真選組動乱篇
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大江戸スーパーへと向かっていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。久し振りだから私のことは覚えていないかもしれない。
うーん、でも声かけるだけかけてみよう。
「鴨さん」
鴨さんはピクリ、と身体を揺らした後でゆっくりと振り返った。その顔は驚きに満ちていた。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「…どちら様かな?」
まさかの忘れられてた。2、3回会ったくらいだしまぁこんなものなのかもしれない。
「かなんなぁ、なんべんも会うたのにうちんこと、忘れてもうたん?」
首を傾げながらそう言うと、鴨さんは目を見開いた。まるで亡霊でも見るかのような目つきだ。
「勝瑠さん…か?」
「ふふっ、お久しぶりです」
鴨さんは私が京にいた頃に何度かお会いした。きっと鴨さんからしたらタカさんが贔屓にしていた仲居、くらいの印象しかないのだろう。
「まさか貴女に会うとは…」
「私も鴨さんにお会いするとは思っていませんでした」
いつ戻ってきたのか、と聞こうと口を開いた時、鴨さんの側を付いていた真選組の隊服を着ている男性が遮るように口を開いた。
「伊藤先生、お時間が…」
「あぁ、分かっている。勝瑠さん、今度は私も貴女にお酌してもらいたいものだ」
「おおきに」
ふふっ、と笑って手を振る。鴨さんは僅かに嬉しそうな顔をしていた。
「行こうか、篠原君」
篠原君と呼ばれた彼はちらり、と私を一瞥してから鴨さんと共に立ち去った。篠原さんはどうやら私の想いに感づいたらしい。その姿が人混みに紛れてから小さく舌を出した。
「ほんと嫌な人。酌なんて絶対嫌」
鴨さんが私に酌して欲しいと言ったのはタカさんへの当てつけだろう。今まで私はタカさんにしかお酌をしてこなかった。私がしたくなかった、というのもあるしタカさんも私の気持ちを汲んでか鴨さんにお酌をさせないようにしていた。今回このことをわざわざ持ち出してきたのは恐らく自分の権威をアピールするため。自己顕示欲の塊のような人。そういうところがいけ好かないのだ。
「銀時さんに美味しい日本酒でも買って帰ろうかな」
お酌は好きな人にしかしたくない、というかしない。それが私のポリシーだから。絶対アンタになんかしてやんない。
もう一度べーっと舌を出してから大江戸スーパーへと向かった。