Case1
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「わー綺麗なバラ!!ありがとう、梅宮君!!」
先生にバラの花束を贈るメガネを掛けた男性に蘭は不思議そうな顔をしながらビデオを回す。私も彼のことは知らないので、蘭と同じ反応だが。すると園子が一年上の先輩の梅宮敦司だと教えてくれた。その言葉で私は漸く彼のことを思いだした。
「確か音楽部の部長で生徒会長だったよね」
「あーそっか!先生にぞっこんだった…」
「そうそう…。卒業式の日に、ギター弾きながら歌ってたじゃない『先生との別れの歌』とか言ってさ…」
園子の言葉でそんなこともあったなぁ、と思い出した。梅宮さん歌もギターも申し分ないほど上手かったが、先生に送る歌詞が歌詞なだけに爆笑もしくは冷やかされていた。私はその時「凄いなぁ」とぼんやりと考えていたが、確か新一君なんかはゲラゲラ笑ってた筈だ。
「……今日は非常に残念です…」
「え?」
戸惑った声を漏らす先生に梅宮さんはレモンティーを手に取りながらニヤリと笑った。
「先生を幸せにできるのは僕だけだと信じてましたから…」
「梅宮君…」
どう返事をしたら良いか分からない先生に梅宮さんはじゃあ、と良いながら部屋を出て行った。コナン君は呆れたような目で彼を見ていた。大方キザな奴とか考えているのだろう。でもそれはコナン君にだけは言われたくないと思う。コナン君も大概キザだ。
「あー、いっけなーい!ビデオの電池切れかかってる…」
「うそー…」
「確かこの近くに電気屋があったはず」
「道案内お願い!!」
蘭の言葉に頷くと、私達は電気屋へと急いだ。
無事に電池を手に入れた私達は、ついでにまだ朝食を食べていない蘭とコナン君の分のパンやミルクをコンビニで買ってから先生の控え室のドアを開ける。すると園子が中にいた新郎であろう男性を見て大きな声を上げた。
「あー!!あなたは高杉グループの跡取り息子!!」
「き、君は鈴木財閥の…」
どうやら二人は面識があるようだ。確かにさっき警視も金持ちのボンボン、と言っていたし面識があるのも納得だ。
よくパーティーで会う、という園子の言葉を聞いてやっぱりお嬢様だなぁ、なんて思う。彼女の普段の一般人めいた言動からつい忘れがちになってしまう。
「でもまさかこの人が先生の結婚相手だったなんて…」
渋い顔を見せる園子に首をかしげる。見た目はいい人そうだが、何か悪いところでもあるのだろうか。
「まさかって?」
「あの人、いい人そうだけど…?」
私と蘭の言葉に園子は声を潜めながら喋った。
「だって彼、優柔不断で頼りなくて…高杉家は彼の代で終わりだっていう、もっぱらの…評判…」
園子の言葉はこれ以上続かなかった。なぜなら先生が高杉さんにキスをしていたからだ。目の前で起きたラブラブな光景に思わず赤面してしまう。仲むつまじい様子を見て、蘭は嬉しそうに小声で囁いた。
「でも…先生がついてるから大丈夫よ…」
「そ、そうね…」
私も蘭の言葉にこくこくと頷いた。スタッフさんが呼びに来たので、私達も退散することにした。
「先に行ってて良いわよ、俊彦さん…」
先生は高杉さんが手に持っていたレモンティーを回収しながらニコリと笑う。
「心配しないで、すぐ行くから…」
そう言いながら笑う先生がどこか寂しそうに見えた気がした。
私達は高杉さんと一緒に控え室から出た。私の脳裏にはあの時の先生の笑顔がこびりついて離れなかった。なんだろう、凄く嫌な予感がする。
「さくら?どうしたの?」
「いや…。何でも無いよ」
蘭の言葉に笑いながらゆっくりと首を振る。きっと、大丈夫。だって今日は先生の大事な日だから。
先生の部屋からカンッ、と缶が床に落ちるような音がした後で、ドサリと重たい物が落ちたような音がする。
「…先生っ!!」
慌てて部屋の戸を叩くが先生は出てこない。
「失礼します!」
先生からの応答がないため扉を開ける。真っ先に目に飛び込んできたのはカーペットに広がる赤い血。そして口から血を流して床に伏している先生だった。