Case2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
会長さん、いや正確には会長さんに扮した怪盗キッドと言うべきか、のスピーチが終わってから暫くして、蘭は辺りをキョロキョロとしたり何度も飲み物を口に運んだりしていた。蘭がこんな落ち着いていないのは珍しい。どうしたのかな。
「どうしたの、蘭」
「ねぇ、さくら。コナン君全然戻って来ないね。もしかして迷子になっちゃったんじゃ…」
「コナン君が迷子…」
蘭はコナン君が戻って来ない事が不安なのか、心配そうに眉を八の字に下げていた。確かにコナン君が出て行ってから暫く経つ。コナン君の事だから大丈夫だとは思うけれど…。記憶力は良いから迷ったりはしないと思う。いや、でもコナン君は、というか新一君は一つの事に集中すると周りが見えなくなってしまう時があるからなぁ。コナン君が怪盗を探している事が怪盗にバレて、もしかしたら閉じ込められちゃったりとか、酷いことをされているかもしれない。…う~ん、なんだか心配になってきた。
「コナン君探しに行く?」
「そうだね。園子、ちょっと私達コナン君を探しに行くね」
「あぁ…確かにいつの間にかガキンチョいなくなってるわね。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
バイバイ、と園子に手を振ってパーティー会場を出る。蘭はくるりと振り返って私を見た。何かを言おうとしたのか口を開いて、その口を閉じた。うん?どうしたんだろう。
蘭はパッと右を指さして慌てたように捲し立てた。
「手分けして探そっか!!私はこっちから探すからさくらはあっちから探して!見つけたら連絡よろしくね」
「え、ちょっと蘭、…行っちゃった」
蘭は慌ててバタバタと走り去って行ってしまった。い、一体どうしたんだろう。蘭は方向音痴だから一緒に行こうと思ってたんだけどな…。ちょっと心配だ。大丈夫かな…。
仕方ないので私もコナン君を探すことにする。コナン君が見つかればそのまま蘭を迎えに行けばいいし、蘭がコナン君を見つければコナン君はきっと蘭をパーティー会場まで連れて行ってくれる。コナン君が行きそうなところや人目があまりない所を中心に確認していく。でも中々見つからない。意外ともう戻ってたりして。
その前に一応スマホを確認しておこう。もしかしたら何かメッセージが入っているかもしれない。廊下の端に寄ってスマホを確認する。あ、蘭から連絡が着ている。
『コナン君見つけたよ!!コナン君と一緒に先に会場に戻ってるね』
どうやらコナン君は見つかったらしい。そっかそっか、なら良かった。私も会場に戻ろう。そう思って振り返って、息を呑んだ。船の警備員さんらしき人が私のすぐ近くに居たからだ。人の気配にはそれなりに鋭い方だと自負していたんだけど全然気が付かなかった。二歩ほど後ずさって少しだけ距離を取る。なんだかちょっと怖い。ここは立ち入り禁止の場所の近くとかでも無いのに。
「あ、あの…」
どうしようかと取り合えず話しかけてみる。するとさっきまで纏っていたちょっと怖い雰囲気は霧散して、警備員さんは朗らかに笑いかけてくれた。なんだろう、この感じ。私、前にこの人に会ったことでもある?
「この先は鈴木会長のプライベートルームだから近づいたらいけないよ」
「あ、そうだったんですね。分かりました、ありがとうございます」
気のせい、だったのかな。良く分からないけれど取り合えずそろそろ会場に戻ろう。警備員さんにお辞儀をして警備員さんの隣を横切る。
「あ、ちょっと待って!」
なんだか振り返らない方が良いような気がした。でも反対側を向いたまま話すのも失礼だし。
「はい、何でしょ、う…」
振り返って瞬間、眼前で広がる真白い煙。これは吸わない方が良い奴だ、と気づいた時にはもう遅かった。膝に力が入らなくなってガクンとその場に崩れ落ちる。何なの、この煙。
「少しお体お借りしますね、お嬢さん」
聞き覚えのある声。新一君と似ているけれど、新一君よりも僅かに掠れた声。この声は、快斗君と同じ声。だからだろう、本来ならこんなことをされたら怒らなきゃいけないのにあまり怒る気にはならなかった。それよりも眠い。肩を抱き留められる感覚がした。前に新一君にこうして抱き止められた事があったなぁ。あれはいつの事だったっけ。
そんな取り留めのないことを考えながら、段々と意識が遠のいて行った。