坂田さん、坂田さん
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「なぁ頼むってさ~。そろそろ機嫌直せよ~」
横でイヤホンを付けながらピコピコとゲームをやり続ける兄にイラッとする。誰のせいで機嫌が悪いと思ってんだ。
「なんで私がこんな馬鹿のために、大晦日の日にたかがゲームのために並ばなきゃいけないのよ」
「しょうがねーじゃん。だってみーちゃんが欲しいって言うんだもん。お一人様一点までだからさー、お前居ないと困るんだよ」
誰だよ、みーちゃんって。そんなに欲しいなら人に頼まず自分で買えや。クソ兄貴は馬鹿だから悪い女に貢がされているような気がしてならない。…この前近藤さんが、志村さんに脅されながらこのゲームを強請られてたっけ。あんまり考えないようにしておこう。
ブンブンと頭を横に振って、志村さんの恐ろしい顔を頭から振り払う。アレは本当に恐かった。
「なぁ響子~。寒いんだけど~。なんか温かいもの買ってきてくれね?」
「自分で買いに行け!!」
キッとクソ兄貴を睨みつけると、クソ兄貴はだる~、なんて言いながらゲームを再開した。我が兄ながら、本当にコイツ、クソヤローだ。いっぺん死んでこい。イライラとしていると、クソ兄貴の肩にポン、と人の手が置かれたのが見えた。
「おい」
聞き覚えのある声に目を見開く。この声は。
「なに寒空の下響ちゃんを連れ回してんだ。羨ましいなコノヤロー」
坂田さんだ。ほんの少しだけ心が浮つく、がすぐに正気に戻った。だって坂田さん、凄い寒そうなんだもん。坂田さんはいつもの着流しの上にマフラーをつけるだけという非常に防寒性のない格好をしている。片肌脱ぎだから、半分はいつもの半袖な訳で。…お前は小学生か。
「え?アンタこんな女が好きなの?趣味悪くね?こんな生まれてこの方彼氏すらできたことのない女が良いの?」
ありえねー、とゲラゲラ笑うクソ兄貴にピキリと米神に青筋が浮かぶのを感じた。おいテメー、何人の個人情報晒しとんのじゃ。確かに彼氏なんてできたことないけどさ!!
坂田さんはクソ兄貴の言葉に顔を顰めてから徐々に目を見開いた。そして勢い良くクソ兄貴に掴みかかる。
「お前まさか…響ちゃんのセフレか!?」
「何でそうなるんですか!!」
坂田さんに片腕だけで身体を持ち上げられるクソ兄貴はとても格好悪かったが、仕方が無いので助けてあげる。クソ兄貴、本当にヘタレだからな。坂田さんの剣幕に腰を抜かしている。
「坂田さんが何を勘違いしているのかは知りませんけど、これは私のクソ兄貴ですから」
坂田さんはポカンとしながら私とクソ兄貴を見る。まぁ確かに顔立ちも性格も双子とは思えないほどに似ていないけど、そんなにまじまじと見ないで欲しい。坂田さんは何を思ったのか、急に顔をキリッとさせた。いつもより心なしか目がキラッとしているし、目と眉の距離が近い。こうやって見ると、なかなか格好良いかも…って何考えているんだ、私は。正気になれ。こないだのアレも気の迷いだ。
「お兄様、響子さんのことで少しお話しが…」
坂田さんはそういうと!無理矢理クソ兄貴を引っ張っていった。坂田さん、何してんだろ。不思議を思って首をかしげていると、ずっと坂田さんの後ろにいた神楽ちゃんと新ちゃんさん(この前志村さんがそう呼んでいた)が私につめ寄ってきた。
「響ちゃん、馬鹿がゴメンアル」
「すみません、響ちゃんさん。銀さんが…」
未成年の子ども達に代わって謝られる坂田さんって一体何なんだろうか。2人の謝罪に苦笑いしながら応じる。
「いえ、大丈夫です」
私がそういうと、2人は互いに目を見合わせた。アイコンタクトを交わすなんて、仲良いんだなー。
2人はニッコリ笑いながら視線を再び私に戻した。
「響ちゃん、銀ちゃんをヨロシクアル」
「銀さん、あれでも響ちゃんさんに本気で惚れ込んでいるみたいなので」
「こないだプロポーズもしたって言ってたネ」
「土方さんに邪魔されたみたいだけどね」
2人の言葉に私はへなへな、と地面に座り込む。どんどん赤くなっていく頬を抑えて俯く。
やっぱりあれ、プロポーズだったんだ…!
どうしよう、凄く嬉しい。坂田さんはセクハラ大魔王だし、変な呼び方してくるし、自分でドSとか言っちゃうし、鼻はほじるし、味覚は可笑しいし。
でも、いつも真っ直ぐに自分の思いをぶつけてきて、素直になれない私の本心を見つけ出してくれる。
なんだ、私もう結構前から坂田さんのこと、好きだったんじゃん。
クソ兄貴を連れて戻ってきた坂田さんは私を見ると、嬉しそうにへらりと笑った。もう、そんな顔をするから調子狂っちゃうんだ。
「坂田さん、もう一回して下さいよ」
坂田さんは私の言葉に大きく目を見開いた後で、顔を真っ赤にして目を彷徨わせた。
「今度は、きちんと返事をしたいです」
坂田さんは私のその言葉に、途端に真剣な顔付きになった。坂田さんは私の両手をしっかりと掴んで、じっと私の目を見つめた。
「響ちゃん。いや、響子さん。俺と家族になって下さい」
ストレートな言葉が嬉しくて、頬が緩む。やっぱり私はいつでもストレートに言葉をぶつけてきてくれる坂田さんが好きなんだ。
「はい、私も坂田さんと家族になりたいです」
…そう、私は忘れていた。ここは公衆の面前だったということを。
その場に居合わせた真選組の皆様には正気か!?と言われ、周りにいた人達には拍手とリア充爆ぜろとの言葉を貰い、そしてゲームの取材に来ていたカメラにバッチリと撮られ、あろうことか全国区に流されることとなった。
To be 「銀時さん、銀時さん」…
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