Case1
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「じゃあさくら、またな」
「うん。いってらっしゃい、お父さん」
私はお父さんを見送るために米花駅に居た。
私は普段、表情の変化に乏しい自覚はあるが、お父さんと別れるときは必ず笑うように気をつけている。海上自衛官、しかも潜水艦乗りとなれば、いつ何があるかは分からない。自衛官というのはやはり命の危険が伴う職業だ。それも滅多に会えないとなったら尚更、笑顔で送り出さねばなるまい。
昔、おかあさんにも笑顔で見送るように言いつけられたものだ。懐かしい。
「ああ」
お父さんは久しぶりに会えたことにかなり満足げに笑いながら立ち去って行った。お父さんが改札の中に入り、消えていくのを見送ると、私は駅に背を向けて家への帰路についた。
もうすぐ家の前まで着こう、という時に蘭の姿が目に付いた。落ち込んでいるのか俯きながら歩いていて、私には気がついていないようだった。
「蘭」
「え?…あっ、さくら!!」
私の姿を見た蘭は笑顔を浮かべる。だがその笑顔は明らかにいつもとは違っていた。何か心配事があるような、不安があるような、そんな表情だった。
間違いなく、これは何かあった。少なくとも一日遊園地で遊んできた人の表情では無い。
「蘭、何かあったでしょ」
蘭は少し逡巡した後で口にした。
「実は、新一に先帰ってろって言われたんだけど、何か不安で…。それに今日、ジェットコースターに乗ってたら殺人事件に遭遇しちゃったし…」
蘭の表情はどんどん暗くなっていく。私は蘭の手をぎゅっと握りながら、蘭と目を合わせる。
「大丈夫。きっと新一君なら大丈夫だよ」
私は何があっても絶対に、新一君を守るから。
「…うん」
弱々しく笑う蘭に、私も笑い返す。蘭を安心させるように力強く。
「ありがとう、さくら!じゃあ…また明日、学校でね!!」
「うん、ばいばい」
私は蘭に背を向けて歩き出した。蘭のセリフを思い出す。
新一に先に帰ってろって言われて―
どうにも嫌な予感がする。新一君に確実に何かあった。このまま何もしないと後悔する、と自分の感が告げていた。
トロピカルランドは米花市内にあるから歩いて行けない距離じゃ無い。でもかなり時間がかかってしまう。私の頭を過ぎったのは誕生日にお父さんが買ってくれたバイクの存在。
決めた。バイクで行こう。
私は家に向かって走りだした。