Case1
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私達は工藤邸に足を踏み入れた。新一君はぶかぶかの服を脱いで子供の頃の服に着替えていた。青いジャケットに赤い蝶ネクタイというどこぞのお坊ちゃんのような出で立ちに思わず笑ってしまう。
「さくら、オメー何笑ってんだよ」
新一君にジトリと睨まれて私は肩を竦める。博士は事の顛末を新一君から聞き出すと驚きのあまり大声を出した。
「け、拳銃密輸!?」
「あぁ、それをネタに強請ってる奴を見ちまったんだよ…」
「それで、君の口を塞ぐために毒薬を…」
博士は未完成だった不思議な薬の作用で小さくなってしまったのか、とブツブツと呟いていた。新一君は元の身体に戻す薬を作ってくれ、と博士にお願いするが博士に薬の成分が分からないことには無理だ、と言っていた。
裏を返せば薬の成分さえ判れば解毒薬を作れる、ということだ。分かってはいたけどやっぱり博士は凄い。普通薬の成分が分かったところで解毒薬を作るなんて芸当はできない。
「新一君!!小さくなったことはワシとさくら君以外には言ってはならんぞ!!君が工藤新一君だと分かったら、奴らにまた命を狙われるじゃろう!!それに君の周りの人間にも危害が及ぶ!!
いいか!!君の正体が工藤新一君であることはワシと君、さくら君だけの秘密じゃ!!決して誰にも言ってはならん!!もちろん蘭君にもな!!」
博士は新一君の肩を強く掴みながら新一君を説得する。私も博士と同意見なので新一君がちらりと私を見たときに頷いておく。
「新一ー!!いるのー?」
聞こえてきた蘭の声に私達の身体が強張る。
「もー、帰ってんなら電話ぐらい出なさいよー!!鍵開けっぱなしよー!!」
「新一君鍵掛けなかったの!?」
「バーロー!!今の俺の身長で届くわけねーだろ!!」
小声でやりとりをしていると、どんどん蘭が近付いてくる音がした。隠れろという博士の言葉で私は半ば無理矢理新一君を優作先生の机の下に押し込んだ。それと同時に開く扉。間一髪セーフだ。
「あら、博士にさくら…。どうしてここに?」
「ら、蘭…」
「い、いやー、ひさしぶりじゃのー!!蘭君!!」
私と博士はニコリと笑顔を浮かべるが内心汗ダラダラだ。蘭はそんな私達の様子に気がつくことなく工藤家の書斎の様子に感心している。
「うわー!!いつ見ても凄い本の数ね!!それも推理小説ばっかり…」
「新一君のお父さんは推理小説家だからねぇ」
「こんな本に囲まれて育ったから新一が推理馬鹿になっちゃうのよ…」
「うっせぇなー…」
聞こえてきた新一君の声に私と博士の身体が強張る。うっかりにも程があるぞ、新一君よ。当然この声に蘭が反応しないはずもなく。
「誰?そこにいるの…」
「は、博士の親戚の子よ…。恥ずかしがり屋なの」
「あら、そうなの…」
蘭はしゃがんで新一君と目を合わせようとする。だが顔を見られてはマズイ新一君は慌てて後ろを向く。私は博士から送られてくる何勝手な設定を作ってるんだ、という視線を必死にやり過ごす。
ごめんなさい。咄嗟に口から出ちゃったんです。
「ふふっ、本当に恥ずかしがり屋ね。コラ!こっちむきなさい!!」
子供好きの蘭はニコニコと嬉しそうに笑いながら新一君を抱え上げて蘭と顔を合わせる。新一君は変装のつもりなのか咄嗟に眼鏡をかけていた。優作先生の眼鏡だからか大きくて新一君には不似合いだった。
「こ、この子…かわいー♡」
蘭は新一君をぎゅっと抱き締める。丁度その時に胸が当たったのか、新一君は真っ赤になっていた。思わず止めかけたけど、止めた方が不自然だなと思い直して何も言わないことにした。
「ボクいくつ?」
「じゅうろ…じゃなくて…6歳!!」
「小学1年生かー…。名前は?」
「な、名前は新…でもなくて、えーっと、えーと…」
新一君は近付いてくる蘭に後退りながら答える。そして名前を必死に考えているようで目を泳がせていた。新一君の目が本棚に入っている本を見たとき、私は物凄く嫌な予感がした。ま、まさか新一君…。
「コナン!!ぼ、僕の名前は江戸川コナンだ!!!」
ははは、と渇いた笑い声を上げる新一君に博士と一緒に頭を抱える。もっと良い名前思いつかなかったのか、新一君よ。蘭も新一君、もといコナン君の名前に怪訝な顔をしている。
「コナン?」
新一君はお父さんがドイルのファンだったから、と言っているがそれはかなり無理がある気がする。いっその事ハーフだとか言った方が自然な気もしてくる。
「そういえばどうしてさくらがここに?」
「私も新一君の事が気になっちゃって…。し、新一君ならさっき出て行っちゃたけど」
ツッコんで欲しくないところをツッコまれて嫌な汗が出てくる。いくら蘭の身を守る為とは言え、蘭に嘘を吐くのは苦しい。
「ふーん…」
蘭はなにげなさそうにしているが、その言葉に部屋の温度が下がった気がして身体を震わせた。蘭は間違いなく蘭に何も言わなかったことに怒っている。
その後博士の機転で新一君は蘭の家に預けられる事になった。お父さんが探偵事務所を開いている蘭の家なら男達の情報も入りやすいのでは無いか、との事だった。蘭と新一君、改めコナン君が新一君の家から出て行くと私と博士は揃ってため息を吐いた。
「ふー…後は、上手くやるんじゃよ、新…いや、コナン君」
「先が思いやられる」