Case1
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新一君の話し方を意識して一つ一つ丁寧に説明していく。カプセルのこと、入れ替わった園子と先生のレモンティーのこと、乾燥剤のこと…。真っ直ぐに高杉さんを見据えて真実を告げる。
「犯人は貴方しか居ないんです。高杉さん…」
思わず泣きそうになるのをぐっと堪えた。コナン君が心配そうに見てくるのが視界に入り、場違いにも思わず笑みがこぼれそうになった。普段、私はコナン君の役には立てない。コナン君を実質支えてくれているのは蘭だ。危なっかしくて、正義感が誰よりも強いコナン君を心配している。私では蘭のようにコナン君を支えられない。
だからこそ推理くらいではコナン君の、表舞台に立ちたくても立てない新一君の役に立ちたいのだ。
「と、俊彦…あんた…」
「き、きさま…よくよくワシの娘を…」
警視の言葉に何も返さない高杉さんにイラついたのか、警視は高杉さんの胸倉を掴んで問い詰める。
「言えなぜだ!なぜワシの娘をあんな目に!?」
高杉さんはふっと笑みをこぼすと、絶望の色を乗せながら警視を見た。
「あんたにも味合わせてやりたかったんだよ…」
「なに?」
「二十年前、俺が味わった思いをなぁ!!!」
高杉さんは警視の手を振り払うと、鋭い目で警視を睨みつけた。
二十年前、松本警視が追っていた犯人の車が壁に激突したとき、高杉さんの母親が巻き込まれてしまった。その時はまだ高杉さんの母親は生きていたため、高杉さんはその時にすぐに警視に助けを求めた。だが、犯人を追う事しか頭になかった警視は高杉さんを一蹴してしまったのだ。
『邪魔だ、どいてろ!!』
その三十分後、高杉さんの母親は路上で息を引き取った。母親しか身寄りのなかった高杉さんはその後、養子として高杉家に引き取られた。
何もかもを失った高杉さんは抜け殻のように過ごしていた。だがそんなときに大学のキャンパスで松本警視の娘の松本先生に出会ったのだ。高杉さんは先生に近づき、松本先生を利用して松本警視に大切な人を失う悲しみを味合わせてやろうと画策したようだ。
「ラッキーだったぜ、一美…。俺の女だったお前が、小百合の友達だったんだからな…。しかし、あいつもバカな女だ…。俺が復讐のために近づいたとも知らないで…。俺のプロポーズホイホイ受けやがって…」
ぐっと拳を握りしめる。高杉さんは先生のことを何も分かってない。先生は誰よりも優しくて、器の大きな素敵な女性だ。
「どーせ高杉家の財産に…目が眩んだんだろうけどな…」
高杉さんがそう嘲笑った時、パンっと破裂するような音が響いた。驚いて顔を上げると、一美さんが涙を浮かべながら高杉さんの頬を叩いていた。
「何も…何も知らないのは俊彦…あんたの方よ…!!小百合は全て知っていたわよ!!二十年前の事故の事も、あんたの素性もね!!」
そういうことだったのか。
先生と別れる前に先生が見せたあの表情の意味が分かった。先生はきっと本当に全て知っていたのだろう。高杉さんが先生に殺意を抱いていたことも、恐らく高杉さんが毒を盛っていたことも…。
それでもなお先生が先生の殺意を受け止めたのは。
「あんたはねー、小百合が二十年間想い続けてた…初恋の人なのよ!!」
先生は高杉さんが絶望にまみれた姿を見ていたくなかったのだと思う。高杉さんの事も、警視のことも大切だからこそこの選択を選んだのだ。
先生…。
目をそっと閉じて、先生を想って祈る。ドクリという音が聞こえた気がした。あぁ、多分もう大丈夫だ。高杉さんの怨恨も、先生の状態も…。
視界が酷く歪んでいて、前が見えない。でも嬉しくて涙が出た。
「警視!!たった今病院から連絡が!!お嬢さんは…手術の結果…一命を取り留めたそうです!!」
園子や蘭と喜びながら、横目で高杉さんの事を見る。高杉さんは涙を流しながらも先生が無事なことに安心して、涙を流していた。
今度はきっと、先生も高杉さんもきちんと真っ正面から向き合える。だってやっぱり二人は想い合っているのだから。
私の脳裏には幸せそうに抱き合う先生と高杉さんの結婚式の様子が浮かんでいた。