坂田さん、坂田さん
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額を付き合わせてコソコソと喋るメガネさんと坂田さん。しかし以外と声が大きいため、こちらまで聞こえてくる。
「ヤベーよ。なんで4番引いてんだよバカ殿。ヤベーよ怒ってるよアレ絶対。勘弁してくれよ、悪気は無かったんだよ。
しかもよりによってもっさりブリーフの日に当たっちまったよ。恥の上塗りだよ」
おい、坂田さんが4番って言ったんだろ!!将軍様のせいにするなよ!私もちょっと空気読めよって思ったけどさ。てかもっさりブリーフって何なの?
「将軍家は代々もっさりブリーフ派だ」
…将軍様に聞こえちゃってるじゃん!間違いない、坂田さんは明日処刑される。取り敢えず冥福を祈っておこう。
「ちょっと響ちゃん?俺まだ死んでねぇから!つか死にたくないし!!」
「でもこのままだと坂田さん、斬首ですよ」
「わかってるっつーの!!」
「取り敢えず将軍をあのパンツ姿から元に戻さないと…」
なんて喋っていると、もう既に2回戦が始まっていた。ちょっと待って、私まだ引いてないんだけど!
将軍になったのはどうやら志村さんのようだ。志村さんはやったぁなんて喜んでいる。志村さんはどうしよっかなー、なんて迷う素振りをしながら笑顔で命令をした。
「3番の人がこの場で1番寒そうな人に着物を貸してあげる」
姉上、という声を漏らしたメガネさんに、志村さんはパチンと綺麗なウインクをした。美人のウインクの破壊力ってとんでもないな…。てかちょっとまって、志村さんとメガネさんってご姉弟だったの!?
…よく見れば目元とか似てるかも。メガネ掛けてるせいか、メガネさんが地味という印象が抜けないけど。
ところで3番の人って誰だろう。誰も着物を脱いでないけど。勿論自分では無いことは分かっているため、きょろりと辺りを見渡す。すると将軍様が自身の下着に手を掛けているのが見えた。えっ、嘘でしょ、ちょっと待って…!!
咄嗟に目を逸らしたから局部は見なくて済んだ。だが、もう完全に将軍様を見ることができない。これ接客する者として失格だな…。でも流石にアレを見ることはできない。というか見たくない。
またしても坂田さんの「あっちのほうは足軽」などという最低の発言が聞こえていたらしく、将軍様は「将軍家は代々、あっちのほうは足軽だ」なんて返している。そんな下情報知りたくなかったよ…。
「ちょっとこれ、臭いから脱いで良いかしら」
美人さんの声が聞こえてきた。どうやら将軍様は美人さんに着物、というか下着を貸したらしい。まぁ確かにあの中で1番寒そうなのは美人さんだったからな…。というか、美人さん律儀に将軍様の下着を身につけてたんだ…。凄いな。
そうこうしている間に、またしても3回戦目が始まっていたようだ。今度将軍になったのは美人さん。
「私の願いは一つ。銀さんとセッ…」
美人さん、そんなに坂田さんのこと好きなんだ。志村さんにかかと落としを喰らっている美人さんをぼんやりと眺める。坂田さんの魅力が分からない。何がそんなに良いんだろうか。
じーっと坂田さんを眺めていると、坂田さんが振り返った。坂田さんはちょっとビックリした後でニヤリとした笑みを浮かべた。
「響ちゃん、もしかして嫉妬~?それとも銀さんに見とれちゃったとか?」
「嫉妬じゃないですし、今の坂田さんのどこに見とれる要素があるんですか」
中途半端な女装姿の坂田さんは、正直言ってヤバい。筋肉質な体型だからオネエにしか見えないし。というかそのツインテールの鬘はどこから持ってきたの??メガネさんもそのお下げは何処に隠し持っていたの??
「ほら、銀さんのこの美しい肉体とかさ」
「まぁ確かに坂田さん、背も高いですしスタイル良いですよね」
「…えっ」
坂田さんは案外褒められ慣れていないというか、唐突な褒めに弱いらしい。ちょっと顔が朱くなってる。…なんか、可愛い?
「でも私背低めなんで、もう少し背が低い方のほうが喋るの楽で良いんですけどね」
例えばタカさんとか。タカさんだと身長差が15㎝くらいになるから少しだけ楽だ。首が疲れない。でもタカさんにとって身長はコンプレックスらしいので、絶対に言えないけど。
「響ちゃんって上げて落とすの上手いよな…。Sなの?隠れSなの??」
「Sじゃないです。Nです。ノーマルです」
坂田さんと下らないやり取りを繰り広げていると、誰かが横を通った。やけに肌色が多い。まさか、まさか…。
「トランクスを買ってくる」
どうやら将軍様はまた外れクジを引いたらしい。将軍様、何かに取り憑かれているんですか?運悪すぎじゃないですか??
慌てて皆と素っ裸のまま外に出てしまった将軍様を追いかける。将軍様、このままだと公然猥褻罪で捕まっちゃうから!!
「早くクジ引くアル!!」
神楽ちゃんの言葉に将軍様は少し驚いた顔をした後でクジを引く。将軍様の引いた棒には、きちんと将軍と書かれていた。神楽ちゃんは元より将軍と書かれて棒しか用意していなかったようだ。
「将軍様、我らに何なりとご命令を!」
将軍様のご命令に、ふっと笑みがこぼれた。多分、将軍様は今回の夜会を楽しんでおられたのだろう。散々な目を合わせてしまったが、将軍様が楽しかったなら何よりだ。
私達は将軍様のご命令に従って、すまいるへと戻る。他のキャバ嬢達は真選組の皆さんと闘っているが、当然私にそんな力はないため大人しく戻ることにする。
店内に入り、とっちらかった店内を片付けていく。さて、このお方をどうするか。
「松平様、松平様」
キャバ嬢達にやられて地面に伸びてしまっている松平様の肩を軽く叩く。すると松平様はうーん、などと言いながら私に絡みついてくる。私の腰に両腕を巻き付けている。ちょっと、流石にそれは…!!
「松平様!起きて下さい!!松平様!!」
松平様はあろうことか私のお尻をなで回し始めた。や、やだ…。気持ち悪い…っ!!
「止めてください!!やだっ!!」
もうやだ!この人確信犯じゃないの!?じゃないとこんなピンポイントでなでられないでしょ!!
「んんー。阿音ちゃぁ~ん」
胸が押しつぶされる。よく見なくても、今どういう状況なのか、分かる。松平様は私の胸に顔を埋めている。私は相手が客だということも忘れて、思わず叫んでしまった。
「キャァァァ!!」
ぎゅっと目をつぶると、響ちゃん、と叫ぶ坂田さんの声が聞こえた気がした。
私の上に乗っていた重たい感覚がなくなり、恐る恐る目を開ける。
「大丈夫か」
視界いっぱいに飛び込んできたのは、真剣な目をした坂田さん。紅く光る双眼にどきりと心臓が音をたてた。
「もう大丈夫だ」
坂田さんはそう言って、私の身体を強く引いた。ふんわりと坂田さんの甘い香りが漂ってきた。坂田さんの銀色のウィッグに思わず顔を埋めてからハッとした。何してるんだ、私は。
「っ、いやァァァ!」
バチィン、といい音が響いたのを気にも留めずに走り去る。バイト?もうそんなの知るか!
私は坂田さんが来てくれたことに、確かに喜びを感じていた。そして坂田さんに抱きしめられたとき、思ってしまったのだ。
私、坂田さんが好きだ。
ツインテールのウィッグを付けて、身体にタオルしか巻いてない変態を、だ。
ほんと、本当に馬鹿。
勢い良く店を出てきた私を見て、土方さんがギョッとした顔をしていたけど、そんな事は気にせずに走って家まで帰った。
今日はもう全部忘れて早く寝よう。