Case1
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「もしかして今日、デートの約束でもあるんですか?」
唐突に掛けられた声に驚いて振り返ると、そこにはよく朝倉神社に参詣している信心深いお兄さんがいた。
「デート…ではないですよ。友人のお母さんとショッピングはしますけど」
「へぇ…。どうりでいつもよりも大人っぽい服を着ているわけだ。よくお似合いですよ」
確かに有希子さんと一緒に出掛けると言うことでいつもより綺麗めな服を選んだのだが、まさか気付かれると思っていなかったのでなんとなく気恥ずかしい。有希子さんと出かけられることに浮かれている、と指摘されたようだ。
「ありがとうございます」
少し目を逸らしながら答えると、お兄さんはふっと柔らかく笑った。
「あ、そうだ。お兄さん今日顔に疲れが出てますよ。早く帰って寝た方が良いと思います」
お兄さんの目の下にはうっすらと隈がある。それに顔も少し浮腫んでいる。徹夜…それも二日くらいは寝ていない顔をしている。
私はお兄さんに少し待つように言うと、家の中に戻って行った。目的の物を見つけると、すぐにお兄さんが居るところへ戻る。お兄さんは深刻そうな顔をして携帯を見ていたが、私が戻ってきたのに気が付くとにっこりと笑って携帯を仕舞った。
「お待たせしました」
「いえ、大丈夫ですよ。…それは?」
お兄さんは私の手の中にあるブレスレットに目を遣る。私はそれをお兄さんの右手につける。
「トルマリンとアクアマリンのブレスレットです。疲れによく効きますよ」
「…アクアマリン」
ぽつり、と何処か懐かしそうな顔をするお兄さんに私はにっこりと笑った。
「はい。お兄さんの瞳の色と同じ、綺麗な青色です。
アクアマリンには心を癒す効果があるんです。例えば怒りとか嫉妬とか。行き場の無い感情を浄化できるんです」
普段感情を抑圧されている人にはもってこいの石ですよ、と言うとお兄さんはポカンとした顔をした。
「…僕、そんなに人間関係上手くいってなさそうですか?」
「たまに怖い顔したり、無理して笑っているのでそう思いました」
お兄さんは私の言葉にはぁ、とため息を吐いて顔を覆った。
「…敵わないな」
噛み締めるように吐き出されたお兄さんの言葉が、何処か嬉しそうに聞こえたのは気のせいだろうか。
「ありがとうございます。大切にします」
お兄さんは本当に嬉しそうに笑っていたので、私も釣られて笑顔がこぼれる。
「さっちゃんー!!」
後ろから聞こえてきた有希子さんの声に振り返る。
「ごめんなさいね、ちょっと遅れちゃったわ」
「いえ、大丈夫ですよ。さっきまで知り合いの方と話していたので」
「知り合いって、男じゃないよね」
「え?コナン君?」
聞こえてきたコナン君の声に驚く。コナン君はジト目で私を見上げていた。どうしてコナン君がここにいるんだろうか。
「新ちゃんったら一緒に行きたいって駄々こねたのよー!!」
「ばっ、ちげぇよ!!俺は一言さくらに文句言ってやろうと思って…!!」
コナン君は頬ずりしてくる有希子さんから逃れようとじたばたしながら必死に否定する。
「そんなに否定しなくても良いのに…」
ポツリと呟くと、コナン君はキッと私を睨みつけてきた。小さくて可愛らしい姿の筈なのに物凄い迫力があるのはなぜだろうか。
「で、その知り合いって誰?そんな人見当たらないけど」
「え?」
その言葉に私は辺りを見渡す。もうそこにはお兄さんの影も形も見当たらなかった。いつの間に帰ってしまったのだろう。もしかして早く帰らなければいけない用事でもあったのかもしれない。引き留めてしまっていたのか、と申し訳ない気持ちになった。
「まぁそんな事良いわ!!早く行きましょ!コナン君の服とさっちゃんの服、いっぱい買うわよー!!」
パン、と手を叩く有希子さんにはっとした私は今度謝っておこう、と心に留めながら彼女に付いていった。