Case1
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特にすることもないので、部屋でお医者様と一緒に新一君が戻ってくるのを待つ。しばらくそうして待っていると、またバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。多分蘭だろうな。
案の定勢いよく扉を開けて、転がり込むようにしながら入ってきたのは蘭だった。蘭は息を荒げたまま、私に勢いよく近づく。何だろうと思い、目を見開いていると蘭は私の手首を掴んで、腰掛けていたベッドから立たせた。
「さくら、来て!!お医者さんも私についてきて下さい!!」
蘭はそういうと勢いよく駆け出した。蘭に半ば引っ張られながらも、私も蘭について行く。
「蘭、どうしたの??」
蘭は私の言葉に、少しだけ言葉を詰まらせた。一瞬の間の後で、兎に角付いて来て、と言った。新一君の事だろう、と察してはいるがそれにしては蘭の様子が何か可笑しい。もしかしたら、新一君の容態が更に悪化してしまったのかもしれない。
嫌な考えが頭を過った時、新一君がよろよろと書斎から出てくるのが見えた。新一君は心臓を押さえて苦しそうにしている。なんだか、コナン君が新一君に戻った時と様子が酷似してる気がする。まさか新一君、またコナン君に戻っちゃうんじゃ…!?
「新一!?ダメじゃない、勝手に動いちゃ。病人なんだから…」
そう言って新一君に近づこうとする蘭に焦る。取り合えず新一君を皆から引き離さなきゃ。そう思って、蘭を手で制して新一君に近づく。すると新一君は階段があることに気が付かなかったのか、階段を大きく踏み外してそのまま落下してしまった。
「新一君!?」
蘭と一緒に慌てて新一君を追うが、私たちが階段下を見た時には上着だけが取り残されていて、新一君の姿はそこにはなかった。
「新一ー!?」
蘭が新一君を呼んだすぐ後で、階段のすぐそばにあるドアから新一君の苦しそうな声が聞こえた気がした。まさか新一君、コナン君に戻っちゃったんじゃ…。嫌な予感がしたために、蘭よりも先にノックする。
「僕が入ってるよー!」
すると中からコナン君の少し焦ったような声が聞こえてきた。蘭は新一君ではなくコナン君だった事に驚いてはいたが、それよりも新一君の行方が気になるらしい。きょろきょろと辺りを見渡している。貴善さんのダブダブのシャツを着たコナン君が私たちの前に姿を現すと、蘭はコナン君に尋ねた。
「コナン君、新一見なかった?」
コナン君は少し何かを言いたそうに私を見上げた。何、と首を傾げるとコナン君のあ…、という声に反応した蘭がコナン君に向き直った。
「し、新一兄ちゃんなら、新しい事件を思い出したって言って…さっき着替えて玄関から外に!!」
またぁー!?と驚きの声を上げる蘭に苦笑いしてしまう。確かにコナン君のその言葉だけを聞くと新一君が真正の推理オタクのように聞こえる。うん、まぁ間違いではないんだけど。
「さくら、今度新一がのこのこ戻ってきたら、一発食らわせてやるわよ!!」
私は何も言っていないのだが、蘭の中では網すでに決定事項になっているらしい。蘭はどの技をくらわせようか、なんてぶつぶつ呟いている。ちらり、とコナン君を見ると、コナン君は顔色をさらに悪くしていた。
「大丈夫、私は殴らないよ」
「蘭を止めるとは言わねぇのかよ…」
コナン君は疲れたように、新一君が事件を解決したことを誰にも言わないでくれ、とだけ言うと糸が切れたかのように床に倒れこんだ。
* * *
新一君の名前を出さないように全員に伝えた後、私たちは辻村邸を後にした。どうやら事情聴取は別日にやるそうだ。今日一日だけでいろいろなことがあって疲れていたために、凄く有り難かった。
しかしそれにしても気になることがある。
「ねぇ、なんでついて来るの?」
私の問いに、服部君はニカッと笑いながら答えた。
「そんなんきまっとるやろ。さくらの家に泊まるからや」
服部君の言葉に思わずポカンと口を開ける。何を言ってるんだ、服部君は。服部君は念願の新一君に会うことができたではないか。それを伝えると、服部君はあっけらかんと言い放った。
「俺、今日は東京に、ちゅーかさくらん家に泊まるつもりで来てん。せやからさくらが泊めてくれへんかったら、泊まるとこ無いねん」
ずっ、ずうずうしいな!?人を泊めるなんて、一人暮らしならまだしも、叔父さんと暮らしているのだから独断で決めるわけにもいかない。
私は大きくため息を吐いた後で、叔父さんに電話を掛けた。叔父さんは2コールくらいですぐに電話に出た。珍しく早いな。
『さくらさん?どうしましたか?』
「今日家に泊まりたいと言っている人がいるんですけど、泊めても良いですか?」
そう尋ねると、電話口の向こうは急に静かになった。どうしたのか、と疑問に思いつつ叔父さん?と声をかける。すると返ってきたのは、鼻をすするような音だった。え、まさか叔父さん、泣いてる??
『さくらさんにも蘭さん達以外に、家に泊めたいというようなお友達ができるなんて…!!
暗に友達が少ないと言われた気がするが、気のせいではないだろう。人見知りの気がある私は、確かに社交的な蘭や園子に比べたら友達は少ない。だが、流石に人を泊めたいと言っただけで、お父さんに報告が行くとは思わなかった。どれだけ友達いないと思われているんだ。一方的に切られた電話に少しだけイラっとしたのは内緒だ。
「なんやて?」
「泊まって良いって」
この後服部君を連れて家に帰ったが、玄関に出迎えに来た叔父さんは服部君を私の彼氏だと勘違いをして、失神していた。
「さくらの叔父はん、なんや愉快なやっちゃな」
「それは言わないで欲しかったかな」