Case2
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…誰もいない。おかしい。確かに人の気配を感じたのに。周りを見渡しても木々があるのみで人っこ一人見当たらない。さっきの部屋があった辺りも確認したし、森の中にも少し入って確認したがそれでも見つからない。
「確かに嫌な予感がしたんだけど…」
ポツリと呟いた言葉に返事をするものなどいるはずも無く、声は森の中に吸い込まれていった。いつまでもいない人を探しても仕方がない、か。別荘の中に戻るとしよう。
後ろ髪を引かれながらも別荘の中に戻ろうと玄関前まで来たとき、屋敷の中からドンっという何かが落ちるような大きな音がした。もしかして、みんなに何かあったのだろうか。そう考えただけで体の芯が冷えていくような気がした。
慌てて別荘の中に入って、扉が開いている部屋の中へと飛び込む。
「誰もいない…!?」
一番最初に博士が作った暗号で宝探しゲームをやった部屋には誰もいなかった。シャンデリアの真下に椅子が置かれているだけで特に変わった様子もない。
きっとこんなところに椅子があるってことは、きっと誰かがこの椅子に上ってシャンデリアを動かしたのだろう。確認してみるとシャンデリアの付け根のところに謎の溝があった。支柱と付け根の溝がピッタリ合っているところを見ると、多分椅子に上ってこの溝を合わせたのだろう。それであの音がしたってところかな。
取り合えずこの部屋にはいないみたいだから、他の部屋を探してみよう。
「うわぁぁぁぁ!!」
子供たちの声が…!!声が丁度この部屋の真上ぐらいから聞こえてきたため、急いで二階へ上がる。扉が開かれたままの部屋があった為、そこに飛び込むとなんと天井へと延びる仕掛け階段があった。なんだこれ、と思いつつゆっくりと階段を上がっていく。屋根裏部屋のような所へ顔を出すと、うわぁぁぁあ!!という子供達の悲鳴が私の鼓膜を襲った。
「さくらかよっ!びっくりさせんなよな!!」
「な、なんかごめんね」
小嶋君の私を非難する言葉に思わず謝ってしまう。よく考えたら、というかよく考えなくても私別に悪くないのでは?タイミングは悪かったのかもしれないけど。
「でもそんなに驚かなくても良いのに」
屋根裏部屋へと上がりながらそういうと、吉田さんがだって、という言葉を漏らした。
「これを取ろうとしてる怖い人かと思っちゃったんだもん!!」
「これって?」
これじゃよ、と博士が放って寄越してきてのはドル札が描かれた紙の束だった。これってもしかして…。
「偽札??」
「正解だよ、お嬢さん…」
嗄れた声と共に後頭部に当たる硬い感覚。カチャッという音がした時点で嫌な予感しかしない。
「さぁ、早くそれを寄越しな」
ゴリッと後頭部に拳銃と思われるものを押し付けられる。それによろけた振りをしてコナン君とアイコンタクトを取る。コナン君は私のしたいことを正確に読み取ってくれたみたいだ。
「止めた方が良いぜ…奥田知明さんよォ」
「なっ、なぜ俺の名を…!!」
奥田知明が銃口をコナン君に向けた瞬間…つまり私から意識が逸れた瞬間に、勢い良く奥田知明の前から飛び退き、近くにあった箒をひっつかむ。奥田知明がしまった、とこちらを振り向いたけどもう遅い。奥田知明が私に拳銃を向けるよりも前に、拳銃を払い逆胴を決める。パッと退がって構えると、奥田知明は痛すぎてか白目を剥いて気絶していた。そこまで強く打ってないと思ったんだけど…ごめんなさい。正当防衛だから仕方ないよね。
「すっ…すっげぇー!!」
「かっこいいー♡」
「まさに剣士って感じですね!!」
「ありがとう」
ふっ、と笑みをこぼすと子供達は頬を染めてキラキラした目を私に向けてきた。どうしたんだろ。
「オメー相変わらず罪作りな奴だな」
奥田知明をそこら辺にあったロープを縛り付けた縛り付けたコナン君が半目で私を見上げてきた。凄い、容赦のない縛り方だ。
「え?何が??」
首を傾げるとオメーまじで気をつけろよ、って注意された。何に気をつければ良いんだろう。
「しかし何で君はあの男の名前を知ってたんじゃ?」
「あの書きかけの暗号に書いてあったんだよ!『この芸術品だけは奥田知明に渡したくない』ってね!」
「なるほど…この芸術品を、昔世話になっていた伯母に預かってほしくて、自分の居場所を示す暗号をこの別荘に残したというワケか…」
コナン君と博士、なんの話をしてるんだろう。まぁ良いか。取り合えず警察に電話しよう。
「そういえばさくらさんが作った暗号ってなんだったんですか?」
円谷君の言葉にそういえば私が出した暗号を詳しく説明してなかったな、と思い出す。
「あれは、あの記号…六芒星っていうんだけど、その六芒星そのものが暗号だったの」
子供たちは考え始めたが分からなかったらしく、もう早々に諦めていた。コナン君に分かった?と振ると、ふっと笑った。
「なるほどな、『後ろの正面誰だ』ってことか」
「流石だね、正解だよ」
「『後ろの正面誰だ』ってかごめかごめみたいですね」
円谷君の言葉に私は頷く。
「そう、円谷君の言う通り。六芒星は日本では籠の網の目を図にしたものを、籠目文って言うんだ。かごめかごめに出てくるかごめも一説では籠目を表しているって言われているの」
「へぇ、そうなんだ!!」
きらきらとした目で見てくる吉田さんに少し照れ臭くなる。そう尊敬した感じの目で見られると少し恥ずかしい。
「皆が宝箱を覗き込むために、宝箱を皆で囲むでしょ?だから私はわざとみんなの後ろに立ってたの。ほら、まさしくかごめかごめでしょ?」
確かに、と言った吉田さんと円谷君とは対照的に小嶋君は首を傾げていた。ちょっと分かりにくかったかな?
「あ!そうだ、さくら!!」
「なに?」
コナン君に名前を呼ばれて振り返ると、コナン君は目に角を立てていた。なんか怒っているみたいだ。
「オメーやべー奴がいるかもしんねーのにうろつくんじゃねぇよ。あぶねーじゃねーか」
ごめん、と素直に謝るとコナン君はパッと目を逸らして、何かを呟いた。
「ごめん、聞こえなかった。何?」
「…俺が守ってやっから…傍に居てくれよ」
きっと、きっとコナン君の赤が移ったんだ。そうじゃなきゃ、こんなにも顔が熱くなるなんてないもん。
「…うん」
思わず緩んでしまった頬に、コナン君も照れながらも笑い返してくれた。