Case2
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「わー、おっきな家!!」
「ホントにココ、博士の伯父さんの別荘なんですか?」
円谷君の言葉に博士は鍵を開けながら答える。
「ああそうじゃ!ワシの伯父は阿笠栗介といって、この辺りじゃ結構名の通った大富豪じゃった…。その伯父が、50年前に巨額の富をどこかに隠して、この世を去ってしまったのじゃ…。もちろん、この別荘の中にも隠し財産がないか探したんじゃが見つからず、今回、探偵団の知恵を拝借しようと、ここへ呼んだというわけじゃ!!」
探偵団の皆は、博士の言葉に大いにはしゃぎ出す。どうやら探偵団たちは博士があらかじめこの別荘に来て、宝を隠したのではないかと考えていたらしい。…やっぱりバレてたか。吉田さんには子供だましとまで言われている。私も一緒になって考えていただけに何気に心に刺さる。
別荘の中はかなり豪華な造りになっていた。品の良い家具で統一されている。少年探偵団の皆は扉を開けたりしたりして、あちこち探し回っている。一方でコナン君は暖炉横の肖像画に目を止めた。
「なるほどね…。博士の伯父さんが金持ちだってーのは、本当だったみてーだな!」
「どういう事、コナン君?」
私の疑問に、コナン君は肖像画を指さしながら答えてくれた。
「ホラ、あの絵の中の男の人…あれだろ?伯父さんって!バックに描かれてる暖炉は、ここのとまったく同じ!絵描きを家に招いて、肖像画を描かせるなんて金持ちの証拠だよ!」
博士によると、あの絵は博士の伯父が病死する一年前に若い画家に描かせたらしい。病弱で人間嫌いだった博士の伯父さんは、博士の伯父さんの妹の定子さんにしか受けいらなかったらしい。その定子さんもこの近くの小学校の先生をしていたらしいが、博士の伯父さんが死んだ後実家に戻り、以後50年間はこの別荘に誰も足を踏み入れなかったらしい。…それにしてはなんか、人の気配を感じる気がする。博士がこの間隠しに来たからかな…?
「…の割には物が残ってるな…。本とか食器とか…」
「伯父が遺言で『自分が20年も住んだこの別荘は、死後50年間はそっとしといてくれ』と言ったからじゃ!もちろん隠し財産なんぞの子っとりゃせんよ、来月取り壊しも決まったし…」
なーるほど、と呟いたコナン君は呆れた目で博士を見る。完全に半笑いだ。
「で、壊される前にこのホコリだらけの別荘で、ガキ連中と宝探しゲームをしようと思いついちゃったわけね…」
中々良いアイディアだと思わんか?と同意を求める博士に、コナン君は博士が隠しに来た時の靴跡がのこってなきゃな…なんて冷めた言葉を返す。コナン君の言葉に私も博士も苦笑いしか出て来ない。
おっしゃる通りで。
子供達でも分かりやすいように、特に隠すことなく暗号の在りかを刻んだのだが、中々気が付いてくれない。うーん、どうしたものかと考えているとコナン君がヒントを出してくれた。
「俺の足元にわざとらしく刻んである文字とかな…」
コナン君の言葉に少年探偵団の皆は気が付いてくれたようで、わらわらとコナン君の足元に集まった。尤も博士は子供たちに自力で考えて欲しかったようで、バラしてしまったコナン君の口を慌てて押さえていたが。
「モザリソワソデル?」
「なんだ、これ?」
「英語かなぁ?」
「違いますよ。きっとアラビア語ですよ!」
頭を悩ます子供たちに博士は嬉しそうにニンマリと笑った。
「博士嬉しそうだね」
「ワシが頑張って考えた暗号じゃ…。そう簡単にはわかるまい…。こりゃー新一君でも解けんじゃろな…!!」
嬉しそうな笑い声をあげる博士の口元を慌てて押さえる。笑い声を上げた博士を見て不思議そうな顔でこちらを見てきた少年探偵団の皆になんでもないよ、と首を振る。
「博士、気を付けて…」
「す、すまんのー」
「あとそれと、新一君はもうとっくに全部の謎を解いてると思うよ」
「えぇ!?」
博士が驚きの声を上げたとき、どこかへと居なくなっていたコナン君が部屋へと戻ってきた。コナン君はなにか考え事をしているのか、顎に手を当てて俯き気味で歩いていた。
「コナン君お帰り」
「おう、ただいま」
そういって返事を返したコナン君に博士はにんまりと笑った。その表情はどこか得意気で、まるで少年のようだった。
「さしもの新一君もワシの作った難問は解けんかったようじゃのー!!そりゃーそーじゃー!なんたってワシが三日三晩寝ずに考えた!!」
「あぁ、博士が隠した宝の木箱なら向こうの寝室のベッドの下で見つけたよ!」
分かりやすかったから布を被せてもっとベッドの奥に入れておいてやったぜ、といかにも親切そうに告げたコナン君に博士は顔を引きつらせながらお礼を言った。まぁ三日三晩寝ずに考えた暗号をあっさりと解かれてしまったら悔しいだろう。私だってあっさり解かれちゃったら悔しいし。
「ねぇ、私が考えた暗号はどうだった?」
コナン君は私の言葉に首を傾げた。
「おめーも暗号作ったのか?」
おっと、まさかの暗号の存在に気が付かれていなかった。コナン君はもう一度木箱のある部屋へ戻ろうとしたので、慌てて押しとどめる。
「戻っちゃダメ」
「なんでだよ」
「どうせなら目の前で解いて欲しくて…。駄目かな?」
私はコナン君が事件の真相を見抜いた時の顔がとても好きだ。私の謎でコナン君がそんな顔をしてくれるかは分からないが、その顔を引き出せたらいいな、と思う。
少し首を傾げながら尋ねると、コナン君は大きな目で私を見上げながら答えた。
「だめ…じゃない」
「そっか。良かった」
思わずにっこりと笑うと、コナン君は照れたように目を少し逸らした。