坂田さん、坂田さん
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「やったぁ!!」
私は飛脚から手紙を受け取り、ここが往来だということもすっかり忘れて大声を出す。嬉しさのあまり手紙を胸に抱えて笑っていると、飛脚の兄ちゃんは生暖かい目を向けてきた。私はその反応にハッとして気まずさを誤魔化すためにニコッと笑った。
飛脚の兄ちゃんが去って行ったのを確認するとさっそく手紙を開ける。差出人はいつもお世話になっているタカさんだ。
『今江戸にいる。港の近くの船に居るから好きな時に来い』
久々にタカさんに会えることが嬉しくてついにやけてしまう。私にとってタカさんは言わば近所のお兄さんのような存在なのだ。何度も読み返した後懐に手紙をしまう。
「響ちゃんー」
抜けた声が聞こえるのと同時に頭の上にのしかかる重み。重い。そろそろセクハラで訴えるぞ。
「何ですか坂田さん。私今凄く機嫌良いんで邪魔しないで下さい」
「俺に会えて嬉しいんだ」
「んなわけないでしょう。寧ろ一気に機嫌悪くなりましたよっ」
私はそう憎まれ口を叩きながらもタカさんに会える喜びの方が勝っているので、坂田さんを適当に押し退けるだけに留める。
「ふーん…もしかして響ちゃんが機嫌良いのってさ、これのせい?」
そういう坂田さんの手の中にはなぜか懐にしまったはずのタカさんの手紙。え、いつのまに?
「えっ、ちょ、返して下さい!!」
「差出人は…こりゃ男だな。えっ、まさか響ちゃんの彼氏じゃないよね?」
「違いますよ!!てか彼氏とかいませんし…じゃなくて、それ返して下さい!大切な物なんです」
ふーん、と言いながらタカさんの手紙を眺める坂田さん。じっくりと手紙を眺めていた坂田さんはやがて不機嫌な表情になった。
「なんか見覚えのある字だな…。なんかこの文字見てるとイライラしてくるわ」
「はい?」
坂田さんはムスッとしたまま私に手紙を押し付けるようにして立ち去って行った。自分から話し掛けてきたくせに勝手に機嫌が悪くなる坂田さんが良く分からない。いつもはウザイくらいに絡んでくるのに。
微妙にもやもやした気持ちを抱えたまま私はアパートに戻って行った。