Case2
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家に帰ってから押し入れを漁っていると、やはりというべきか私が小さい頃に着ていた服がとってあった。
「さくらさん、そんな物引っ張り出してどうするんです?」
「困ってる子にあげようかと思って」
「それは感心ですね」
一枚一枚畳んだ状態で、しかも傷まないようにか圧縮袋に入れてあったのでかなり綺麗だ。…でも問題はあの子がこの服を着てくれるか、なんだよね。割とシンプルで子供っぽくないから着やすいとは思うけど。下着は絶対にあったほうが良いから、大型スーパーに寄っていこう。
「叔父さん探してくれてありがとう」
「え、もう良いんですか?」
隣のダンボールにも手を掛けていた叔父さんの言葉に頷く。流石に多すぎても困るだろう。そもそも受け取ってくれるかもわからないし。コレでも足りないようならまた渡せば良い。
「後で自分で片付けるからそのままにしといて」
私の言葉に叔父さんはやや呆れたようにため息を吐いた。
「はい、はい。分かりました。夕飯は外でも構いませんが遅くならないようにして下さいね」
「はーい」
洋服を詰めた紙袋を持って家を出る。その時に傘を持っていくのも忘れないようにする。濡れたくはないしね。大型スーパーに寄って必要そうなものを買ってから博士の家に向かうともう結構良い時間になっていた。早く帰らないと叔父さん心配するからな。
チャイムを鳴らすとすぐに博士が出てきてくれた。
「おぉ、待っておったぞ、さくら君!」
「待たせちゃってごめんね。これ家から持ってきたのと、あと博士ご飯まだだろうと思ってご飯も買ってきちゃった。あ、勿論あの子の分も」
「すまんの。さあ入っとくれ」
博士の家の中に入り、靴を脱いでいると博士が私の荷物を持って行ってくれた。優しい。スリッパを履いて、博士に続いてリビングに行く。あれ、女の子の姿が見当たらない。
「あれ?あの子は?」
「ん?おーい、哀くーん」
「哀って名前なの?」
「そうじゃ、ワシと哀君で考えたんじゃぞ。女探偵の『コーデリア・グレイ』と『V・I・ウォーショースキー』からとったんじゃ!!良い名前じゃろ?」
「確かに。可愛い名前だね」
「あとそうじゃ、哀君をワシの家で引き取る事にしたんじゃ。哀君も新一君と同じように小さくなってしまったみたいでの。色々と大変そうじゃから…」
「そっか」
博士の言葉に頷いていると、博士はおぉ!と明るい声を出した。
「哀君、こっちにおいで。さくら君を紹介しよう」
博士が話しかけた方向を見ると、哀ちゃんがこちらにやって来ていた。お手洗いでも行ってたのかな。
「この子はさくら君。新一君の幼馴染で、哀君が着れそうな服を持ってきてくれたんじゃよ」
僅かに警戒されているのか、あまり近づいてこようとしない哀ちゃんに私もあまり距離を詰めないように気を付けながら目線を合わせるためにしゃがんだ。一瞬ビクリと体を強張らせた哀ちゃん。…怖がらせちゃったかな。できるだけ安心させるように笑いながら挨拶をした。哀ちゃんはちょっと目を見開いて私を見ていた。
「初めまして、朝倉さくらです。何か困ってる事とか、博士には相談しにくい事とかあったら言ってね」
哀ちゃんは小さな声で、「…よろしく」と言ってくれた。中々にクールな対応だけど、今はそれだけで十分だ。訳ありみたいだし。少しずつ仲良くなって良ければ良いな。
あ、そういえば。立ち上がってさっき買ってきたものを取り出す。スーパーの袋に入ってる紙袋、そして私が昔着てた服が入ってる紙袋を哀ちゃんに渡す。
「はい、コレ。もしかしたらあまり好みではないかもしれないけれど、無いよりはいいかと思って。良かったら使ってほしいな」
「服?」
「博士の家には哀ちゃんが着れるようなお洋服無いから。それに哀ちゃんが着てた服はお洋服のサイズ、あってないみたいだし」
哀ちゃんは私から恐る恐る袋を受け取り、中身を覗いてからありがとう、と言ってくれた。哀ちゃん、可愛い。コナン君の服から私の服に着替えた哀ちゃんと博士と一緒に晩御飯を食べている時に、哀ちゃんがポツリと言葉を漏らした。
「貴女は私の事情とか、聞かないの?」
「聞いた方が良かった?」
哀ちゃんは俯いたまま答えなかった。それが答えだ。誰にだって話したくない事なんていくらでもある。私にもある。だから私はあえて聞かない。
「私は哀ちゃんが喋りたくないなら何も聞かないよ。でももし一人で抱え込むのが辛くなったりしたら、その時は話聞くよ」
「…ありがとう」
哀ちゃんはそう言ってから、ご飯を口に運んだ。その横顔がさっきよりも和らいでるように見えて、少しほっとした。