Case1
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服部君が頸動脈を確認した結果、辻村さんはもう亡くなってる事が判明した。小五郎さんが警察に電話している間、私は蘭とずっと一緒にいた。先生の事件の時は、先生の息がある状態だったからまだ大丈夫だったが、亡くなった方と一緒にいるのは怖い。
「さくら」
不意に掛けられた優しい声に顔を上げる。私の目に入ってきたのは、優しい目で私を見ている蘭。おいで、と言われるがままに手を伸ばすと、やんわりと手首を掴まれてそのまま抱き留められた。
「大丈夫、大丈夫よ、さくら。私も、コナン君も、…新一も皆ここにいるから」
「…うん」
蘭のお母さんのような慈愛のこもった言葉に冷えていた心が解れていく。蘭は昔からそうだった。私の異変をいち早く見つけてくれて、優しく抱き留めてくれるのだ。どくどく、と聞こえてくる心臓の音に安心した。
「…ありがと、蘭」
ゆっくりと蘭から離れると、蘭はにっこりと笑った。そっと蘭の手を取る。私の前だから気丈に振舞っているが、蘭も死体を見て怖いのだろう。蘭の手が冷たいのがその証拠だ。人は緊張状態になると手が冷えるから。
「蘭も、大丈夫だよ。私も、コナン君も、小五郎さんも…それに新一君だって傍にいるんだから」
蘭は一瞬驚いた顔をした後で、泣きそうに笑った。ごめんね、新一君の、コナン君の秘密を話せなくて。こんなにいつも蘭が新一君のこと、心配してるの知ってるのに。
「うん…うん。もう大丈夫。私の不安はもう、消えたから」
ちょっと切なそうに笑った蘭の真意は分からなかったけど、でももう蘭は本当に大丈夫そうだ。手も段々と温かくなってきた。ほっとしながらゆっくりと手を放そうとすると、蘭はグイっと引っ張って、私の手のひらを自身の頬に当てた。そしてゆっくりと目を閉じる。
ら、蘭…。どうしたんだろ。驚きのあまり目を見開く。
「やっぱりさくらの手は人を救う優しい手だね」
「私、救ったことなんてないよ」
「あるよ」
蘭の言葉を否定すると、蘭はすかさず反論をしてきた。やけに確信を持った声だった。
「きっとさくらが気づいてないだけで、さくらはいろんな人を救ってるんだよ。私だって、さくらに救われた。きっと園子も、新一も、コナン君もさくらに救われてるよ」
蘭を疑っているわけじゃないが、身に覚えのないことなので首をかしげる。
「そう、かな…」
「そうなの」
どうしてもそこは蘭の譲れないポイントらしい。まぁでも、私も何度も蘭に救われたことがある。でも蘭がそのことに気付いているかといえば、そういうわけではないだろう。案外自分では気づけないものなのかもしれない。
「私も蘭にいっぱい救ってもらったよ。きっと私達がお互いに思いあってるからだね」
ふふ、と口角を緩めると、蘭は顔をボン、と赤くした。石造のように固まる蘭の前で手を振ると、蘭はようやくハッとして、手で顔を覆った。
「…もー、それはズルいよ」
何がズルいのか分からずに首を傾げていると、コナン君の首根っこを掴んでいる服部君に怒られてしまった。子どもに死体を見せるな、とのことだった。…うん、確かに。コナン君は本当は服部君と同い年だけどね。
服部君からコナン君を受け取ると、コナン君は私の腕の中からムスッとした顔で見上げてきた。
「…おい、あんまベタベタすんなよ」
…コナン君、どんだけ蘭の事好きなの。別にコナン君、いや新一から蘭を取ろうとしたことなんて一度もない。逆もまた然りだ。だって蘭も新一君も、二人とも私の大切な人だから。
もしどちらかを取ることで、どちらかを失うなら、私は両方取らないよ。