Case2
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夕食を食べ終えてもう一度『脱出王』さんに電話をしようという話になった時に、ふと新一君に名前を呼ばれたような気がした。なんでだろう、と不思議に思いつつも少し気になるために外に一度出てみることにする。
「さくら?どうしたの??」
「うん、ちょっとね…」
誤魔化しながら玄関の扉を開けると、なぜか玄関の前でコナン君が倒れていた。なんでコナン君が倒れているの!?慌てて近づいてコナン君を抱え上げる。コナン君の顔は真っ赤だし、汗もいっぱいかいていた。酷い熱だ。病院に連れて行かなきゃ、と思った時にコナン君に袖を引っ張られた。
「さくら…、逃げろ…。は、早くここから…逃げ…ろ…」
え、と言葉が零れた時に後ろから付いてきてくれていた蘭が大きな上げた。
「コナン君!!」
「えっ、なんでこの子がここに!?」
「取り合えず早くコナン君を寝かせてあげないと…」
蘭の言葉に頷いて急いでコナン君を部屋のベッドに寝かせる。本当に酷い熱だ。前にコナン君が新一君に戻ってしまった時の様子が脳裏を過る。まさか、ね。あの時みたいにコナン君が新一君に戻ったりなんかしないよね?
その心配が顔に出ていたのだろうか。コナン君は薄くぼんやりと開けた瞳から私を見つめてきた。俺は大丈夫だから、と言っているような強い目だ。こういう時、本当は大丈夫じゃないくせに。
「早くお医者さん呼ぶからね。もうちょっと頑張って、新一君」
私の言葉にコナン君は何かを言いたそうに口を開いたが、結局言葉が出てくることは無く、コナン君はそのまま眠りについた。
蘭が水を張った洗面器とタオルを持ってきてくれたので、ベッド横のチェストの上置く。タオルを濡らし、よく絞ってからコナン君の額の上にそれを乗せる。
「なに!?玄関にこのボウズが倒れてた!?」
コナン君が倒れていた事を園子が皆さんに伝えてくれたみたいだ。戸惑う荒さんに黒田さんがここに泊まりたくてしょうがなかったからじゃないか、と言った。いや、違う。首を横に振って黒田さんの言葉を否定する。
「コナン君、逃げろって、そう言っていました。熱があるのに、こんなボロボロになってまで私たちの身を案じてここまで戻って来てくれたんです。きっとなにかよほどのことがあったんです」
「何かって…なんだよ……」
「さあ…それは分かりかねますが、少なくともただ事では無いことは確かかと」
新一君はいつも真っ直ぐだ。自分の身も顧みずに、人を助けるために、危険を恐れずに躊躇なく飛び込んでくるのだ。きっと今回も私たちを助けるために熱くて怠いであろう体を無理矢理動かして来てくれたのだ。
「逃げろか…。まさかまだ来てない『脱出王』さんと『影法師』さんに関係あるんじゃ…」
「ちょっと…怖い事言わないで…」
女性陣の会話に確かにそうかもしれない、と頷いていると土井塔さんが私に近づいて来た。手には白い紙袋を持っている。何の袋だろう。私の疑問に答えるように土井塔さんはニッコリ笑いながらそれを私に差し出してきた。
「あのー…解熱剤、持ってきましたけど…。見た所ただの風邪だと思うので、薬を飲ませて安静にしていればすぐに楽に…」
「見た所って……?」
「僕、医大生なんです!だから色んな薬を持ち歩くのがクセになっちゃって…」
園子の疑問に照れ臭そうに笑いながら答える土井塔さんから有り難く薬を受け取る。紙袋の中を改めると、確かにカプセル状の薬が入っていた。コナン君は今小学生の体だから、きっと薬は一回一錠だよね。一応後で博士に電話して聞いてみよう。
「ボードリーダーの『脱出王』さんにもう一度連絡を取ってみよう」という荒さんの提案に、頷き皆部屋を出ていく。
「さくらはどうする?」
「私はコナン君に付いてるよ。コナン君の目が覚めたらお薬飲ませてあげたいし」
「そだよね。じゃあ、また後で様子見に来るね」
「コナン君、早く良くなると良いわね」
園子と蘭の言葉に一つ頷き返す。本当に早く良くなってくれると良いな。
パタンとドアが閉まる音がしてからコナン君に向き直る。コナン君の息は変わらず荒く、苦しそうだ。やっぱりコナン君、小さくなってから体調を崩しやすくなった気がする。いきなり高校生から小学生になったのだ。そのストレスはきっと私には計り知れないほど大きなものだろう。体力だって以前よりもきっとずっと無いはずだし。コナン君が無茶をするたびに心配で仕方が無い。
そう言えば。
ふとこの間博士に保護された少女…哀ちゃんの存在が頭を過る。あの子は結局何者なのだろう。あの時は何も聞かないのが正解だと思ったし、実際にそうした事を後悔していない。しかし彼女が何者なのか気にならないかと聞かれれば嘘になる。彼女は何者なのだろうか。
新一君と同じように小さくなった女の子ということには間違いないけど。どうして新一君の家の前に倒れていたのか。普通こういうイレギュラーな事が起きたら、例えば家族とか、新一君みたいに友達とか、兎に角自分が信頼できる人に頼ろうとするんじゃないだろうか。
やっぱり哀ちゃんと新一君には以前から親交があったとしか思えない…。それか新一君じゃなくて、コナン君の事情を知っていたとか??
……分からないな。分からないことは考えても仕方が無い。
とりあえずは薬の事で博士に連絡を取ってみよう。そう決めて携帯を取り出した。
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