Case2
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行くか迷ったものの、結局行く事にした。麻美先輩に対して蟠りが無いかと聞かれればそれは嘘になるけれど、麻美先輩本人が私に会いたいと言っていたのだ。それならば会いに行ったほうがいいんだろう。それに私は以前逃げてしまったのだから、今度こそ逃げてはいけないと思う。
待ち合わせ場所の新一君の家まで行くと、もう既に私以外の人が揃っていた。遅れてしまっただろうか、と慌てて時計を見るも針は集合時間の10分前を指していた。
「ごめんね、お待たせしました」
「あぁ、気にしないで。私たちは元々集まってただけだから。寧ろ早くて驚いたわ。今日部活だったんじゃないの」
「今日は早く終わったから…。タピオカ飲みに行けたくらいだし」
「さくらがタピオカ飲みに行くの珍しいね」
「紗和ちゃんが誘ってくれたの」
コナン君が一瞬嫌そうな顔をしたような気がするけど多分気のせいだろう。
「二人で行ったの?」
「うん、そうだよ」
まぁタピオカ屋さんで快斗君と青子ちゃんと会ったけど、まぁ別にわざわざ言う必要もないだろう。快斗君を贔屓したいわけではないけれど、コナン君と快斗君はあまり接触してほしくないから。コナン君、快斗君と会ったらきっとすぐにその正体を見抜いちゃうだろうし。
「こんにちは、さくらさん」
後ろから声を掛けられて振り返る。麻美先輩がいた。麻美先輩は少しだけ気まずそうに、けれどもホッとしたように笑っていた。その笑顔につられて私も少し笑う。
「こんにちは、麻美先輩。お誕生日おめでとうございます」
「あら…プレゼントを用意してくれたの?そんな、良かったのに…。でもありがとう。嬉しいわ」
小五郎さんがレンタカーを用意してくれていたようで、皆で車に乗り込む。助手席に蘭、後部座席に、麻美先輩、園子、私、と乗り込んで、コナン君が乗れないことに気が付く。
「コナン君、一緒に座ろう?」
「えっ!?」
顔を真っ赤にさせるコナン君だが仕方ないと思う。園子はコナン君を膝に乗せるのは嫌だろうし、コナン君とは初対面の麻美先輩の膝に乗せるわけにもいかない。蘭はよくコナン君を膝に乗せているけど、助手席は危ないから後部座席に乗る方が安全だろう。コナン君もあ、とかう、とか声にならない声を発していたが、やがて諦めたように私の腕の中に手を伸ばしてきた。ふふふ、新一君可愛い。
「オメェ覚えとけよ…」
「えぇ、何で?」
なんでじゃねぇよ、バーロー。コナン君はそう呟くと不貞腐れたように私の膝の上に収まった。コナン君のお腹周りを抱きしめて扉を閉めると小五郎さんは車を出してくれた。
「そういえば、さくら、アンタ麻美先輩と知り合いだったのね。友達があたし達と剣道部くらいしかいないアンタにしては珍しいわよね」
「まぁそうだけど…」
確かに私は人見知りのせいで友達は剣道部員と蘭達、あとは快斗君と青子ちゃんくらいしかいないけれど…。
「確かにさくらさん、学校でも話題になってたわね…。確か氷の華だっけ?」
「うっわ、懐かしー!!そんな風に呼ばれてた時期もあったわね…。まぁでも、さくらは昔から人見知りだったからその時期でもだいぶマシな方ね。小学校に入ってすぐはずっとアンタ俯いてたもんね。蘭が話しかけてもだんまりでさー」
園子の言葉がぐさぐさと胸に刺さる。確かにあの頃の私は誰とも話せなかったし、声すらだしてなかったけど…。
「でも新一君が」
「は?新一君?」
「新一君が自分の言いたいことを言えって、そう言ってくれたから。私に、勇気をくれたから」
しん、と車内に沈黙が流れる。え、何この沈黙。私何か変な事言ったかな。一人で焦っていると蘭がポツリと呟いた。
「…そっか、新一が私とさくらを引き合わせてくれたんだ。ホントに昔からよく見てるなぁ」
嬉しいような悲しいような。蘭は不思議な顔をしていた。なんで蘭がそんな顔をするのかは分からないけれど、新一君は本当に昔から蘭の事をよく見ていると思う。
「工藤君ってホント罪な子ね」
しみじみと麻美さんも呟いていた。その声は穏やかで海のような静けさを纏っていた。