Case1
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
園子がカラオケに誘うだなんて珍しいとは思っていた。だがまさか今をときめく人気バンド「レックス」のライブの打ち上げに混ざることになるとは思っていなかった。
場違いなその雰囲気に圧倒されて、蘭や園子はカチカチに固まっている。
「あら、どーしたのあなた達…せっかく来たんだからもっと気軽に話し掛けて良いのよ!!」
レックスのマネージャー、寺原麻理さんは私達を気遣ってくれている。だが二人は麻理さんが美人なためか、顔を俯かせて真っ赤にしていた。
「二人とも聞きたいこと、あるんだよね。聞いたらどうかな」
私がジュースに口を付けながら二人に話し掛けると、二人はじゃあ、とレックスのボーカル、木村達也さんに凄い勢いで尋ねた。
「女優の小泉裕美子と付き合ってるって噂、本当なんですかー?」
「へ?」
達也さんは二人の言葉が予想外だったのか、目を丸くした。そして二人の言葉を明るく笑い飛ばした。
「ハハハ…心配すんなよ、ありゃーただのデマだよ!デマ!!」
「よかったー!!」
蘭と園子はその発言にキャーキャーと喜ぶ。いきなり元気になった二人に苦笑いをする。私はレックスは好きだが、二人のようにのめり込むほどでは無い。せいぜいスマホで音楽をダウンロードするくらいだ。コナン君も二人に呆れた視線を向けていた。
「さぁ、パーッと盛り上がろうぜ!!」
ドラムの山田克己さんが明るく声を掛ける中、キーボードの柴崎美江子さんは何かに怯えるような表情をしながらぎゅっとビールのジョッキを握りしめていた。よく見れば身体も震えている。
「あの、大丈夫ですか。からだ、震えていらっしゃいますが…」
私が声を掛けると、美江子さんは身体を大きく跳ねさせた後、ぎこちない笑みを浮かべた。
「え、えぇ…大丈夫よ。ちょっと寒かっただけだから…」
「…そうでしたか。じゃあ宜しかったら、私のマフラー、使って下さい。首を温めたら少しはマシになりますから…」
私は美江子さんの言葉に違和感を覚えながらもマフラーを手渡す。意外にも美江子さんはマフラーを受け取って使ってくれた。やはり首が出てしまっている服装はクリスマスのこの時期には寒かったようだ。
「Lucky Lucky 世の中甘いよ ヨ・ロ・シ・ク!!
天下を取ってみせるよー!!」
トップバッターを務めたのは蘭と園子。レックスの皆さんは先に私達の歌を聴いてみたい、と言ってくれたのだ。ちなみにコナン君に歌う?と尋ねてみたところジロリと睨まれた。コナン君は絶対音感を持っているが、歌は上手くない。昔から蘭に音痴、と笑われていたほどだ。
二人が歌い終わると、山田さんは指笛を鳴らし、美江子さんはパチパチと拍手をした。
「へー…二人とも上手いじゃない」
美江子の言葉に二人は照れたように笑った。プロ、それも自分が好きなバンドの人に褒められたことで自信が付いたようだった。
「じゃあ次はさくらの番ね!」
蘭に笑顔でマイクを渡され、思わず頬を引き攣らせる。
「わ、わたしあんまり皆が聴く歌とか知らないんだけど…」
「別にそんなの気にしなくても良いわよ」
「あーうん…」
まだ渋っていると、園子がニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「さくら、早くしないと帝丹小学校の校歌、入れるわよ」
「分かった。すぐに自分で入れるよ」
流石にカラオケに来てまで帝丹小学校の校歌は歌いたくない。私は仕方なしに一番好きな歌を入力した。
明るい、少しゆったりとしたメロディーが部屋の中に流れる。私はそのメロディーを聞きながら目を閉じて、大きく息を吸った。
「君が叩いた胸の―」
この曲を聴くと、いつも新一君の事が頭に浮かぶ。なんとなくこの曲は自分と新一君のようだと思っていたのだ。新一君と出会ったことで変わった私。新一君が狭かった私の世界を壊して、外に連れ出してくれた。
「この未来 世界が廻るように」
私のとても大切な人。