Case2
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「取り出しましたるは一枚の白いハンカチ…。そして深紅のヒモと銀色の指輪!ではお嬢さん…ヒモの真ん中に結び目を一つ作って下さい…」
園子の言葉に従って蘭がヒモの真ん中あたりに結び目を作る。結び目と指輪を指示通りに手の平に置いていく蘭。園子はそれを確認するとハンカチを手のひらの上に乗せた。
「ハンカチの中に悪魔に魅入られた私の指を滑り込ませ…怪しげな呪文を唱えると…」
ハンカチの中に手を滑り込ませてゴソゴソと指を動かす園子。あ、ヒモの長さが左右で違う。
「あーら不思議!!いつの間にか指輪がヒモに通ってまーす!!」
「わぁー!すごーい!どうやったの、園子?」
「秘密よ、ヒ・ミ・ツ・!今夜みんなの前でやるんだから!」
そういえば今日はマジックファンの人達の集まりだったな、と思い出す。昨日いきなり旅行行こ、って言われた時は本当にびっくりした。そもそも園子がマジック好きだなんて初めて知ったし。園子がネットで知り合った人たちとのオフ会らしいけど…。大丈夫かなぁ。マジック好きに悪い人はいないとは思うけど、知らない人と会うなんてちょっと不安だな。
「園子がマジックにハマってるって初めて知ったよ」
「実はね、素敵な人に出会っちゃったんだー!!名前は土井塔克樹さん、21歳!私が参加してるインターネットの『奇術愛好家連盟』の常連よ!!丁寧な言葉遣いにウィットに富んだジョーク、そしてときたま零れ出るキザな台詞まわし…。きっと素敵な男性に違いないわ!!」
うっとりとした表情で夢見心地に言う園子に少し呆れてしまう。多分イケメンだって想像してるんだろうな。実際に会った事ないなら顔なんて分からないのに。
「じゃー会った事あるわけじゃないのね?」
「うん!会うのは今日が初めて!彼に今のマジック見せて驚かせちゃおうってわけ!」
「別に驚かないと思うよ…」
助手席に座っていたコナン君は呆れたような眼をしていた。ちらりと車を運転してくれている小五郎さんを見ると、小五郎さんも同じような顔をしていた。多分園子のミーハーさに呆れてるんだと思うけど。
「TVでよくやってる初歩的な手品だよ…。だってアレ、指輪にヒモの結び目を押し込んでそこに親指を入れて引き抜いただけでしょ?みんなはヒモの先を指輪の輪に入れなきゃ通らないって信じ込んでるから、不思議に見えるんだよ…」
あ、やっぱりそうだったんだ。それにしてもコナン君、あんまり機嫌良くなさそうだな。マスク着けてるし、風邪ひいてるのかも。蘭が言うにはオフ会に参加するって言ってから機嫌が悪いらしいけど。新一君あんまりマジックとか好きじゃないからだから機嫌が悪いのか。それとも蘭が知らない人たちと泊まるから機嫌が悪いのか。…止めよう、こんなことを考えるのは。
「男のふりして通信してたぁ!?」
車を降りて別荘に向かっている途中、園子の言った言葉に吃驚してしまう。蘭も驚きすぎて大声を上げちゃってる。でも園子はこれがまた面白いんだ、なんて言ってる。30歳のふりって…。私だったらすぐにバレちゃいそうだな。
どうやら本名じゃなくてハンドルネームだからバレなかったらしい。
「私が『魔法使いの弟子』で克樹さんのが『レッドへリング』!」
レッドヘリング…ミスディレクション?なんだか面白いハンドルネームだな。園子が早くロッジに行ってみんなを驚かせる、と息巻いていた時に小五郎さんが顔を顰めた。
「ん?なんか変なにおいしねーか?」
「そう言われてみれば…」
どこかで嗅いだことのあるような匂いがする。どこだっけ…。
「さくらー!!置いてくわよー!!」
「あ、ごめん!!」
慌てて園子に駆け寄る。園子はもう別荘に着いていたらしく、インターホンを押していた。ドアを開けて出てきたのは優しそうな男の人だった。男性は園子を見るなりにっこりと笑った。
「ああ…、『魔法使いの弟子』さんですね?」
園子が女の子って分かってたんだ。どうして分かったんですか、と聞く園子に男性はなんでもなさそうに園子の発言を見れば分かる、と言っていた。しかも男性だけじゃなくて、他の参加者たちも分かっていたらしい。さすがマジック好きなだけあって鋭い。
「どーせやるなら、田中さんみたいにうまくやんねーとな…」
「あら?私は別に男性のふりをしてるつもりなかったけど?逆に私は『消えるバニー』さんの事、女性だと思い込んでたわよ?」
田中さんの言葉にもう一人の女性も女性同士の話をしてしまった、と頷く。消えるバニーさん、浜野さんは相当上手くやっていたらしい。というか皆性別偽り過ぎでは??
「申し遅れましたが私がこのロッジのオーナーの荒義則で…彼は今回バイトに雇った須鎌君です…」
園子を出迎えてくれた男性が挨拶をする。
「あのー、克樹さん…、『レッドヘリング』さんって来てないんですか?」
「あぁ、彼なら二階に…。あ、降りて来た!」
荒さんの言葉につられて二階を見る。降りてきたのは少し、ふと、…恰幅の良い男の人だった。とてもいい人そうではあるけど、イケメンでは無い…かな。園子を見ると明らかにがっかりしている。こういう事もあるよ。
…というか、この人…どこかで会った事あるような気がするんだけど…。じっと土井塔さんを見ていると、土井塔さんは不思議そうな顔をして私を見た。
「僕の顔に何かついてる?」
「あ、すみません…。貴方と会った事あるような気がして」
そう言うと土井塔さんはへらりと笑って、初めましてだよ、と答えた。