竜宮篇
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青い空、眩しい太陽とくれば。
「神楽ちゃん、海だよ!!」
「見れば分かるアル」
塩対応の神楽ちゃんはどうやら日射しに弱いために海に入れないらしい。だから機嫌が悪いようだ。でも足だけでも浸かれるから、と半ば無理矢理海辺へ連れてきたのだ。神楽ちゃんは海なんて嫌いアル、なんて言っていたけど本当は海に入りたいこと知ってるんだから。
現に神楽ちゃんは今、嬉しそうに笑いながら寄せては返す波で遊んでいる。
「響ちゃん!!」
「わっ!」
神楽ちゃんに声を掛けられて振り返ると思いっきり水を掛けられた。やっぱり海の醍醐味といえばこれだよね。私も負けじと神楽ちゃんに水を掛け返す。
「ふふっ、仕返し」
「ホワタァ!!」
神楽ちゃんが負けじと放った水はなぜか私の真横を通って、一滴も私には掛からなかった。寧ろ私の斜め後ろ辺りにいた人によく掛かってしまったらしく、へぶらぁという叫び声が聞こえてきた。やばっ、早く謝らなくちゃ。
後ろを振り返る。絶句した。
「あ、あの…」
「撮ってないっスよ。ほんとに撮ってないスから」
そこには亀の甲羅を背負った眼鏡の中年男性がいた。手にはなぜかビデオカメラ。そしてこの言い訳じみた言葉。…いや、絶対撮ってたでしょ。
「お前さっきから響ちゃん付け回してたろ!!私見てたアル!!」
「そうなんですか?」
「ち、違うって言ってるじゃないですか。止めて下さいよ」
「あん?てめっ、あんまなめてっと、あん?」
神楽ちゃんは問答無用とばかりに亀?をしばき始めた。膝裏を狙う辺り本当に容赦ない。亀も物凄く痛がっている。
「か、神楽ちゃんそろそろ止めた方が…」
私がそう止めた瞬間、亀は勢いよく地面に倒れ込んだ。
「立てコルァ。あん!?今のはクリリンの分だ。次は…」
「神楽ちゃあああん!?何やってんのォォォ!!
大丈夫ですか!!大丈夫なんですか、亀なんですかコレ」
恐らく神楽ちゃんを止めにやってきたであろう隊長さんは急いで亀を助け起こす。そして海で亀を虐めるなんて暴挙だよ、と神楽ちゃんを咎めた。
「あ、違うの隊長さん…。どうやらその人私のことつけ回してたらしくて、神楽ちゃんは寧ろ私を助けてくれたの」
「付け回してただけじゃなくてコイツ響ちゃんのこと撮ってたアル!!」
「私も見ました!ずっと彼女のこと嫌らしい目で見てました」
神楽ちゃんの言葉に周りにいた女性陣が参戦してくる。マジか、全然気づかなかった。
ずっと静観していた銀時さんが亀に近づいた。
「…何、オタク撮ったの?」
「…撮ってないっスよ。僕コンブ撮ってただけだし」
「ウソつけヨ!!響ちゃんの後ばっか付け回してたくせに!!」
「撮ってないスよ。ホント言いがかりはやめてくんないスか。迷惑なんスけど」
それじゃあまるで神楽ちゃんが嘘をついているみたいじゃない。別に私としては気持ちは悪いけどいくら撮られたところでどうって事無い。けれど神楽ちゃんを嘘つき呼ばわりするなら黙っていられない。
「かましまへん。どうぞうちんこと、撮っておくれやす。そないええカメラなんやさかい、撮りとうなんでなぁ」
ビシリ、と場の空気が固まった。神楽ちゃんは首を傾げている辺り意味が分かっていないのだろう。隊長さんや亀、銀時さんは冷や汗をかきながら身体を震わしている。
「響ちゃん、どういうことアルか?なんで銀ちゃん達震えてるアルか?」
「さっきの言葉はね、『そんなボロい雑魚カメラで私のこと撮ってんじゃねーよボケカス』を遠回しに言った言葉なのよ」
「響ちゃん恐いアル」
「そう?直接言わないだけまだ優しいと思うよ」
とりあえず銀時さんがカメからカメラを取り上げて中を確認するということで話は付いた。銀時さんの隣に立つと銀時さんは私にも見やすいようにカメラの位置を下げてくれた。こういうところ好きだなぁ。
中を改めるとそこには胸やお尻がドアップで撮られている動画があった。私と同じ水着の柄だ。間違いなく私を盗撮していたらしい。ぽたり、とカメラに赤いものが落ちてぎょっとする。まさか…。
おそるおそる顔を上げると、銀時さんは鼻血を垂らしてカメラをガン見していた。銀時さんはそのまま私をじーっも見下ろすと、銀時さんが着ていた『沿岸警備隊』と書かれた羽織を脱いで渡してきた。
「そういやお前、これ着てねぇじゃん」
「…ありがとう」
多分銀時さんなりに気を遣ってくれたんだろう。銀時さんが着ていたものだから私にはかなり大きい。まぁお尻も隠れるし良いかな。後ろから見たら変態っぽいけど。
…更に鼻血を出し始めた銀時さんはもう気にしないことにした。