真選組動乱篇
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万事屋さんに戻って、夕食を作ったは良いが一向に帰ってくる気配はない。ちらりと時計を見るともう日付が変わろうとしていた。
「…何かあったのかな」
皆のことが心配だ。でも一人で待つのは寂しい。早く帰ってきて欲しい。置いて行かれるのは嫌だ。
そんな事を思っているのに、まだ仲良くはなりきれなくて、今一自分の立ち位置も分からなくて、中途半端に距離を置いている自分がいる。さっきだって、ついて行けば良かったんだ。それなのに一緒に居て良いのか分からなくて、買い出しに行くなんて言ってしまった。
「ほんと、私って面倒くさい女…」
前にタカさんが『女ってのは面倒くせェ』って言ってたけど、本当にその通りだと思う。自分本位で自分が傷つくことを嫌う。こんなのでは銀時さんにも呆れられてしまうだろう。銀時さんは猫みたいに気ままで捕らえ所のない人だ。私のように面倒くさい女になんてきっとすぐ捨てられてしまうだろう。
「お願い、早く帰ってきて…」
心配だ。胸が張り裂けそう。息をするのも辛い。涙も出てくる。銀時さん。早く、早く帰ってきて…!!
ふっ、と意識が浮上した。やけに眩しくて目を擦って身体を起こす。どうやら皆の帰りを待っている間に疲れて寝てしまったみたいだ。膝に温かい重みを感じて目線を落とす。そこには私の膝を枕にした神楽ちゃんがいた。
「響ちゃん…」
隣から聞こえてきた声に右を向く。そこには机に突っ伏した銀時さんが鼾をかきながら寝ていた。向かいには同じように机に突っ伏して寝ている隊長さんが。身体を起こすとばさり、と何かが落ちる音がした。銀時さんの着流しだ。
…私、本当に馬鹿だ。勝手に一人で壁を作ってまだ仲良くなれてないだなんて嘆いてた。皆私のことをこんなにも想ってくれていたのに。よく見たらみんなところどころ怪我をしていた。特に銀時さんは包帯まみれた。こんな重体なのに私の側にいてくれた。こんな所で寝るよりも、布団で寝た方が絶対に良いに決まってるのに。
「お帰りなさい」
起こさないようにそっと隊長さん、神楽ちゃんの頭を撫でていく。皆が帰ってきてくれて本当に良かった。最後に銀時さんのふわふわの髪の毛を撫でる。銀時さんのふわふわの髪の毛が、銀時さんが、愛おしくて何度もそうやっているとだんだんと銀時さんの頬が赤く染まっていった。
…もしかして。
「起きてます?」
「…そういうのは気づかない振りをするもんなの」
子供のように口を尖らせて拗ねた表情をする銀時さんが可愛くてつい笑い声を漏らす。すると軽くデコピンをされた。
「痛いです。痛すぎて涙が出てきました」
じんわりと浮かんできた涙を痛みで誤魔化す。銀時さんは呆れたようにため息を吐いた。
「響ちゃんさぁ、こんな時くらい素直になろーぜ?いくら俺がツンデレ好きっつってもやっぱり限度が…」
銀時さんが何も言えなくなったのはきっと、私が銀時さんに抱きついたから。銀時さんの鼓動の音が聞こえてきて安心した。ずっと、心配だったんだから。ちょっとくらい困らせたって良いよね。
「銀時さん、お帰りなさい」
「…ただいま、響ちゃん」
銀時さんもぎゅっと私を抱きしめ返してくれた。本当に帰ってきてくれて良かった。