Case2
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「そういえばコナン君、右手になに持ってるの?」
「ん?…あぁ、これか」
そう言いながら見せてくれたのは何てことないただの一円玉。これのどこに引っ掛かっているんだろう?
「これがどうしたの?」
「ベッドの横で拾ったんだよ」
じゃあワシが落としたものかも、と嬉しそうな声を上げる博士とは反対に、コナン君は真剣な顔つきでその言葉を否定した。
「いや、それはないよ…。随分埃をかぶってたし、周りには転がった後も落ちた後もなかった…。この一円玉が初めて発行されたのは、今から40年前…。そんなものが埃をかぶってこの別荘の中にあったってことは…」
博士は50年間はこの別荘に誰も足を踏み入れなかった、と言っていた。しかし40年前の硬貨が落ちていた。つまり、
「見知らぬ誰かが勝手に、この別荘に足を踏み入れたってことだね」
私の言葉にコナン君はゆっくりと首を横に振った。
「いや、入っただけじゃない、しばらく住んでいたと思うよ…。恐ろしく手の器用な老人がね…」
どういうこと?コナン君が言っていることがよく分からず、博士と顔を見合わせる。博士は困惑した表情で私を見ていた。きっと私も博士と同じような顔をしているのだろう。
「どーいうことだね、新一君…。ワシにはさっぱり分からんよ…」
「じゃーその一円玉と財布の中にある一円玉を比べてみなよ!」
コナン君が一円玉を放ってきたため、右手でそれをキャッチする。博士が一円玉を出してくれたため、新一君からもらった一円玉と財布のなかにあった一円玉を見比べる。
あれ?コナン君から受け取った一円玉の方が軽い気がする。
「なんかこれ、軽くない?」
「あぁ、本物より薄いし、一回り小さいからな」
よく見比べてみると、コナン君のいうとおり確かに小さいし薄い。
「おそらくその一円玉は、元の一円玉から削りだして正確に縮小された物…。相当の腕の持ち主だ!!それに、『国』の文字が『國』になっている…。わざとそうしたのか間違えたのかは分からねーけど、そんな字を使うのは昔の人ぐらいだよ…」
なるほど。確かに。コナン君のいうことも一理ある。しかし博士は納得しなかったらしい。不思議そうな顔でコナン君に尋ねていた。
「じゃが、ここに住んでいた人間がこれを作ったとは…」
「いや…ここで作っていたのは間違いないよ!」
コナン君によると、老人は読書の合間に掘っていたのだとか。その証拠に本の間に一円玉の材質のアルミニウムの欠片、そして白髪が挟まっていたらしい。というかコナン君、いつの間にそんなところをチェックしていたの?
「じゃが何で一円玉なんかを…」
「さぁ…ただの暇つぶしにもとれるけどまだなんとも…。それに老人一人で住んでいたかどうかもまだわからねーし…」
「子供もいたと思いますよ!」
突如横から聞こえてきた声に、体を震わせる。ビックリした。声がした方を振り返ると、花瓶を手に持った円谷君がいた。円谷君は得意げな顔で、コナン君に花瓶を差し出した。
「さっき、見つけたんですよ、子供がここにいた証拠を!ホラ、この花瓶の裏をみてくださいよ!」
コナン君と一緒に花瓶の裏を覗き込む。すると謎の記号のような物が横一列に並んでいた。それは三日月だったり、六芒星の一部が欠けたような物だったり、太陽のようなものだったりと様々だ。よく見れば同じ記号でも白色のものと黒で塗りつぶされたものとある。
なにこれ…。とても子供の悪戯とは思えない。何かの暗号のような気がする。
私たちの様子に気がついたのか、先程までソファーの上で飛び跳ねていた吉田さんと小嶋君が近づいてきた。それなら見つけた、と言う二人にコナン君は勢いよく反応した。やっぱりコナン君も引っかかっていたんだ。
「私はお皿の裏!」
「俺はろうそく立ての裏だ!!」
子供たちはただの悪戯だと考えているようで、床の暗号を解こうとしている。博士はうーん、と考え込んだ。
「変じゃのー。叔父に子供はおらなんだし…。じゃーやっぱりここに住んでた謎の老人は子供連れ…」
「定子さんを慕っていた教え子ってことも考えられると思うよ。定子さんここの近くにある小学校の教員だったんでしょ?」
「うむ…。確かにそれも考えられるが…」
私と博士で考え込んでいると、コナン君に声を掛けられた。コナン君は不敵に笑っている。あぁ、これは謎解きしてる時と同じ顔だ。
「なぁ、さくら、博士…。『踊る人形』って知ってるか?」
踊る人形…。シャーロックホームズの物語で出てくる換字式暗号だ。人形の腕や足の有無、折り曲げ方などで文字を表現している。新一君がよく話していたからその話は知っている。…読んだことはないけれども。
「あれは確か子供の落書きに見せた暗号…。ま、まさかそれも!!」
「あぁ、まちがいない!!」
小嶋君たちの見つけた暗号の末尾の記号三つは全て同じになっているらしい。実際に見てみたら確かに下三つが全て同じになっていた。これはただでたらめに並べてあるのではなくて、なにかの規則性に則った暗号だと断言するコナン君。ワクワクしてるなぁ。
「なんじゃ?嬉しそーじゃのー、まさか読めるのか、その暗号が…」
「いや、さっぱり分からねーよ、老人の事も、暗号の事も…。だけど…わくわくしちまうんだよ!!わからなければわからねーほどにうずくんだ!!俺の中の抑えきれねー好奇心がな!!」
きっとこの好奇心が新一君のすざまじい行動力の原動なんだろう。新一君のそういうところは本当に凄いと思う。…私ももっと動いてたら、新一君とかに相談していたら、今とは違う結末を迎えていたのかもしれない。