Case2
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「ま、まさかそんな…」
「だって火事になったのは私たちが駅前のカラオケボックスに居た時でしょ?」
駅前のカラオケから別荘までは走っても片道15分はかかるし、車だったら5分で行けるけれどあの時誰かが車を動かした形跡はなかった。時限発火装置でもあれば別だが、そんなものがあれば消防士が見つけている。だから別荘に火をつけるのは無理だ。確かに彼らの言い分は通っている。
「時限発火装置…。もしもそれが我々が普段見慣れているものだったとしたら?もしそれを遠く離れた所から操ることができたとしたら…?
そう…犯人は、ここから何キロも離れた場所から火をつけたんですよ!カラオケボックス周辺のある場所である物を操ってね…」
あるもの?あの店員さんが怒ってたことになにか関係があるのかな?不思議に思いながらもコナン君の言葉を待っていると、消防隊員さんがコナン君に声を掛けた。どうやら準備が整ったらしいけれど…。
「準備って?」
「おじさんに頼まれて、消防士さんに作ってもらったんだよ!犯人が使ったのと同じ仕掛けを!」
クスクスと笑うコナン君。ビックリする位簡単だと言うけれど…。それよりこのケーキ、まさかトリックに使われるのでは?
「さくら姉ちゃん、消防士さんにそのケーキ渡してもらえる?」
「う、うん…」
消防士さんにそれを渡した後、皆に続いてリビングに向かう。リビングは火事が起こる前と似たような状態になっていた。
「でもどーやってここで?」
早坂さんが疑問の声を上げた時、消防士さんがケーキをろうそくを差し、火をつけた状態で持ってきた。
「さっき私がさくらに言って、コンビニで買ってこさせたケーキですよ!それを椅子の上に置けば…」
消防士さんは固定電話の真ん前に置いた椅子の上にケーキを置いた。あそこからどうやって…。そこに紙でもない限り、火事になんてならない、はず…。
『な!ファックス付きの貸別荘にして良かっただろ?』
今時、ファックスなんて使わないから気が付かなかった。そっか、ファックスを使えば遠くに居ても火をつけることができる。
ケーキを見ると、電話から吐き出された紙が丁度ろうそくの火によって燃やされていた。消防士さんが火を消したのを確認するとコナン君はまた喋り出した。
「たった今、駅前のコンビニの店長に送ってもらったんですよ…。犯人がやった通りにね…」
「こんな単純な手でそんな…」
「それが犯人の狙いなんですよ…」
仕掛けに凝れば凝るほど現場に証拠が残りやすいというコナン君。確かにこの仕掛けだと紙しか残らないから不自然に思われない。
「そうでしょ?あの時、カラオケボックスの横のコンビニに煙草を買いに行った…沢井学さん?」
沢井さんはコナン君の言葉に顔を青くする。沢井さんは反論するも全て論破されてしまい、問題の紙を持っているでしょう?という言葉についに閉口してしまった。確認をしようと近づいた消防隊員を沢井さんは振り払い、鼻で笑いながらポケットから紙を取り出した。
「こんなもの、とっとと捨てとけば良かった…」
「で、でもどーして部長が麻美を!?」
千夏さんの言葉に沢井さんは顔を歪めながら答えた。ぞっとする笑い方だった。
「彼女を振り向かせたかったんだよ!火の中から命を張って彼女を助け出した勇敢な男として…」
どうやら沢井さんは麻美先輩に一か月前に振られてしまったらしい。こんなことは一度も無かったから悔しかった、なんて。そんな自分勝手な理由でで麻美先輩を、自分の好きな人を危険に晒したのか。それは本当に好きだとは言えないと思う。
「それにしても彼女が起きていて、ここから逃げたのが不思議でならないよ。彼女のグラスに睡眠薬を入れたのに」
「やっぱり麻美先輩のグラスに何か入れてたんですね」
え、と驚きの声を上げて私を見た沢井さんに、内心でホッとしながら言葉を紡ぐ。
「麻美先輩と私のグラス、取り換えていたので。飲んでるものが一緒だから麻美先輩は気が付かなかったみたいですね」
それでも麻美先輩が眠ってしまったのは、私がグラスを取り換える前に少しだけ飲んでしまったのだろう。
「まさか…僕が睡眠薬を入れたのを見てたのか!?」
「いえ。けれど何となく取り換えた方が良い気がして…」
まぁ所謂第六感というやつだ。そして私の勘はよく当たる。
「ははっ、まさか…」
馬鹿な、と沢井さんが言った時、リビングに麻美先輩が現れた。え、病院にいるんじゃなかったの?
「ホント馬鹿ですよ、部長…。私なんかのためにこんな事…」
消防隊員に連れて行かれる沢井さんに麻美先輩が語り掛ける。
「部長…。人の心を、無理矢理こじ開けようと思っても…開いてくれませんよ…」
「そうかな?君なら世界中のどんな男でも息を吹きかけるだけで虜にできそうだが…」
沢井さんが連れて行かれ、事件が解決したので小五郎さんが起きてから私たちは帰ることになった。そして車に乗り込んでから、麻美先輩は衝撃のカミングアウトをした。
「えぇっ!?先輩が新一に!?」
「そう、告白したのは私の方…。見事にフラれちゃったけどね…」
「で、でも噂じゃ新一君が麻美先輩に言い寄ってたって…」
「ああ、あれは私が流したデマよデマ!彼に何とか振り向いて欲しくて…初恋だったし…。彼はそんな噂、気にも留めてなかったみたいだけど…」
園子は理解できないという風な顔をしながら麻美先輩に尋ねた。
「アヤツのどの辺がお気に召されたんですか?」
麻美先輩は思い出すような顔をしてポツリポツリと話し出した。
「最初は別に意識はしてなかったなぁ…。中一でいきなりサッカー部のレギュラーでミッドフィルダー…。大した新入生ねって思ったくらいかな?でもある日、私がテニス部の仲間に作って持って行ったレモンパイをサッカー部におすそ分けしに行ったのよ…。みんなおいしいって食べてたんだけど…。彼は『なんかマジィっスよこれ…』って」
新一君、本当に素直だな。新一君の良い所でもあるけれど、流石に傷つくよそれは。
「でね、私悔しくて毎日作って部室に持ってったのよ!彼がおいしいっていうまで三か月間ずーっと…。気が付いたらサッカー部のマネージャーになってて、彼に夢中になってたってわけ。誰かさんは一発で美味しく作っちゃったけどね…」
麻美先輩が横目で私を見てきて、首を傾げる。
「知ってた?私、ワザと変な作り方教えたのよ!あなたに意地悪して」
「そ、そうなんですか…」
麻美先輩は少し呆れたように笑ってからつん、と私の頬をつついて来た。
「助けてくれたお礼に、私が告白した後、彼が何て言ったか教えてあげるわ」
わああ!!といきなり声を上げて誤魔化そうとしたコナン君の口を園子が塞ぐ。うーん、座ってた位置が悪かったかな。コナン君は園子の隣に座る蘭の膝の上に座っていた。
「彼ね、照れながらこう言ったのよ。
『俺、小さい頃から気になってる奴が居るんスよ!気が強くて意地っ張りで、そのくせ涙もろい…。そんなみょーちくりんが…』
だってさ♡」
笑顔でそういう麻美先輩に私は笑う事ができなかった。それって、蘭の事じゃないの。
…なんかもう、自分の気持ちは誤魔化せない。私、新一君が好きなんだ。気づきたくなかった。