼んでいたのは、私の苗字を知らなかったからのようだ。そう言えば私も自己紹介をしていない気がする。なんだか坂田さんの思い通りに事が進んでいるようで、非常に業腹だが響ちゃんと呼ばれるのは嫌なので仕方なく名前を教える。
「清水響子です」
「へー。響ちゃんの苗字、清水だったんだな」
苗字を教えた意味は果たして何処にあるのだろうか。結局響ちゃん呼びなら教えなければ良かった。
キッと坂田さんを睨むも当の本人はニヤリと楽しそうな笑みを浮かべている。そう言えば前回会ったときにドSと言っていた気がする。どうやらそれは嘘ではなかったらしい。人を虐めて楽しむだなんて悪趣味だ。全く、腹が立つ。
「坂田さんの意地悪!嫌いです!!」
私は肩を怒らせて大江戸マートを立ち去った。3日間連続で坂田さんに会うなんてとんだ厄日だ。あ、そうだ。神社に行ってお祓いをして貰おう。そしたらきっと顔を合わせることもないだろう。