Case1
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それからバイクでそうかからずにすぐにトロピカルランドに辿り着いた。新一君にすぐに電話するも、新一君は電話に出ない。仕方が無いのでメッセージを送る。
『新一君今どこにいる?蘭から話を聞いたけど大丈夫?何か変なことに巻き込まれてない?』
既読はすぐについたものの、返事が返ってくることは無い。少し考えた後メッセージを送る。
『今トロピカルランドの前にいるけど、新一君まだトロピカルランドの中いる?』
既読が付いた後、少し迷ったような間があった後でメッセージが返ってきた。
『悪ぃけど、医務室まで来てくれねぇか』
医務室、つまり怪我をしたということだ。私は自分の眉毛が下がっていくのを感じた。それにしても怪我を負うなんて、新一君は何をやらかしたんだろうか。
バイクを止めた後で入り口で事情を話してから園内に入れて貰う。園内マップを見ながら真っ直ぐに医務室に向かう。医務室の中はなにやら騒がしく、その声が外まで聞こえていた。
「ボウヤ、無理はしなくて良いんだよ。保護者、いないんだろう?」
「嘘じゃねぇって!!さっき迎えに来るってメッセージが着たって言ったじゃねーか!」
どうやら迷子のこどもがいるらしい。それにしてもなんとなく聞いたことのあるような声だ。聞いたのはかなり昔のことだったような気はするが。
引っかかることはあったが、医務室の中に入っていく。
「あの、すみません。こちらに男の子、いませんか?」
私の問いに答えたのは聞き覚えのある声だった。
「さくら!!」
下の方から聞こえたくる声。不思議に思いながらも目線を下に下げると、新一君にそっくりの小さい男の子が居た。ゆっくりと瞬きをした後でしゃがんで目線を合わせる。
「俺、新一!!さくらなら分かるよな?」
小さな新一君は必死な顔で私に縋り付いてくる。しかし本当に新一君なのだろうか。俄には信じがたい。だって私が昨日まで見ていた新一君は高校生で、私よりずっと背が高かったのだ。
新一君かどうか確かめるには、この質問しか無いだろう。
「5月4日は何の日?」
「ホームズとモリアーティー教授がライセンバッハの滝に落ちた日!」
前言撤回。この子は間違いなく新一君だ。自身の誕生日ではなくライセンバッハの滝に落ちた日、という辺りがもう新一君だ。私は顔を上げて新一君の後ろにいた警備員のおじさん達に声を掛ける。
「うちの弟がお世話になりました。ご迷惑おかけして申し訳ありません」
「ボウズ、お姉さんが迎えに来てくれて良かったね」
ニコニコ笑いながら言ったおじさんに、新一君は引き攣った笑顔で答えた。
「あー…うん。ありがとう、おじさん!」
おじさん、の部分が若干強調されていたのは気のせいじゃ無かったと思う。おじさんというよりはお兄さんに近い警備員の人は物凄いダメージを受けていた。
「じゃあ帰ろうか、新一君」
「あぁ…じゃなくて、うん」
新ちゃんは笑って誤魔化している。警備員のおじさん達の中には新一君を怪訝な目で見ている人もいたけど、もう彼らと会うことは無いだろう。
「失礼します」
お辞儀をしてから医務室から出て、トロピカルランドを出る。止めてあるバイクがある場所まで辿り着くと、私は新一君に向き直った。
「何で新一君、そんなに小っちゃくなっちゃったの?」
「実はだな…」
新一君の話を纏めるとこうだ。
新一君と蘭が帰ろうとしているとき、あきらかに不審な黒ずくめの男達を見かけた。蘭を巻き込むわけにはいかないので、蘭を先に帰らせて、新一君は男達を追った。男達が怪しげな取引をしていたため、証拠写真を隠れながら撮っていたら、注意を怠ったせいで仲間の男に後ろから殴られた。そして怪しげな毒薬を飲まされて、目が覚めたら身体が縮んでしまっていた。
なんというか、
「新一君。それはね、自業自得って言うんだよ」
「俺が一番分かってるっての、んなもん」
新一君はむすっと頬を膨らませる。私はその両頬をむにっと引き伸ばす。
「いでででで!にゃにしゅんだ!!」
「…心配した」
ぽつり、と呟くと胸の中に溜まっていた物が溢れ出すような、そんな感覚に襲われた。
「…新一君が無事で本当に良かった…」
新一君の言葉から察するに怪しい男達は新一君を完全に殺す気だった。薬が正しく作用しなかったのかは良く分からないが、新一君は死んでいてもおかしくなかったのだ。今新一君が生きていることはまさに奇跡と言っても過言ではない。
「…心配掛けて悪かった。俺は生きてる。だから、泣くなよ」
目からボロボロと溢れてくる涙を新一君は小さくなったその手で優しく拭ってくれる。その手は男らしい武骨なものではなくなっていたけど、一番頼れる、暖かいものだった。
「お前に泣かれると、どうしたら良いか分かんなくなんだよ」
「じゃあ心配掛けさせないで。今度また心配かけさせたら大泣きしてあげる」
「はは…勘弁だわ…」
力なく笑った新一君に私も少し笑顔を零した。本当に新一君が無事で良かった。