Case2
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「ごめんね、博士…。携帯買うの付き合わせちゃって」
「良いんじゃよ」
朗らかに笑う博士に感謝しかない。以前から携帯の調子が悪かったのだが、最近は益々悪化してきたのでとうとう変えることにした。何度もアプリが止まったり、立ち上がらなくなったり…。流石にもう潮時だった。お兄ちゃんから貰ったものだから大切にしてたんだけどなぁ。新しく携帯を買うとしたら機械に詳しい博士に選んでもらうのが一番だろうと思って、わざわざついてきてもらった。古い方は携帯端末だけ取っておいて、新しい携帯にデータを移してもらおうと博士のお家にお邪魔することにした。
「うわ、雨降ってきちゃった…」
「傘を持ってくるのを忘れておったわい…。さくら君、早く帰ろう」
「そうだね」
携帯を濡れないように慌てて鞄の中にしまう。新しい携帯は防水機能がついているけれど、やはり不安だった。折角買ったのに壊したくないし。それと結構高かったというのもある。叔父さんからお金は貰っていたけれど、それでも少し足りなくて自腹でいくらか払うはめになってしまった。
私は折りたたみ傘を持っていた為、傘を差しながら走る。博士にも入ったら、と言ったけれど断られてしまった。…確かに私の折りたたみは博士には小さすぎるし、それに小雨だから傘を差さなくても困らないくらいだ。逆に気を使わせちゃったかもなぁ。
阿笠博士の家の前まで来たとき、新一君の家の前に白い服を着た女の子が倒れてるのが見えた。驚きつつも慌てて駆けよる。
「さくら君?どうしたん…じゃ…」
「女の子が倒れてる。凄く冷たい。早く温めてあげないと風邪ひいちゃう」
「そ、そうじゃな」
女の子を抱え上げて博士の家に入る。よく見たらこの子、着ている服のサイズがあってない。白衣といい、ワンピースといい…。まるで大人の女性が縮んだ、みたいな…。いやいや、まさかね。コナン君みたいなことがそんなにポンポン起こるわけない。玄関で彼女のずぶ濡れの白衣を何とか脱がせていると、博士がバタバタと足音を立てながらやって来た。
「さくら君、タオルを持ってきたぞ!!その子を拭いてやってくれんか?あとさくら君、君も濡れているじゃろう。洗面所に彼女の服を用意しておいたから着させてあげてくれ。コナン君が置いていったものじゃが…まぁ良いじゃろう」
「分かった、ありがとう」
女の子が痛くないようにそっと髪の毛を拭いていく。私もよくお兄ちゃんに髪の毛を拭いて貰ったな。お兄ちゃんは昔から何かと私の世話を焼くのが好きだった。そんなお兄ちゃんに甘えるのが私は好きだったんだけど。
女の子と一緒に洗面所まで向かう。女の子のワンピースを脱がせたとき、小学一年生くらいの女の子には絶対に必要のないそれをつけているのが見えて思わず声を漏らしてしまった。
「え」
…どうやらこの子も、新一君と同じように小さくなってしまったみたいだ。とりあえず女の子をこんな格好のままにさせておくわけにもいかないし、服だけ替えてしまおう。勝手にお風呂に入れられるのも嫌だろう。私だったら絶対に嫌だし。女の子を着替えさせてソファーに横たえる。博士はいそいそとブランケットを持ってきていた。
「博士、台所借りても良い?」
「構わんよ。ワシはコーヒーが飲みたいのぉ」
「うん、分かった」
勝手知ったるとばかりにやかんを出しす。この子何か飲むのかな。一応この子の分もお湯沸かしておこう。コップに3杯分の水を入れてやかんを火にかける。
「それにしてもこの子、新一君の家の前で何をしていたのかのォ…」
「さぁ…。でも多分その子、新一君と同じように小さくなったのは間違いないと思うよ」
「えっ!?」
「彼女の着てた服は大人用のだったし。あ、そういえば彼女の服は洗濯機に入れておいたよ」
「そ、そうか…。すまんの」
しゅわしゅわとお湯が沸騰する音がしたため、インスタントコーヒーをコップに入れてお湯を注ぐ。わぁ、いい匂い。
「博士、これどこで買ったの?」
「ん?あぁ、こないだ優作君がくれたんじゃよ…」
こないだ、と言われて思い浮かぶのは新一君のご両親が私を訪ねてきた時のことだ。いきなり携帯を貸してくれって言われたんだっけ。
「優作先生と有希子さんが新一君で遊んでたあの時?」
「そうじゃ。あの時ワシも二人に手を貸しての。そのお礼にとくれたんじゃ」
「へぇ」
私も有希子さんに服を買ってもらったな。有希子さんはお礼だって言ってたけど、私は何もしてない。予想してなかった形でコナンくんを混乱させてしまったのは確かだけど、本当にそれくらいだ。
「はい、博士」
「おぉ、助かるのぉ」
コーヒーを啜りながら考える。…新一君とこの子はどんな関係なんだろう。依頼人…とか?そうじゃなかったら。
そこまで考えて、バッと立ち上がる。驚いた博士を他所に私は手に持っていたコップをテーブルに置いた。
「ど、どうしたんじゃ、さくら君」
「…ちょっと家に帰る!」
ええ!?と驚く博士にまた戻ってくるから、と伝えて博士の家から飛び出す。
「あ、折りたたみ傘忘れた…」
雨に濡れながら項垂れる。本当に私は最低だ。新一君への想いを自覚してからというものの、私は疑心暗鬼になっていた。私にはそんな権利ないのに。
この雨が私の汚い心も流してくれればいいのに。