Case2
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かくれんぼは昔から得意だった。息をじっと潜めて、近づいて来る足音にも鼓動を乱さないでただただ音に、気配に耳を傾ける。余計なことは考えない。そうするととくとく、と自分の鼓動の音が聞こえてきて安心するんだ。それに見つかるのに時間が掛かる時はあっても必ず見つけてくれる人が居るから。
「さくら、見っけ!」
ほら、見つかった。見つけるのが早すぎると抗議するとお兄ちゃんは笑いながら謝ってきた。
「はは、ごめんごめん。でも早く見つけないとさくらは泣いちゃうだろ?」
悪戯っぽく笑うお兄ちゃんにそんなことないと抗議する。
「前に中々見つけてやれなくて、結局さくらが大泣きして自分から出てきたことがあっただろ」
お兄ちゃんの尤もな指摘に何も言えなくなる。だって本当にそうだったから。しかもその時は倉庫に隠れてたから暗くて何も見えなくて本当に怖かったんだ。
でもこのまま負けっぱなしなのは嫌だった為、頬を膨らましながらお兄ちゃんにもう一度かくれんぼをしようと言う。私が今度は鬼をやる、と。
「え、俺が隠れんの?うわ、俺が隠れられる所あっかな」
お兄ちゃんは私と違って体が大きいから、隠れるのはちょっと難しいかもしれない。でもお兄ちゃんはニカリと笑ってじゃあ隠れてくるから三十秒数えて、と私の頭に手を乗せながら言った。こくりと頷いて、しゃがみながら目を両手で覆って数を数え始める。
いーち、にーい、さーん…。
さぁぁ、と風が吹けていく音が聞こえる。玄関の開く音。お兄ちゃんはどうやら家の中に入ったみたい。
きゅーう、じゅーう、じゅういーち…。
後ろから足音が聞こえてくる。誰だろう。神社にお参りに来た人かな。でもここは神様までの道から外れてるから、こんな所まで来る人なんてほとんどいないのに。少しだけ不思議になってそろり、と顔から手を放して顔を上げた。
見たことが無い、お髭のおじちゃんがいた。誰だろう。首を傾げると、おじちゃんは優しそうな顔でニコッと笑った。
「可愛らしい桜のお嬢さん、こんにちは」
優しくて安心感のある声をしていた。きっとこの人はいい人だ、と確信して私も挨拶を返す。
「君のお母さんに用事があるんだけど、お母さんは家に居るかな?」
おじちゃんの言葉に首を横に振る。お母さんは居ない。お兄ちゃんと叔父さんならいるけど。
「そうか…」
おじちゃんは困ったような顔をして顎に手を当てて考え込んだ。どうしよう、何か私にできる事はあるかな。オロオロと戸惑っていると、おじちゃんはニコリと笑った。
「じゃあ君に頼もうかな。これ、君のお母さんに渡してくれるかい?」
おじちゃんはそう言って私に封筒を渡してきた。封筒にはお母さんの名前が書かれている。おじちゃんさっきまで手には何も持っていなかったのに、どこから出したんだろう。不思議に思って首を傾げながらも封筒を受け取る。
「お礼に君にはこれをあげよう」
パチン、とおじちゃんが指を鳴らす。ふと左手首に重みを感じた。桜色の可愛いブレスレットが私の腕についていた。凄い、どうやったんだろう!おじちゃんは魔法使いなのかな??
「君がつけてるバレッタとお揃いだ。よく似合う」
おじちゃんはそういってにっこり笑った。ありがとう、とお礼を言おうと思った時、風が強く吹いて思わず目を瞑った。風がやんで目を開けるとそこにはもう、誰も居なくなってた。キョロキョロと周りを見るけれど誰も居ない。やっぱりおじちゃんは魔法使いだったんだ!!
感動してお母さんへの手紙を握りしめてぼうっと立っていると、バタバタと慌てた足音が聞こえてきた。
「さくら!!大丈夫か、さくら!!」
お兄ちゃん、何をそんなに慌てているの。首を傾げて、違うと気づいた。この声はお兄ちゃんじゃない。気づいたら辺りは真っ暗になっていた。暗い、何も見えない。
「さくら、しっかりして!」
この優しい声の主は蘭。
「さくら!!」
この安心できる、大好きな声は新一君。
「さくら、お前は裏切らないよな?」
耳元でささやかれた声には耳を貸さない。もう、私はちゃんと理解しているから。信頼できる『声』がどれかは分かってるから。目を覚ませ。
パチリと目を開けると眩むようなまぶしい光が目を射した。眩しい。目を細める。
「良かったぁ…!!大丈夫、キッドに何もされなかった??」
「キッド…」
蘭の言葉に少しずつ思い出していく。コナン君を探していて、それで警備員さんに引き留められて、眠らされたんだ。でその声の主が快斗君で…。ということは、快斗君は怪盗キッド、若しくはその手先って事なのか。
「さくらお姉ちゃん、毛布借りてきたよ。ボートに寝かされたから寒いでしょ」
「コナン君…。ありがとう」
毛布を抱えたコナン君から毛布を受け取って毛布に包まる。その時蘭がくしゅん、とくしゃみをしたので蘭を無理矢理毛布の中に引き入れる。
「蘭もコナン君も探してくれたんだ、ありがとう」
お礼を言って笑うと二人は顔を見合わせて照れ臭そうに笑った。
「さくらが無事で良かった」
その声は二つとも重なって聞こえた。